第2話 完成品のチェック
レオンは、創り出したアイリーンの性能をチェックする。
アイリーンの見た目は二十代前半の女性。髪の色は黒色のロングヘアー。瞳の色も黒色。背丈は160センチで、スレンダーな体型だ。肌も、特殊な素材によって人間と同じような感触。内蔵も人間の仕組みと同じ。食事することも出来るし、舌で味を感じたり鼻で匂いを嗅ぐことも可能。服装は、レオンが旅をしている最中に購入した男性用の簡素なシャツとズボン。
彼女は、レオンの記憶を引き継いでいる。普通に会話が出来て、オリジナルな思考回路も持っていた。魔法石によって、生きている人間と変わらない反応をする。
「よし、問題なさそうだな。次は、もう少し複雑な動きができるかどうかテストしてみようか。剣と魔法の扱いに関しては、もう十分なレベルに達しているとは思うが、どうだ……」
「はい。試してみます」
アイリーンは、高レベルな剣技や魔法を生まれた瞬間に習得していた。製作者であるレオンの戦いに関する記憶も引き継いだので、後は自分の身体に合った動作をするように調整していくだけ。
「じゃあ早速、始めてくれ」
「了解しました」
レオンに指示され、身体を動かすアイリーン。簡単で単調な動きから、徐々に複雑で激しい動きを見せていく。
「おぉ、凄いな」
レオンは、アイリーンの動きを見て感動した。彼女が、予想していた以上の動きを見せてくれたから。戦闘用に特化させたわけではないけれど、彼女なら十分に戦える実力がある。
「ふむ、素晴らしいぞ。久しぶりにちょっと、身体を動かしてみるか。外に出よう」
「はい、レオン様」
最近は、魔導人形を製作するため作業室に籠もっていたレオン。身体が鈍っていたので、軽く運動しようと思ってアイリーンと一緒に外へ出た。
「それでは、いきます! レオン様」
「ああ、かかってこい。全力で!」
周囲を木々で囲まれた広場で、アイリーンと向かい合ったレオン。彼は大きく手を広げて、構える。反対に立ったアイリーンは、力強く拳を握る。
お互いに武器は持たずに、無手で向かい合っていた。
「えぇい!」
「……ふむ」
気合の入った掛け声と共に、攻撃してくるアイリーン。レオンは、その攻撃を正面から受け止めた。
地面が陥没するほど、ものすごい勢いとパワー。人間の女性では出せるはずのない強力な力。男性でも無理だ。魔導人形だからこそ発揮できる剛腕。だけどレオンは、平然とした顔で受け止めきる。
受け止めたアイリーンの腕を掴むと、彼女の力いっぱい投げ飛ばした。勢いのまま地面に叩きつける。地面に転がったアイリーンは、すぐに立ち上がって拳を構える。追撃は許さない。
「まだです!」
「頑丈さは十分。よし、次はこれだッ!」
自分の創り出した魔導人形の耐久力を、レオンはしっかり把握していた。これぐらいなら大丈夫だろうと予想して、容赦なくダメージを与える。
ちゃんと彼女の性能をチェックするために。
そしてレオンは、拳を突き出す。すると、衝撃波が発生してアイリーンを吹き飛ばした。だが、空中で体勢を立て直すと華麗に着地を決める。
「はぁっ! ッ! まだまだ、いけますよ!」
「次は、これだ」
息を荒げながら、再び攻撃を仕掛けてくるアイリーン。アイリーンの性能チェックは続いた。
「よし、いいだろう。合格だ」
「はぁ、はぁ、……。ありがとうございました」
数十分後、レオンは満足そうに微笑んだ。彼の前に立っているのは、ボロボロの姿で疲労したアイリーン。それでもしっかりと立って、頭を下げていた。
「なかなかの仕上がりだ。流石は、俺の最高傑作。よく頑張ったな、アイリーン」
「勿体ない御言葉。感謝します、レオン様」
レオンが褒めると、アイリーンは嬉しそうな顔をした。
初めて創り出したアイリーンの完成度に十分満足したレオンだったが、更に改良を加えようと決めた。もっと高性能にしてみたい。その方が絶対にいい。そのために、もっと魔導人形を創って実験してみる。研究して、改良方法を模索する。
こうしてレオンは早速、次の魔導人形の製作に取り掛かった。暇をつぶすために、何気なく始めた魔導人形の製作。だけどレオンは、どんどんハマっていった。
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