Episode 1 The Beginning

この世界で最も力を持つ国「ゲクンステルト」。その中でも、一番大きい都市「イルジオン」は、全ての冒険者のあこがれの町であり、冒険者を目指すものは皆ここに集う。


「おい、あんた!うちで装備を整えないか?」


「うちの薬品は一級品だよ!」


この町の繁華街は、いつも冒険者とその冒険者を相手にする商売人で賑わっている。


一見華々しく見える大都市イルジオンだが、光があれば闇もある。


繁華街から少しそれた、路地裏には失業者、ホームレス、薬物中毒者、裏家業の人間、などの世界が広がっている。


実力主義の世界では、力なき者たちは淘汰される運命にある。


そんなイルジオンの路地裏で、灰色の髪の少年、テオは路頭に迷っていた。


「おい、邪魔だ」


酒に酔った中年が、うずくまっている少年の頭を蹴りながら言った。


少年はそのまま倒れる。


「なんだ?死んでんのか?」


少年の反応がないため、男は顔を覗き込む。


「うわ!」


いきなり目を開けた少年に驚いた男が声を上げた。


「生きてんじゃねぇか。おい、小僧ここは俺の場所なんだよ、他に行きな」


少年は、その赤い目で中年を睨んだ。


「なんだよ、、、」


中年は、彼の目に少しビビる。


しかし、少年は無言のままその場を立ち去った。


(もうここに来て二週間か)


少年は歩きながら考えていた。


二週間の間この町を彷徨っていたが、何も進展がない。


彼がこの町に来た理由は、他と同様冒険者になるためだ。


しかし、彼には冒険者になるために必要なものがなかった。


それは、彼の戸籍である。


冒険者になるためには、出生や親族の情報などの登録が必要となる。


また、未成年は保護者の承諾が必要となる。


しかし、彼はそれを持ち合わせてはいなかった。


(早く何とかしないと)


とはいえ、この町に頼れる人間どころか、知り合いもいない。


(どうするかな)


日も暮れ初め、町の中心街から少し離れた公園のベンチに座り込んでしまう。


(冒険者登録ができなければ、この町に来た意味がない。しかし、元の場所に戻ることもできない)


ただ時間だけが過ぎていく。


半分諦めかけていたその時、


「君、大丈夫?」


そう言って声をかけてきたのは、腰まである綺麗な銀髪の少女だった。


腰には細い剣を携えている。


同じ年くらいだろうか。


「何か困ってるの?」


少女が不思議そうに尋ねてくる。


「今日泊まるところがない」


そういうと、


「え!?もしかしてホームレスの子?」


「まぁ、そうなるのかな?」


「大変!助けてあげたいけど、うちに泊めるとみんなが怒るだろうし」


少女はいう。


「大丈夫。今日はここで寝るから」


「ダメだよ!こんなところで寝たら危ないよ!」


「知ってる」


この二週間全て野宿だったが、何度も危険な目にあった。


「ちょっと待っててね。知り合いの人に聞いてくる」


少女はそう言って、どこかに行ってしまった。


しばらく待っていると、


「お待たせ!」


そう言ってその少女が帰ってきた。


「君の今日の帰る場所、見つけてきたよ!」












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