第5話 お助け

 悲鳴が聞こえてきた方へ、急いで向かうラウラとジェシカ。森の中を突っ切って、とんでもないスピードで木々の間を走り抜けていく二人。


「居た」

「人間達が襲われているよ! 助けないとッ!」


 冷静なジェシカと、慌てるラウラ。複数の人間達の気配。馬車もあるようだ。その周辺にモンスターの気配が多数。その場所に向かって、二人は突っ込んでいく。


「助けは必要か?」

「ッ! だ、だれだっ!?」


 ジェシカは、剣を抜いた二人の男達の前に飛び出して声を掛ける。剣を持った男が驚きながら、問いかける。


 突然、森の中から現れた少女に驚く二人の男達。その後ろには、怪我をして地面に倒れている女性。介抱している女性。それから、武装していない中年の男性が怯えていた。合計5人の人間達を確認したジェシカ。


「た、助けてくれッ!」


 一番後ろで戦いには参加せずに怯えていた男性が、ジェシカに助けを求める。その声に同意して、他の者達もジェシカに助けを乞う。


「頼む! 怪我人が居るんだ」

「敵に囲まれて、逃げられない!」

「酷い怪我なの! 早く対処しないとッ!」


 彼らの声を聞いて、ジェシカは頷いた。


「わかった」


 助けに入っても良さそうだ。人間達に確認を取ったジェシカは、ラウラが居る方へ振り返った。だが。


「ラウラ」

「もう終わったよ、ジェシカちゃん」


 既に、戦いは終わっていた。ラウラは目にも留まらぬ猛スピードで走り抜けると、周囲を囲んでいたモンスターを一匹残らず倒し終えていた。


 ジェシカが人間達に確認している間に、彼女は全てを終わらせていたのだ。


「き、君たちは一体……?」

「それよりも、彼女は大丈夫なのか?」


 ラウラの強さに唖然とする二人の戦士達。ジェシカはその質問には答えず、倒れている女性の安否を問う。地面に倒れた女性は、意識を失っていた。どうやら戦闘中に負傷したようだ。


「そ、そうだった! クリスタ!」

「ポーションを使え! 間に合わなくなるかもしれない」

「もう使ってるわ! これで、大丈夫だと思うけれど……」


 慌てる人間達。介抱していた女性が薬を使い、クリスタと呼ばれた女性を回復させている。そんな彼らを、ジェシカ達は口を挟まずに様子見する。


「ねぇ。助けなくて、大丈夫かな?」

「おそらく、大丈夫」


 心配するラウラ。魔法を使えば、すぐに助けることが可能だ。だけどジェシカは、助けようとはしない。あの処置で助かるだろうと予想していた。だから、余計な口を挟まずに人間達を見守ろうと思って黙っている。


 しばらくして、地面に倒れていた女性が目を覚ました。薬の効果によって傷は癒えて、血色も良くなっていた。だが、まだ意識が戻っていないのかボーっとした表情をしている。人間達が喜んでいる様子を、少し離れた場所で眺めるラウラ達。


 二人が初めて見た、レオン以外の人間。どうやって仲良くなろうか考えるラウラ。どうやって会話しようか悩むジェシカ。


 そんな二人の様子に、人間達が気付いた。

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