第48話 ぶらさがり女のお願い
行方不明事件唯一の生存者、伊藤エミの彼はやはりあの男だっのね。
エミを送った帰り、背中をポンと叩かれた。振り向くと…
艶やかな美女が媚笑を浮かべていた。
女はあの日アイミーと名乗ったぶらさがり女だ。
『何で?どうやって見つけたんだ?って顔してるわよ』
(ご明察だ)
いつの間に撮ったのか俺が映ったスマホ画像を見せつけ、
『これ、バラまいたの。探してって協力者全員に』
協力者…俺の周りはスパイだらけってワケだ。
こいつ日本に留学中で歳は18だとか言ってたな。
それも胡散臭い話だ。
この女自身も含めて。
「で、俺に何の用?」
『こっち来て』
女の態度が気に食わない
「やだね」
『私の誘いを断る気』
プライドの高い女だ。その美貌ならどんな男も尻尾を振るだろうよ。
「中国人は美人局がオハコだって話だ。じゃーな」
『待って!お願いだから』
余程の用件らしい。ちょっとからかってやるか。
振り向きもせず歩きだした。
『待ってってば!』
袖を掴んだ女の手を捻り上げた。
『痛い!』
物陰に隠れてた2人の男が飛び出してくる。
「放开她的手!」
やっぱりな。
「おい、通訳してくれ。懐の銃で撃ってみろって」
『そんなこと言えるわけないじゃない。あなた達も何もしないで!你们不要做任何事!』
「ショータイムといこうぜ」
というと素早くボディガードらしき1人に近づくといきなり殴り倒した。
殴り倒した男の拳銃を奪うと自分の側頭部へ銃身を向けて…
撃った!
1発、2発。
何事もなかったように拳銃を地面に放ると、ポカンとしてる女と男共を尻目に
その場を去っていく。
アパートに戻ると女が待っていた。今度は1人だけで来たらしい。
部屋へ入ると女も無言で後をついてくる。
「ようこそ。さっき振りだね。話を聞こうか」
俯いた女の顔がパッと明るくなる。
『不死の身体と超科学的なエアクラフトを操るあなたにしか…』
「買いかぶり過ぎだ。不死、いつから気づいてた?」
『さっき…』(以前からじゃなかったのか)
女ことアイミーの話は例のジャングルで行方不明になった父親探しの依頼だった。
報酬はお金で、というものの現金などコピーしようと思えば幾らでも作れる。
コピーだが本物の砂金。全てをコピーで賄える俺には金があっても使い道がない。
「金は要らない。腐るほどあるんだ」
『じゃぁ…』
「何のメリットもないなら依頼は受けないぜ」
『どうすれば…』
「さぁな」
アイミーは一呼吸して立ち上がると服を脱ぎだした。
「おいおい、風呂場はあっちだ。ショータイムはその後にしてくれ」
戸惑ってるアイミーに
「こういうの初めてか?」
キョトンとするアイミーに処女か聞き直した。
コクンと頷く。
アイミーのスマホが鳴る。相手は双子の妹だという。
『お姉ちゃん、どうだった?』
((💡))
妹の名前は?
エイミー…
条件は2つ。父親の生死に関わらずアイミーは生涯俺に尽くすこと。それと妹もだ。
お前たちの主な活動拠点は俺の住むマンション。の、この2つだ。
(まて、そうじゃない。今日の俺はおかしい。こんなの望んでない。頭では理解してるのに言葉にすると…これじゃ変態だろ。こんなの俺じゃね――)
『私と妹を愛人にして、エミって彼女はどうするの』
「あれは彼女じゃない。抱いてもいない。例えるなら仲間だな」
『そう…考えさせて』
「助けたいのに考える時間はあるんだな」
(おー睨んでる。その顔もそそるぜ)
「軍人か?パパは」
『違うわ。生物学者よ』
「いつだ、行方不明になったのは」
『一昨日…』
「俺なら会わせてやれるぜ。例えパパは死んでいようが、な」
『どういう意味?!』
「そのままの意味さ。ゾンビや幽霊じゃないぜ。本物のパパに」
「あなたには死人を生き返らすことができるっていうの!」
「それが出来るのさ」
『ありえない…そんなの信じられない…』
「信じる信じないはそっちの勝手だ。死んだと決まった理由じゃなし、例えばの話」 (違う、そうじゃない、俺が言ってるんじゃね――って俺が言ってるのか…
もう勝手にしやがれ!)
『いいわ、それで…』
「妹もか?」
『…』
「どうした?」
『いいわよ…私もエイミーもあげるわ!』
「オッケー交渉成立だ。じゃ行くか。妹はどうする?」
『え、私達も…』
「俺はパパの顔を知らないぜ。ジャッキーチェンに似てるとでもいうのか?」
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