第3話 はじめてのおつかい
アイリーンが生まれてから数十年が経った。魔導人形も新たに数十体が創られて、拠点で自由に暮らしていた。
長年、魔導人形について研究を続けてきたレオンは、新技術を幾つも生み出した。その新技術を駆使して、アイリーンを何度も改良する。魔導人形を極めていった。
レオンによって創り出された魔導人形は、拠点で自由に暮らしている。
畑を耕して野菜を育てたり、家畜を飼育して繁殖させたり、周囲の森に入って獣を狩ったり、危険で凶暴なモンスターを討伐したり。
その他にも、剣術の腕を磨いたり、魔法を極めたり、料理に挑戦してみたり、歌や楽器を練習して演奏してみたり、絵画や彫刻など芸術にチャレンジしてみたり。
更には、拠点に新たな建物を増やしたり、周囲を調査して地図を作成したり、本を読んで一日を過ごしたり。
レオンの身の回りのお世話をしたり、研究を手伝ったり、一緒に食事をしたり話し相手になったり。
魔導人形達は色々な過ごし方で、それぞれがやりたいように過ごしていた。
ただ彼女達は、ずっと拠点の中で暮らしていた。一度も外の世界に出たことがないので、レオンは考えていた。
一度ぐらいは、外に連れ出してあげた方が良いのではないかと。自分以外の人間に会わせてみるべきなのかもしれない。
けれども、魔導人形の研究に夢中になっていた彼は、いつも後回しにしてしまう。また今度でいいか、と。
ある日、一番新しく創られた魔導人形のラウラが、レオンに相談した。
「レオン様! 私、外の世界にある衣服に興味があります。外に出て、買ってきてもいいですか?」
「外か……。そうだなぁ……」
拠点には、皆の服を作ってくれる魔導人形も居る。だけどラウラは、その衣服では満足できないらしい。外の世界にある服に興味を持って、手に入れるために拠点から出たいと望んだ。レオンは少し考えてから答える。
「分かった。行っておいで」
「やったー! ありがとうございます!」
レオンも一緒に行こうかと思ったが、今は手が離せない。大事な研究の途中だったので。
ラウラを外に行かせるのは心配だったけれど、だからといって閉じ込めておくのは可哀想だ。
ラウラには実力がある。かつてレオンが倒した魔王と勝負しても、勝てるほどの。だから、大丈夫なはずだ。レオンは拠点の外へ出ることを許可した。ラウラはとても嬉しそうに、外出の準備を始める。
ラウラが拠点の外に出かけるという話は、すぐに皆が知るところとなった。彼女を心配して、ジェシカが同行するとと言い出した。
「ジェシカちゃんも、一緒に行ってくれるの?」
「うん。行こう」
「やった! ジェシカちゃんと、一緒!」
ジェシカは、拠点で二番目の実力者である。いつも剣術の腕を磨いていて、戦闘でとても頼りになる存在。ラウラとも仲が良い。
「私も、ラウラと一緒に行く。レオン様」
「そうか。ジェシカが一緒に行ってくれるのなら、心強いな」
「うん。任せて」
普段は感情の起伏が少ないジェシカだが、レオンに頼られて笑顔を浮かべた。
「じゃあ、行ってくるね!」
「行ってきます」
そして翌日。ラウラとジェシカの二人が拠点から出発した。生まれて初めて拠点の外へ出た彼女達は、どこかの街にある服屋を目指す。
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