友だちではないと言われてしまいましたわ③
「これが……ワタクシの本当の姿ですわ」
「…………」
ミーシャは何も言わず、ただ見つめている。
「ワタクシの姿は、人族の目にはさぞ恐ろしく映るのでしょう。あのミハイル様ですら、最初に見た時は警戒心に満ちていらっしゃいましたわ。ワタクシは貴方たちにとってそういう存在。そして、貴方にとっては嘘をつき、騙し、欺いてきた相手でもありいますわ。これほど……醜悪なものがあるかしら!」
リーラリィネはさらにミーシャへ近づき、自らも膝をつく。
「加えて、ワタクシはまだ貴方にもアルティアにも隠していることがありますわ。言えばここには絶対にいられなくなるとわかっているから、あえて言わずにいることがありますの。これほど酷い女がほかにいるものですか!」
今度はミーシャの顔に手を伸ばし、零れ落ちる涙をそっと拭っていく。
「だからもし、貴方とワタクシが友だちでいられないのなら……それはワタクシが貴方の友だちに相応しくない卑しい存在だからに違いありませんわ」
「違うよ……ちがう! 私が、汚いの! あなたは醜くなんてないっ!」
「いいえ、貴方が汚いはずはありませんわ。こうして、醜いワタクシを抱き締めてくださっていますもの」
いつの間にか、ミーシャはリーラリィネに抱き着いていた。
涙を拭ってもらったはずの顔を再び濡らしながら。
「リリィちゃんは可愛いのっ! 誰より、ずっと! だから、私はきっと邪魔だって……可愛いリリィちゃんのそばにいちゃいけないって!」
「ミィ、どうかワタクシのお友だちを悪く言わないで。その子がワタクシを慕うように、ワタクシもその子が大好きですわ。だから……可愛いミィをいじめないで?」
リーラリィネの言葉に、ミィはさらに大粒の涙を流しながら声を上げて泣いてしまった。
「あら、どうしたのその顔。ずいぶんと、ヒドイ有り様ね」
ひとしきり泣いたミーシャを落ち着かせ、リーラリィネはアルティアの療養室に戻ってきた。
「い……いきなり嫌味、ホントに嫌な人。でも、そういうあなたも目が腫れているじゃない」
ミーシャの指摘に、アルティアは手でわずかに目元を隠した。
「……何かありましたの?」
「さっき、ミハイル様にワタシの本心をお伝えしたわ」
「そ……それって、告白したってこと!?」
先ほどまでの不機嫌顔が一気に驚きの表情に変わるミーシャ。
「まあ、そういうことね。それで……振られてしまったわ。今はまだ結婚について考えられる状況ではない、って」
「そう、でしたのね」
「なんでアナタまで暗い顔してるのよ。これで1つ、借りは返したわ」
「借り?」
「忘れてるんじゃないわよ! 言ったでしょ、ミハイル様の本心をアナタに聞かせるって。お望み通り、ミハイル様がワタシを相手として相応しいとは思っていないとわかったわ。あの時の約束、果たしたからね」
プイッと顔を反対に向けながらアルティアは告げた。
「あとは、もう1つの借りを返すだけよ」
「もう1つの借り……?」
「この命を救われたこと。アナタがいなければワタシはきっとファトゥナに殺されていた。そうでなくても、もう助からない体だったはずよ。そのくらいは、自分でもわかるわ。どうせ、アナタが何かしたんでしょ?」
「…………」
口をつぐむリーラリィネ。
それを肯定と受け取ったのか、アルティアはさらに続ける。
「命を救われたなら、命で報いなければいけないわ。だから、いつかアナタの命を助けられる時が訪れるまで、お友だちごっこに付き合ってあげる」
「アルティア……」
アルティアの宣言に、リーラリィネの顔がほころぶ。
だが、後ろにいたミーシャは抗議の声を上げた。
「そういうの、間に合ってるから! ごっこなんかしなくて、リリィちゃんには私っていうちゃんとした友だちがいるもん。あなたはお呼びじゃないの、しっしっ!」
「あら、友だちが1人じゃなければいけない決まりはないわ。別に、アナタがリーラリィネの友だちだって言うなら好きすればいいじゃない。細かいことを気にするのは、自分でも不安があるからじゃないの?」
「ち、違うもん! 勝手なこと言わないでよね!」
顔を見合わせながら、睨み合う2人。
リーラリィネは間に立って、2人の肩を抱え込んだ。
「ミィも、アルティアも……どちらもワタクシの大事なお友だちですわ。せっかくですから、2人も友だちとして仲良くなって……」
「「それは無理っ!」」
2人から同時に否定され、リーラリィネも口を閉じるほかなかった。
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