第33話 再びジャングルへ

ジャングルは相も変わらず暑っちぃや。

さてと、やるか。鬼が出るか蛇が出るかだ。

このしょぼっちい転送目印へ再び戻ってこれるか分からないけど。


妹のこともあるし、最悪シャドールームで死ぬまで暮らすか。

あとは野となれ山となれだ。と、強がりながらジャングルへと向かった。


ジャングル内の生い茂る木や葉は邪魔にならない。

どれもこれも俺より高い位置に生えてるからだ。


雰囲気がまるでジュラ紀だな。行ったことないけど。

心細いのでシャドーマンをお供にする。

暫くすすむとギャッギャッとかギギューという聞き覚えのある叫び声が。


その声の先には巨大な岩が蠢いていた。なんだあれは、生きてる岩?

初っ端から勝てる気がしねぇ。


もっと近づくと岩の真ん中が大きく膨れていた。

ギャーギャー騒がしいのは案の定グレムリンだ。

グレムリンが岩を牽制している。

その岩が首を出した!岩じゃない。

超巨大な蛇だ。


蛇は丸く膨れた腹で動きが鈍いらしい。

ていうことは、まさかあの膨れた腹の中に…まさかね。


正義感などない。食われたのなら自業自得だ。と思う。思うが哀れだ。

弔う代わりに大蛇にはライフポイントになって貰う。

無謀にも大蛇に挑むのかね、と別の俺が問う。

笑いながらそうだよと返す。

震えてるのはただの武者震いさ。


「シャドーマン、お前はグレムリン達を牽制しといてくれ」

了解したのかシャドーマンが飛び出していく。

手製の銛を持ったまま芋引くように大蛇に近づいていく。

木もれ日から漏れる射光で大蛇の影と俺の影を合わせるとシャドーダイバーで大蛇の影へと潜り込む。


先ずこの膨れた腹だな。この辺りでいいか。

影から銛先の出刃包丁だけを出すと一気に大蛇のを引き裂いた。

血が飛び散るが影の中までは届かない。

「キシャ――――」

声を震わせ大蛇が頭を上げる。と、苦しいのか呼吸音なのか

「シュー、シュー」いいながらジャングルの奥へ移動していく。


裂かれた腹から出てきた物体は案の定…人だった物体は既に溶け掛かっていた。

こいつのライフポイントは高そうだぜ。


大蛇の影に潜んだまま腹周りを出刃包丁で刻んでいく。

出刃包丁じゃ大蛇の皮を裂くのが関の山だが、大蛇は何処から攻撃を受けているのか理解できない様子で只管逃げに徹している。


腹を幾重にも裂いていくと血を撒き散らしながらもんどり打ちくるりと転げ回りだした。

急所は頭か心臓だよな。蛇の心臓って何処にあるんだろ?


シャドーマン相手に飽きたのかグレムリン共が戻ってきた。

丁度いいや、今だけ共闘して大蛇の相手をして貰おう。

「戻れシャドーマン、ご苦労だった」

戻ったシャドーマンも大蛇の影の中へ潜らせた。


相手が瀕死だと分かるとグレムリン共が無茶な攻撃を仕掛ける。

「あーあ、1匹呑み込まれてら」


が、元気な姿で腹からピョンと出てきた。それを見た他のグレムリンも大蛇に呑み込まれていく。絶対ワザとだろ。

そしいて次々と腹から、、出て来なかった。

「シャガ――シャァ――」

相当苦しがってる。

「あ、ヤツら腹の中で暴れてるのか」

ヤバくない?このまま死なれたら俺にライフポイント入らないんじゃない。


骨折り損のくたびれ儲けはご免だぜ。

シャドーダイブ中に、、どうなんだろ?試してみるか。

「アストラルディオ!」

自分の身体から霊体がスッと抜け出す。

シャドーダイバー発動中でも出来た!

