第31話 伊藤エミ

「ひっ!」

移動先には上下白服を着た若い女がいた。学者の仲間だろうか。

驚いた顔で俺と持参した手製の銛を見つめている。


「もしかして、あなたは、さっき車で、、の方?」

頭の回転がいいのか状況的な理解が早い。そこらのバカ娘じゃないようだ。


「キミ1人?他の人は」

「危険だから女はここで待ってろって。奥へ、、」

じゃ、今から見たまんまを警察、いや警察じゃ頼りないな。

「自衛隊に出動要請を頼むと告げて欲しい」

「え、じ・え・い・た・い・に。どうやって?」

「キミに任せる」

「スマホ持ってるか」

「はい」

「じゃ、証拠として周りのの景色を撮影して」

シャドールームならシグナルはあるが、他人にはこの能力をバラしたくない。


「あなたは?」

「ここでキミの仲間を待ってるよ」

「名前は?俺は、よやすあきら」

「私は伊藤エミ」


突然キシェ――《キシャ――》

ジャングルの木上にグレムリンの集団が現れた。


「キャ――なになに?」

「ついでにアレも撮影しとけ」

と告げ、銛を冓えた。グレムリンから目を離さずエミへ

「襲われそうになったらそこの草のない地面を踏め!さっきの場所へ戻れる」

「まってまって!さっきの場所って…」

「踏めば分かる」


「グレムリン、縮めてグリグリ&グリ公。お前らは初めて人間との遭遇だろうが俺は3度目なんでね」

そんなもん知らねーと言うかのように

《シャァァ――》

と奇声を発し木々の枝を震えさせるとヤツらが襲いかかってくる。


1,2,3,4、5匹か。

特攻1番手だと真っ直ぐ飛び込んできたグリグリを横薙ぎ一線血祭りにあげ、

血飛沫が舞うグリグリを尻目に返す刀のように銛先に付いた出刃包丁で着地寸前のグリ公も叩き切る。


空中だと避けようもなく楽に勝てた。が問題は地上戦だ。

残り3匹は着地したが、腹を裂かれ転げ回る仲間を気遣う素振りもなく3匹ともこっちへ襲い掛かってくる。


「こいつらに友情とか仲間意識とかねーのかよ!」

思わず毒づく。

エミだっけ。彼女まだ逃げないのか、意外と度胸座ってんなぁ。


だけど彼女が逃げてくれないと…見せたくないけど見せなくちゃイケなくなる。

って、もうそんなこと言ってる場合じゃね―!


雄叫びをあげて迫る3匹は目の前、しかも不味いことに逆光だ。

グリ公らの横へ回り込み(太腿の傷が痛ェ――)

手前のグリ公の影と俺の影が重なった。

「シャドーダイバー」を発動する。


一瞬で身体ごとグレムリンの影へと沈み込んでいく。

「うまくいったぜ」

ヤツら俺が急に消えたのでキョロついてら。


その隙に手前のグリ公のケツメド目掛け出刃包丁を突き刺した!

((ブスッ))

嫌な音がしてクリ公が転げ回る。


「お前らも俺を殺しにきてるんだ。遠慮はしないぜ」

残り2匹の影に潜ると同じ要領で倒していった。

本当は1匹残しといてディオのルーンナイフを試してみたかったのだが。


「ふぅ――」

一息つく。後ろを見るとエミと名乗った彼女はまだスマホで撮影してた。

うーん撮られちゃったか。困ったなぁ。撮影してって言っちゃったしなぁ。

消せとはいいにくいや。


グリグリ達の魂が何処かへと去り、残った死体が消滅していく。


「えっ!」


その光景を見たエミ驚きの声を上げた。

スマホ撮影を中断し俺に迫る。


「驚いたわ。あの恐ろしげなエイリアンよりそれを事も無げに倒したあなたは一体何ですか?人ですか?もしかして、、魔物ですか?私を食べるんですか?」

と来たもんだ。

別の意味でなら食べたいけど。


返事をする前に(お,きたきた。お楽しみのライフポイントだ)

エミが恐る恐る

「聞こえてます?」

と再度俺に尋ねる。


うーん、なんていえばいいかなぁ。

「お察しの通り俺は人と魔物のハーフだ。機密保持のためグリグリ、いや、こつらはグレムリンというのだがヤツらとの死闘の映像は公開しないで欲しい。もし公開したら食べちゃうぞ」

「ひっ、、お願い、私を食べないで下さい」

エミの顔が青冷めていく。


冗談てワカラナイのかよ、真面目ちゃん。ちと不味ったかな。

「じゃ、じゃぁお仲間を殺したの?」


えーいこんちくしょう、もう後には引かねー

「いや、この世界。世界と唱えるならここの魔物は俺の敵だ。だが見知らぬ貴女に俺の身の上話をするつもりもない」

「そう、、見かけに依らず冷たいのね」


面倒臭い女だなぁ

「ま、俺がいいたいことはだ、さっきもいったけど俺が映っている場面は削除してから一般公開して欲しいということだけだ。魔物は映ってるのでお偉いさんにも理解して貰えるだろう」


死闘の場面なんか公開されたら今後動き辛い。

「わかったわ」

分かってくれればいいさ。いい子だ。

「それなら私、貴方と行くわ」

「なんでそーなるの?」

「食べないんでしょ」

「食べないけど…」

「ならいいわ」

「なにが?」

「行きましょ」

「何処へ?」

「皆んなを探しに」

なんでこの女のペースなんだよ。。


[エミだったっけ。お前IQ高いだろ]

「135よ」

「やっぱり。どこで俺の嘘を見抜いた?」

「魔物は俺の敵だといった時」

相当の切れ者だわ、この女。

「俺と、つまり一緒に来るってこと?」

「そうよ」

「危険だらけだぜ」

「守ってくれるんでしょ」

さっきのは、言いかけて止めたIQ135の女と言い合っても勝てる気がしない。

「今のままじゃムリだ(何に使うか不明だが)ライフポイントを貯めないと」

「ポイント?なーにそれ?」

仕方ないバレついでだ。口でいうより論より証明

「こうするの」

俺はエミを抱きしめた。

「えっ?なになに?ここでするの?」

ここでの意味は何なのか不明だが、続きは

「シャドーハウス!」

「ここじゃイヤ――」


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