第7話 不安に思いつつ
ラウラとジェシカの二人が拠点から出発して、数日が経過していた。
「うーむ……」
拠点で新たな魔導人形の製作を進めていたレオンは、ふとした瞬間に二人が無事かどうか心配になっていた。
「大丈夫ですよ、二人なら」
「うん。アイリーンの言う通り、大丈夫だよな」
レオンの心配する様子に気が付いたアイリーンが、彼を気遣うように声を掛ける。彼女の言葉に同意するように何度も頷きながら返事をするレオンだったが、それでも不安な気持ちを抑えられなかった。
外の世界では、何が起きるか分からない。
初めて魔導人形を旅に出してみて気が付いた。これほど心配になるものなのかと。彼女達が無事に戻ってくるまでは、どうなっているのか分からない。無事に拠点まで帰還することは出来るのか、それが気がかりだった。
今、この瞬間も二人が危険な目にあっていないかどうか心配だった。
「大丈夫です。 だから元気を出してください、レオン様!」
「そうだね。ありがとう、アイリーン」
二人は無事だろうと確信して明るく励ますアイリーンに、感謝するレオン。彼女の言う通りで、おそらく大丈夫なのだろう。心配し過ぎだということは、レオンも自覚していた。
ジェシカほどの実力があれば、並のモンスターに倒される可能性は限りなく低い。実は、ラウラも戦うことが出来る。彼女達より実力が上の強敵に出会ったとしても、逃げることも出来るはずだ。絶対に死なないように命令してあるし、万が一の場合に備えた機能も搭載している。危なくなったら、迷わず逃げ出せるように。その機能を発動すれば、レオンでも捕まえることが難しい状況になるほど。
だから大丈夫だろう。だけどやっぱり、レオンの感じる不安は消えることがない。彼女達が無事に拠点まで帰還して、何事もない様子を自分の目で確かめる瞬間まで。
アイリーンは微笑む。魔導人形である自分達が、これほど大事にされている。そう実感できたから、とても嬉しかった。
レオンの心配は、他にもある。彼女達が拠点の外に出たことで、他の魔導人形達も外への興味を持ち始めた。
他の魔導人形達も、ラウラのように外へ出てみたいと言い出したら、レオンは止めない。彼女達の意思を尊重するつもりだった。だが、そうなると更に不安が増える。
「そんな時のために――」
レオンは、新しい魔導人形達の機能を研究することを決めた。
遠く離れた場所に居ても、彼女達の様子を把握できるようにしよう。離れた場所に必要な情報を一瞬で送れるようにする機能。伝令や伝書鳩なんかよりも早く、一瞬で知る方法。それを新たに開発する必要がある。
新たなアイデアのヒントを得たレオンは、目的を果たすための新たな機能の研究に取り掛かるのだった。
今の不安を少しでも紛らわせるため、彼女達が無事に帰還することを祈りながら、レオンは研究に没頭するのだった。
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