条件を提示されましたわ
「どちらでもない? つまり、第3勢力である、と」
ヴェインの言葉を自分なりに解釈してみようと試みるリーラリィネ。
だが、彼は頭を横に振る。
「あくまで『私』は、どちらでもないと言った。私を動かしている者は……理事長派寄りだろう」
「どうも面倒な言い回しですわね。それは結局、貴方も理事長派ではございませんの?」
「アイツらと一緒にされるのは癪に障る」
「なら、袂を分かてばよろしいのではなくて?」
「気に入らない連中でも、恩はある。いまの生活も嫌いではない。ならば、あえて拒む理由もない。もっとも、お前のような奴を敵に回したくもない」
「だから、素直に話しているのかしら」
「なんだ、信じてくれるのか? 全部、嘘かもしれないのに」
「ええ、信じますわ。もし嘘なら、その時は貴方に責任を取っていただけばよいだけですもの、ヴェイン様」
リーラリィネは掴んでいたヴェインの腕を放す。
その瞬間、部屋から廊下へと出て、彼女と距離を取るヴェイン。
しかし、そこからすぐに逃げ出すことはせず、リーラリィネのほうに視線を向けた。
「……いいだろう。とりあえず、話せることは話す。聞きたいことがあれば聞け」
「まずはミィ……ミーシャ・レコへの警告とは具体的にどういうものなのかを教えていただけるかしら」
「簡単だ。どちらの派閥にも与しないように、そう伝える予定だった」
ヴェインの返答に、リーラリィネは首を傾げた。
「両派閥? ミハイル派ではなく?」
「私……というよりも、私に指示を与える者の立場は微妙だ。ミハイルを敵視しているのは間違いないが、同時に理事長側が力を持ちすぎることも警戒している。だからこそ、私のように影で動く人間を使って、工作をさせているわけだ」
「なら、アルティアにも同じことを?」
「そうだ。だが、どちらとも校内で接触が取れない状況が続いていた。だから多少リスクを取って、直接部屋を訪ねることにした」
「夜中に男性が、女性の部屋を訪ねるというのはあまりにも無粋ではありませんか?」
「脅しの意味もある。そうでなければ警告にならないだろう」
リーラリィネの眉が一瞬、ピクリと動く。
その様子を察して、ヴェインは両手を上げてみせた。
「二度としないと誓う。それで許してくれ」
「……分かりました。では次に、もし今後ワタクシたちがどちらかの派閥に味方した場合、何らかの危害が加えられる可能性はあるでしょうか?」
「十分にある。私はお前と敵対したくないから、そうした行動を取ることはない。だが、私以外の誰かが動く可能性はある」
「止める方法は?」
「私が事実を隠せばいい。お前たちがどちらの派閥にも属さずにいると告げれば、わざわざ手を下したりはしないだろう」
「そうしていただけるのかしら?」
「いいだろう。ただし、条件がある」
ヴェインはアルティアを指さしながら告げる。
「お前が私を守れ」
「……どういうことですの?」
「仮に私がお前たちのために嘘の報告をしたとしよう。それはしばらくは効果があるだろうが、いずれはバレる。その時、裏切り者として狙われる私をお前が守れ。そう約束するなら、今後お前たちについて詮索はせず、危害を加えることもないと誓おう」
「どうしてワタクシですの? どうせならミハイル様にお願いすればよろしいのに。あるいはミーシャやアルティア……あの騒動の時に活躍した彼女たちに」
「面白くない冗談だな。決まっている。お前が一番強いからだ」
リーラリィネは警戒心を強める。
もし、目の前の男が自分の正体を知っているとすれば、それはより多くの者たちに伝わっている可能性があった。
「なぜ……そう思いますの?」
「それは、お前が『見えない』からだ」
「みえない? そう言えば、以前襲われたときにもそのようなことをおっしゃっていましたわね」
「私は特異体質で、他人の魔力を感知できる。人が近づけば壁越しにも感じるし、近づけば個人を特定することも可能だ。だが、お前の魔力は感知できない。おかげで、グランツと話しているところを見られてしまった」
「それは、ワタクシの魔力が小さいからでは?」
「違う。どれだけ魔力が小さくても、『存在している』ことはわかる。お前はそれすら感じない」
「貴方にとって、ワタクシが特別に感じられるというのは分かりましたわ。でも、それがどうして『一番強い』につながるのでしょう?」
「簡単だ。お前のように『魔力を感じない』ものを知っているからだ」
「それはいったい……」
「魔獣だよ」
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