第43話 しがみついた女 

ジャングルの転移ポイントの周りに群衆が屯ろっていた。

多いな。30人位か。

拳銃と機関銃で身を固めた軍部の関係らしき迷彩服の一団と、学者風なのが数名。

スコップとツルハシ、アースオーガらしき掘削機を所持した一団だ。

自衛隊じゃないな。となるとやつらは何者?


ステルスタイプⅡ展開中のマルチコプターから一団を見下ろしているが、

無音でホバリング中のマルチコプターに気づいた者はいない。

スキルのサードアイがやつらと関わるなと警鐘を鳴らす。


離れた場所で地上へ降りるとマルチコプターを収納し、

ステルスコートのフードを被り、身体全体をステルスコートタイプ1で覆うと自分の存在を消した。


(誰だ、誰だ、誰だ―黒いコートで踊る影って感じだな)

群衆の一団を頭上から見下ろしていたグレムリンの集団が居た。

が、アキラは気づいていない。


ゆっくりと転移ポイントへ向かう。

無重力シューズは足音も足跡も残さず滑るように地面を進んでいく。


俺の視点があり得ないものを捉えた。

冗談だろ…やつらのキャップにある✪のマークってレッドスターじゃん…


すると中国軍部とその関係者ってことか。

なぜここに中国軍が…

第一転移した先は日本の領土だったはず…


異世界共通言語でやつらの会話が理解できるのはありがたい。

どうやらオパールを採掘しに来たらしい。オパール…竜人族の集落には無かったな。

なぜオパール?

ま、いいや。関わるのは御免だ。とっとと家へ帰ろう。


((う、うわっ、ぎゃっ、ぐぇ、目が、目が、助けてくれ!))

((襲撃!何かの!))

パンパンパンパン!タタタタタタタッ…ズヒューンンンン

悲鳴と発砲音!

後ろを振り向く。

あー、そういうことか。勝手にやってくれ、俺には関係ないね。

この隙に乗じて転移ゾーンからトンネル洞窟へとワープした。


「なっ!」


ワープ先の洞窟にも…中国軍人だらけだ。こいつらも銃を携帯してる。

法治国家が放置国家って…

どうなってんの?

ここ数日の間に日本が中国に占領されて、

まさか!


「なんだ!何かと打つかったぞ!什么!有什么东西撞上了!」

うじゃうじゃと動き回って避け切れね――アンタら蟻ンコか!


『きゃっ』


「女!」(マネキン顔した超美形…)

見えない俺とすれ違い様にぶつかり尻餅をついた女は

『そこに誰かいる、見えないけど。那里!有人在、虽然我看不见…』


パンパンパンパンパン!


発砲音と共に防弾コートに弾かれた弾丸は地面に落ちる。

撃ちやがった!こ・い・つ・ら!

「このヤロー!」

拳を握りしめ、周りで銃を構えた軍人共目掛け片っ端からブッ飛とばしていく!

頼りの銃弾は弾き返され、見えない何かからの攻撃に軍人たちも為す術がなかった。


手加減したけど…死んじゃったかな…

(カッとしてつい…冷静に考えて、もし俺が逆の立場だったら…やっぱ撃つよな)


『日本語で你这个东西って…インビシブルマン、あなたジャパニーズでしょ!』

あらま、この女日本語ができるのか。面倒だな。


バイクで逃げ…いや見て驚け。これが異星人のテクノロジーだぜ。


呼びだしたマルチコプターで飛び立つと同時にステルスⅡで偽装する。


『消えたぁぁぁ――』

『いやぁぁぁ――落ちる――死んじゃう――パタイコ――!』


さっきの女が、マルチコプターの縁にしがみついている。

なんてこった…厄日だぜ…




















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