Episode 2 Breaking dawn

「ここ、汚いけど使っていいから」


少女に連れてこられたのは、木造の掘っ立て小屋だった。


「本当はうちの家に入れて上げられたらいいんだけど」


少女は申し訳なさそうに言う。


「いや、いいんだ。わざわざありがとう」


なぜこの人は、見ず知らずの俺にこんなに良くしてくれるのだろうか。


「あ、まだお互いの自己紹介がまだだったね。私は、ルナ。ルナ・フローレス」


「俺は、テオ・グレイ」


「テオ君ね。よろしく!」


そう言ってルナは手を差し出してきた。


「なに?」


「握手よ。知らないの?」


そう言って、ルナは俺の手を取って握る。


「挨拶よ」


ルナは言った。


「ねぇ、君も冒険者になりに外からイルジオンに来たの?」


「まぁ」


「もう、冒険者登録は澄んだの?」


「いや、まだ。戸籍登録ができないんだ」


「え、ご家族は?」


「いない」


「あ、そうなの」


ルナは少し申し訳なさそうに言う。


「親戚の人とかは?」


「いや、いない」


「テオ君。君いくつ?」


「17」


「あら、私の二つ下だったの」


意外にも年上。


「困ったわね。戸籍登録の他に、未成年の冒険者登録にはどうしても家族の許可が必要になるから」


ルナは言う。


「テオ君。一年くらい待てない?その間バイトしたりして過ごして、来年十八の誕生日を迎えて成人になったら登録するとかはどう?そうしたら自分で戸籍移動もできるし」


「それはできない。今すぐに冒険者になりたいんだ」


ここまで来た以上もう後戻りはできない。


「そっか」


ルナはしばらく考え込んだあと、


「テオ君、明日時間ある?」


「あるけど」


「もしかしたら何とかなるかもしれない」


「え?」


「冒険者になるためには、戸籍登録と未成年の場合は保護者の承諾が必要なんだけど、それは必ずしも肉親である必要はないの」


「どういうこと?」


「つまりね、誰かの養子でもそれは成立するってこと」


「養子?」


「うん。あくまで可能性の話だけれど、私の知り合いに心当たりがあるから、もし、テオ君が良ければ明日紹介してあげようか?」


「ぜひ頼む」


そう言って、ルナの手を握る。


「きゃ」


「俺はどうしても、冒険者になりたいんだ。そのためならなんだってする。だから、頼む。その人に俺を紹介してくれ」


このチャンスを逃したらもう次はないかもしれない。


「う、うん。それは、わかったんだけど」


「けど?」


「手を離してくれるかな?」


「あぁ、すまん」


「まぁ、私は紹介以上のことはできないから、期待に応えられるかわからないけど」


「いや、十分すぎるくらいだ。ありがとう」


「それじゃ、私は戻るね。ここにあるものは適当に使ってくれていいから」


そう言い残し、ルナは自分の家へ帰っていった



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