第40話 異世界はやっぱブレードだな
「うぅ…酷でぇ…」
牢屋だった瓦礫の中から這いだすと周りを見回した。
どうやら火の玉爆弾の直撃を受けたらしい。
牢屋も今はただの土塊だ。
その土塊の中でフォーリアは死んでいた。
フォーリアの右手指の赤かった宝石が黒ずんでいる。
指輪だと思っていた宝石は身体の一部だったらしい。
死亡と同時に生前の不具合もリセットされ、邪魔だった手首の縄も消えていた。
双方の戦いはエルフィー側の方が敵の奇襲攻撃で被害は甚大だが、
小回りの利くエアバイクとマルチコプターに乗るエルフィー族は割と善戦していた。
指先から迸るビームで小回りの利かないジャバウォックを翻弄している。
あの図体だから即死はしないがキメラとはいえ生物としての痛みは伴う。
問題なのはリビングクラッシャーの方だ。
手足が踠ても痛覚がない分タチが悪い。白色の人工血液なのかオイルなのかを
撒き散らして動き回る。まるでゾンビのように。
「戦闘の最中走って逃げだすのはムリだな」
喉はカラカラ、腹はペコペコ。なのでシャドールームへ逃避する。
避難しながらふとイヤな思いが過ぎる。
(そういやこいつらこの世界と地球を繋ぐ転移ポイントがあるのを知らないのか?
エロフどもにバレたら…ヤバいな)
さっそく冷え冷えのおビールを飲みながら熱々のカップ麺を啜る。
シャワーを浴び、人心地つくとお楽しみの検証だ。
と、その前にSOUL✞8にスキルポイントを振り✞9に戻しておく。
シャドーマンを呼び、シャドーボックスから電磁ブレードを取りだすと電磁
ブレードを振ってみた。異世界といったらやっぱ剣だよな。
〚認証・初期登録完了〛
おお!登録って登録だよな。
「鑑定」
《電磁ブレード・ブレードの破壊力は使用者の能力に比例し、あらゆる物を切り裂きます。使用権は登録者のみです。第3者は使用できません》
マジっすか!使ってみたい――
反重力シューズは…
〚認証・初期登録完了〛
やった、同じだ!
防弾防刃ステルスコートとパラライザー銃は…登録できないや。
盗られたり盗まれたらアウトか。
反重力シューズを履き、シャドーマンと外にでる。
お―すっげぇ――浮いてる。ルームの床から5cmくらい離れて浮いてる。
外の広い大地を蹴る!
うひょ――アイススケーターみたいだ!ス――ッて、もう病みつきだ。
鑑定だと一瞬でMAXスピードの秒速340mに達するのだとか。
やってみたら…身体が空気摩擦で燃えそうになるわ、仰け反って上半身がついてこないわ、息継ぎはできないわで、数秒が限界だった。
マンのシャドーボックスから
お待ちかねの反重力バイクと反重力マルチコプタ―がでた―!
ワクワク感がハンパない。メカは男のロマンだ。
マルチコプターもバイクも登録制だといいけど。
じゃ、マルチコプタ―ON!
〚認証・初期登録完了〛
やった!登録制だと万が一盗まれても「豚に真珠」
モニター上に広範囲の3Dマップが映る。
フライトレーダー?航空機のモニターについてるやつだ。
どういう原理なのか解らないがフライトレーダーだ。これさえ有れば…
操縦はオートマ車と変わらない。
ハンドルを握ってからの―テイクオフ!
「うひょ――」高――空が近――
反重力バイクも登録制だ。
反重力バイクにモニターはないが遊び心満載だ。
車輪が浮いているこのバイクは地表の影響を受けない。
ドライブ方式はクラッチのないスクータータイプだ。
反重力バイクで飛ばすと涙が滲む…ゴーグルか風防が欲しい。
異世界じゃなくても乗れるかな?日本で乗り回したら皆んな驚くだろうなぁ。
シャドールームから再びエルフィー族の村へ戻る。
どうなったかな。
「きもっ…」
バラバラにされたリビングソルジャーの胴体が蠢いていた。
ジャバウォックの死体がないのは魂が抜けて自然消滅したのか。
エルフィーらが同族の遺体を回収しているが、上空にジャバウォックの姿はない。
どうやらエルフィー側が戦いの勝利を収めたらしい。
殺しを生業としてるエルフィー族なんか好きになれないし、
どっちが勝とうが負けようが俺には関係ないし、もう2度と逢いたくないし。
ではサラバと素早く物陰からスタコラ、、とはいかず見つかってしまった。
「いたわ、あいつよ!」
「やっぱりスパイだったのね」
「捕虜になった振りして手引して、保管庫の武器やバイクもあいつが盗ったのよ!」
「みんな――こいつが死んだ同胞のカタキよ――」
よりにもよってイシイとバナナだ。あいつら生きてたのか。
盗ったのは俺だけどスパイじゃね――
地面を蹴る反重力シューズは後方に旋風を巻き散らしながら滑るように加速すると、エルフィ―族の村を後にしていった。
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