第16話【パーティー追放論】
それに新聞記者という元の世界の職業柄、情報をくれる者の好意は無下にはできない。
「じゃあその好意、受け取っておきましょう」天狗騨は応えた。
「それでこそテングダさんです」とネルリッタからは微笑みかけられていた。
と、その時背後でちょっとした騒ぎが起こっていることに天狗騨は気がついた。振り向けばリンゼとフリーがギルド組合員たちに取り囲まれている。
「あんた相変わらず抜け目ないわね」だとか、「なんでオメーみてーな奴が無双転生者とパーティーなんてやってんだ」とか、悪意の固まりとしか受け取れない雑言を投げつけられている。
反射的に天狗騨の身体が動いていた。
「ウチのパーティー員になにをやっている?」
パーティー員などという語彙など存在しないが、転生前は会社員だったので言い方もこうなってしまう。しかし囲みが解かれることなど無い。
「ちょっと、あんた達、うらやましいからって難癖つけてるんじゃないわよ!」ネルリッタがことばを発した瞬間にもう組合員たちが今までの立ち位置から動き出していた。
「すごいな、」思わず天狗騨の口からそう声が漏れ出る。
「そこはありがとうと言って欲しかったところですわ」とネルリッタ。
「じゃあ、ありがとう」
「いえ、別に言い直して頂かなくても。そんなことよりテングダさん、『パーティー』なんてものは永遠不変じゃないんですよ。魔物退治に役に立たないだとか足を引っ張るだけだとか感じたら、人を入れ替えてもいいんですよ」
「それはクビってことですか?」
「私たちは『追放』と言っていますが」
(同じ事だろ)と思う天狗騨。
「騒ぎが起こってしまったせいで先ほどの疑問の答えをまだ聞いていないのですが、無双転生者にとってパーティーを組むメリットとは何です? こう言ってはなんですが、私は人をクビにするだとか追放するだとかやりたくないのです。だったら最初から組まなければいいわけでしょう?」
「でもテングダさんは組んでますよね?」
「まあそこはそこです。成り行きですから。それで無双転生者にメリットはあるんですか?」
「効率ですね。1人で魔物に相対するよりも、人数を掛けて複数で相対した方が確実に早く仕留めることができます。もちろん懸賞金の分け前という問題は発生しますが、パーティーを組んだ方が確実に利益は増えるのは実証されていますね」
「構成員の役に立つ・立たないの基準は?」
「リーダーの裁量次第。テングダさんの場合、あなたは無双転生者なのですから、或る人間がそのままあなたのパーティーにいられるかどうかは、あなたの判断次第です」
「そもそも魔物退治のパーティーとやらの定員というか、適正人数が解らないんですが」
「そうですね、パーティーを仕切るリーダーの考えにもよりますが、多くても6人。つまり、リーダー視点ではあと5人、人を集めるということになりますね。それが利益の点からもっとも効率がいいはずです」
(なるほど、となると、俺の場合あと3人なのか……)などと天狗騨が考えているとネルリッタがギルド組合員たちの方を振り返り、
「自分を売り込みたかったら自分を鍛えな! 鍛えに鍛えりゃ席が埋まっていても追放になるんだ!」と大音声の説教。追放などよくある事と、言わんばかり。
それを聞いて天狗騨が思ったこと——
(いいよなぁ、あんな大声で怒鳴り散らせて、俺がやったらその辺一帯がれきの山だ……)
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