俺の本体は影の中へ潜んでいる。

試すぞ――ルーンナイフでライフポイント頂き――


「ルーンナイフ!ナイフ!ナイフ!」(+1)(+1)(+1)ライフポイントが溜まっていくのが分かる。


あれ、もう頭打ち。5ポイントで終了。

多いのか少ないのかワカラナイや。

それじゃお次はグレムリンだな。

グレムリン共にルーンナイフを飛ばす。

グレムリンは1匹1ポイント。16匹で合計16ポイント!

すげぇ――!


大蛇、言いづらいな。蛇王でいいや。

既存のライフポイント5と合わせてP26も!棚からぼた餅じゃん。

あー不味い。そうこうしている間に蛇王が逝きそうだ。


ディオを解除して自分の本体へ戻った。

だけどさ、ライフポイントって何だ?ライフだから、無くなったら死ぬでしょ普通。

でも死なないよね、コイツら。


ならまだポイントが入るのか試さなきゃ。

シャドーダイバーで蛇王の影へ潜ると、チューブを思いっきり引き絞った銛でコイツの目ん玉の奥へ届け―!と突き入れた。

「クワ――ッ」

やった!ヤツの断末魔だ。

今は銛が抜けないだろうけど、蛇王が消滅してから拾えばいいや。

ってキタ――

グレムリンが集団で襲いかかってきやがった。16匹も。素手だし、こりゃムリだわ。


近づいてきた1匹にシャドーダイバーを仕掛ける。シャドーダイバーでこいつらの影に潜み様子を伺う。

キョロキョロと消えた俺を探すが何処にも見当たらないと理解すると学者らの死体を運び出した。

(コイツら人を食うのかよ!)

グリ公どもの巣に持ち帰るつもりなのか。

巣を見つけて一網打尽にしたいけど、銛が。

この場所を離れるとここへ2度と戻ってこれない自信がある。

仕方ないな。

たださぁ、武器屋とか防具屋とか討伐報酬とが無いんだもんなぁ。

アテが外れっぱなしだよ。


グレムリンの影から抜け出し、学者らの死体と共にヤツらを見送る。

蛇王の霊魂が去り、同時に死体が消えていく。地面に刺さってる銛を抜くと。

ライフポイントがP5入ってきた。ルーンナイフはライフを半分削れるのか。


ちょっと待って。空中にナニか浮かんでる。

「鑑定」

《クリティカルブーメラン・自動追尾型・自分より弱い相手に対しクリティカルが発現・必ず戻ってくる》

なんですと―!

討伐後の報酬ってあったんだ。よかった―、それとカプセルみたいなコレは?

〚鑑定」

《1度だけ◎蛇王を呼び出せる》

(二重丸って…)

なるーほー、凄いけど蛇王弱かったじゃん。


見てくれはいいんだけど。ま、持っとけばなにかの約に立つかもね。

それよりクリティカルブーメラン!


使わせて頂きますとブーメランを手に取る。

すると手の中でブーメランが吸い込まれるように消えた!どういうこと?

右手を軽く振り振り下ろしてみた。

「でたっ」

右手から放たれた濃紺のブーメランが木々の間を舞う。

ターゲットがいないので一周して戻ると手の中へと消えた。

ブーメランと念じると左右どちらでも、手首を軽くスナップさせるだけでも発動する。


この武器は自分の成長と共に成長するんだ。使い勝手に難あるけど、

使い熟せたら一生の宝もんだな。


さっき…もしグレムリン達の後を追ってたら討伐後のクティカルブーメランもカプセルも、この報酬は手に入らなかった。

人生何処でどう転ぶかワカラナイってことかもね。


暑さと緊張の連続で喉がカラカラだ。あと何か食わなきゃだし。

この世界じゃ時間なんか気にしてもしょーがない。腹が減れば食う、喉が渇けば飲む、眠くなったら寝ればいいし。

じゃ、安全なシャド―ルームで身体と心を癒やすとしましょ。


あ、クリティカルブーメランの威力って、自分より弱い相手ってことだけど、そういや俺ってレベルという概念も枠もないんだよね…つまり豚に真珠ですか…







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