第16話 少女と女

フェラル教は一般信者を含め各国の政治政党に崇拝者並びに信仰者を据え物凄い数の信者を獲得している。


葉山リサ、今は女だが中身は冬生利久という24歳の男だ。


店ではそこそこ人気がある。指名された馴染みの客から旅行にいかないかと誘わている。

といっても本指名のお気に入りのナナが。なので俺はオマケだ。


ナナはオジさんと2人りきりじゃヤダから俺にもついてきて欲しいとのことだった。行き先は聖神国家フェラル。

客はフェラル教の信者らしいが、お供にお気にのナナを連れて行きたいのだろう。


温泉がどうとか、メシが旨いだとか、カジノまであるとか、お金はたっぷりあるからとか、火傷しそうな口説きようだ。


あの老博士が言ってた聖神国フェラル。

間接的にだがそこの聖神と俺は因縁浅からぬ関係だ。

店に1泊2日の旅行に行くと説明すると、2人とも休むの?とママは渋い顔をしているが、2日休暇を貰い明くる日ナナと空港へ向かった。


日本国際空港から聖神国家フェラルまで直行便で5時間。直行便がでてるなんて日本国とフェリス教との繋がりは強固なのかも知れない。


ビジネスクラスって言ってたじゃない!

日本国際空港到着後に客から手渡されたチケットには、、

「俺だけエコノミークラスかよ。2人はビジネスクラスでヨロシクやってろ!

ちぇっ、機内食しょぼいなぁ。。」


ガンダ国刑務所を脱走中の俺は遺伝子操作能力で女に変化後、葉山リサと名乗ってるだけなのでパスポートが作れない。

例の如くファントムとライトニングで搭乗機に乗り密出国する。


聖神国フェラルの空港窓口に到着すると空港内の通路は全て動く歩道だ。

エントランスから外に出ても動く歩道だらけ。金掛かってるなぁ。。


ナナと2人で驚いていると目の前にタクシーが止まり、3人で一路ホテルに向かう。部屋は男女別々にしてもらい部屋に荷物を置きに行くが、これがホテル?と思うくらいすっげーゴージャス!


周りのホテルも負けじと艶やか~で、流れる温泉プール、ウォータースライダー、アクアスライダー、ホテルなのにアトラクションの宝庫だ。


バカンス気分なのか周りは女だらけ。オマケに室内にも温泉プールつきだ。

ホークアイを起動しなくても遠くに観覧車とローラーコースターがよく見える。

うん、一言でいうと、なんだここはって感じだ。


夜は夜で野外バーベQが凄いらしい。食事が済んだらカジノへ連れてってくれるのだとか。

宗教国家なのにカジノかよ。大金が動くカジノ周辺には夜の蝶が群がってるんだろうな。宿泊先のホテルの看板にはゴージャスホテルと。そのまんまかよ。


明日は礼拝だとかで俺だけ別行動にさせてもらった。ナナは嫌がってたが仕方ない。俺にはやるコトがある。

 

クリーム色のカジュアルスーツに着替えるとミラーサングラスに白いスニーカーという出立ちでタクシーに乗り礼拝堂へ向かった。

ナナはまだ寝てるが客と宜しくやるだろう。


すっげぇ人、ひと、ヒトだらけ。

礼拝堂の建物バカでかいし、中は広いし、フードコートはあるし、まるでお祭り気分だぜ。


礼拝堂を抜けると教会事務所売店といのがあった。

店内を覗くと信者らしき客と見分けるためかスタッフの装いが白一色で統一されていた。

俺の方を見て(男だが今は女だ)デスクで首を傾げた教会のスタッフらしい女に聖神様に会えないか尋ねるも一般の方とは会えないし、人前に出る方ではないというそっけない返事だ。


ではどこにいるのか尋ねるが、

「なぜ?」

そんなことを聞くのか?と怪しまれてしまった。


ちょっとマズったと思いながらも聖神様の姿が拝見できるものはないか再度尋ねてみた。

「知らないの?」

みたいな顔で女が差し出した画像を見て固まってる俺に、人は見かけに拠らないものよ。と諭されるも、人かこれ??


詳しくないが俺はこいつを知ってる。

その画像に映ってたものはアヌビス神そのものだったから。 


アヌビス神を信仰してるのか?狼の顔は被り物だと思うが、まさか、、ね。

(それにしてもこの女、しゃぶりつきたくなるという表現がピッタリの美女だよなぁ、いくら見てて飽きないし)


『少女の姿で口説くのか。ナンパは次回までとっとけ』


(ちぇっ!)


売店をでてから自分なりに思考するもサッパワイヤー

(さっぱりわかんないやの略)


掴みどころがないよな。歩きながらジンに問いかけるが、ジンはホークアイを起動する。


『それより目の前にある山の頂上、その天空を見てみろ』

山の頂上にある天空を見てみると、、


「え、ナニあれ?!」

『神殿、、だろうな』


「神殿?なんで空中に浮かんでるの?信者は驚かないの?第一神殿の噂すらなかったじゃん」

『信者、いや、人には見えないように工夫されている。光学迷彩の応用だ』

凄っげぇ、ホークアイってそんなのも看破できるんだ。でも

「これって秘密っぽいじゃん」

『行くぞ』

「は?え?」

ジンが神速ライトニングを起動する。テレポートしたのかと錯覚してしまうほど素早く山の頂上へ到着するも天空神殿へはたどり着けない。


「き、消えた?!」


事務所の女性責任者から少女を監視るよう指示された男は、

少女を尾行していたが、瞬きすらしない間に突然女が消えた。何処を探しても見つけられない。

驚いた見張りの男は急ぎ事務所へ戻ると興奮しながらも女性責任者へ見たままの出来事を告げた。


「消えたっていうけど、どういうことなのか見てみないと分からないわね。でも何かを探っているのは確かね。間抜けなスパイってところかしら。放っておけないわね。スパイ退治は私の仕事だし」


┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈


近くで見る天空神殿は燻銀色をしていた。間近で見た天空神殿は、

「これ本物の円盤じゃね?」だった。


驚きと同時に、天空神殿が浮いている高さに思わず

「高っけー、ムリじゃね、これ」

と、思わず溜め息が出る。


『素粒子で反重力物質を構成した。空中を走ることもできるぞ。ジャンプしてみろ』ホントにぃ、いっつもいきなりなな展開だもんなぁ。

「ライトニングは?」 

『天空神殿で何が起こるか分からない。このまま行くぞ」

「じゃ、やるよ。ジャンプって、ジャーンプ!」

ひょえーーまじっすかぁぁーーリュウセイごぉぉーー


ライトニングと反重力のコンビネーションで瞬時に円盤のような天空神殿にたどり着くが、やっぱ円盤じゃね?みたいな。


それに神殿というか円盤の入り口が分からない。


「ジン、中に入れないよ」

『未知との遭遇だな』

「なにそれ?意味不」

『どうやら客を迎える準備がまだ出来てないらしい。出直すぞ』

「何だよ、なぞなぞかよ」

『フッ』

「笑った、いま笑っただろ!」

『主人が不在ってことだよ』

「なるほど上手いこと言うし」ってなんだよ、ブツブツ


着地も反重力を使うとラクチンだ。

『固有能力に反重力が追加されてるぞ』

「空の散歩ができて嬉しいけど、攻撃能力が欲しいよ」

『そのうちにな』

分身の術!ってムリか。

この間、葉山リサが神速ライトニングを起動してから数秒しか経っていない。


┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈


事務所にいた女性責任者の行動は早かった。スタッフに少女の特徴を告げ、

発見次第連絡するよう命じる。

主だった部下にも捜索を指示すると自らも捜索にあたった。


捜索を開始して直ぐに連絡が入る。

「えっ、見つけた、うんうん、そう、すぐ行くわ」

クリーム色のカジュアルスーツを着た少女を見つけたらしい。


連絡があった場所へ向かうとクリーム色のカジュアルスーツを着た例の少女っぽい

若い女がいた。事務所にいた女はこちらに向かってへ歩いてくる葉山リサに声をかける。


先程はどうもと挨拶する女は売店にいた美女だ。

女は自己紹介が終わると、初対面なのに名前は?歳は?何処に住んでるのとか鬱陶しい。

警察官かと突っ込みたくなる。

根掘り葉掘り聞きたがる残念な美女だが、俺好みだし、こんな出会いじゃなきゃ口説いただろうけど。


仮の姿だが、お気に入りの葉山リサのまま面倒事に巻き込まれるのも御免だ。

残念だが切のいいとこで逃げるしかない。


「貴女に興味があるの、ちょっとオフィスで話しましょ」


そんなのイヤだね。


本音はそうだが、建前上承知すると、女はオフィスまで案内するつもりなのか先に歩きだした。

ついて行く振りしてドロンを決め込む。


女は歩きながら自分の未来視を覗くと数秒後に葉山リサがいなくなることに気づいたが、逃げても無駄なのにと余裕をかます。

ちょっと前に追跡マーカーを葉山リサの視神経に貼りつけていたから。だが、、


【神経系統に異物の侵入を確認、分解します。分解完了しました。代謝作用で体外に排泄されます】


「ジン、あの美女だろ。なんか仕掛けてきたぞ」

『ああ、ひょっとするとこの女がそうなのかもな』

「なにそれ?」

『あとでな。行こうぜ』


ジンが神速ライトニングを再び起動する。自己紹介で水沢響子と名乗った女から見れば一瞬で視界から消滅したように見えただろう。


「消えたわ!見てたのに、、消えた。えーー信じられない」

旋風が水沢響子の髪を撫でいく。


「あれ、あれれ、どうして??貼り付けた追跡マーカーも消えてる。えー、何でよー!?」


水沢響子は白装束から普段着へと急いで身支度すると部下らしき男を連れ、

葉山リサの後を追った。


ホテルへ着いても落ち着けないし、仕方ない。騙すようでイヤだけど。

ナナに弟がケガをしたと詐偽の報告をし、駄々をこねるナナを置いて先に日本へ帰ることにした。

フェラル国際空港で日本行きの飛行機に無賃乗車する

(無賃乗機かな?)

日本への密入国は2度めだな。。


水沢響子は葉山リサの宿泊先を見つけるも既に日本へ帰国した後だった。

明日に控えた日本への帰国予定を早め、部下の男と共にフェラル国際空港へ向かった。


┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈


日本到着後に各支部のフェラル教信者を動員し葉山リサの消息を追うも一向に見つからない。


まるで存在してないかのように葉山リサは消えてしまった。


「どうして見つけられないのかしら?信者の警察関係者が調べても全て同姓同名の別人だわ。不思議な娘。でもいよいよ怪しいわね、逆に興味が湧いてきたわ」


ラウンジ風クラブ、楓という店にミキという源氏名のホステスがいるという情報が寄せられてきた。調べてみるも歳は17、8だろうという噂と葉山リサという名前以外、少女の情報が掴めない。情報がない、つまり戸籍を調べようにもその痕跡がない。


あり得なかった。


「つまり、、偽名ね。17、8の小娘が偽名で通すって何者かしら?

興味津々、また会えるわね。楽しみだわ」






















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