第17話 少女対刺客

葉山リサは水商売に慣れてくると男のあしらい方も板についてきた。

今は女性だが中身は冬生利久という24歳の男だ。


「ねぇねぇ、怪しい男女がミキのこと調べてたわよ」


と同僚のユカが耳打ちしてくれた。店での源氏名はミキで通してる。

その怪しい男女が関係してるのか知らないけど、今日はやけにお客の視線がこっちに集中してる気がした。


仕事終わりに初見の客からアフターに誘われたけど。

こいつ店内でこっちをじジーっと見ていた客じゃん。

キモイからお断りだぜ。なんとなーくやばい雰囲気ビンビンだし。


じゃ、とっとと神速ライトニングでマンションまで帰るか。


自宅マンションのエントランスでチクって感じの痛みを肩に感じた。

が、振り向いても誰もいない。たいして痛くないが身体が痺れて息も苦しい。


ヤバっ、何かされたんだ。


すると脳内にアナウンスが響いた。


【アコニチン系アルカロイド、トキシン系神経毒を感知しました。

 中和します。免疫及び抗体の作成中…中和完了しました】


毒!


「ジン、敵は?」

『影のように現れ、煙の如く消えた。見当もつかない』

毒は中和されたが危うく命を落とすところだった。再びアナウンスが告げる。


【反撃を開始します。自動反撃デスタイムが起動します。対象を補足、反撃完了しました】


は、反撃!そんな事ができたの?

『固定能力に反撃とある。それだろう』


反撃したけど敵は見当たらない。そもそも反撃したっていうけど、相手にどんな攻撃をしたのかも知らない。自分の能力なのに。


「ジン、どんな反撃したんだ?」

『知ってるだろ。唯一の攻撃能力はパラダイスだけだ』

「でもパラダイスは見るとか相手に触れたりとかしない限り使えないじゃないか」『とすれば敵の攻撃をそのまま返す。文字通りに受けた攻撃をそのまま返すということだろう』

リフレクたいな?

『…』

リフレクを知らないのか… 


敵を補足って、見えない敵を、何処にいるのか分からない敵を、どうやって反撃できたのかもワカラナイ。

自分の能力なのにワカラナイことだらけだ。


『このままエントランスの自動ドアまでゆっくり歩くぞ。次にヤツが現れたら捕まえてパラダイスをプレゼントしてやる。いや、正体を確かめてから、だな』

(帰宅が遅くなるなぁ、、冷たーいカルピスが飲みたいのに、、)


「あいつ、あの少女、普通に歩いてるぞ、、」

水沢響子の部下の闇法師ことダークネスマジシャンは少女から10m離れた物陰で闇と同化している。


少女のマンションを監視していたはずの男は、影から影へと移動し、10倍に強化した即効性の致死毒を毒針を飛ばして注入したにも拘らず、何事もなかったように歩く少女に驚きを隠せないでいた。


「お、おお、これは一体、、?」

異変を感じた闇法師の身体に毒が回り始める。


「あ、これは、毒?」

四肢の痙攣と呼吸麻痺で心臓の鼓動は休みたがっている。


不味い、心臓まで麻痺が。

なぜだ?

なぜ俺の毒が?

このことをルナ様に報告せね、ば、、


葉山リサのデスタイムに反撃され、闇と同化したまま動かなくなった闇法師の姿を見たものはいない。


「賊、来ないね」

『もう去ったと見ていいだろう』

「じゃ帰る!シャワー浴びて 冷たーくて酸っぱいレスカが飲みたーい」

『おいおい、この頃口調が変だぞ。気持ちまで女っぽいぞ』「

「さては私に惚れたな」

『いってろ、帰るぞ』

「ハーイ」

『…』


パチパチパチと手を叩いたような音が、、

音がした方を見ると数メートル離れた地点で闇がユラリと動く。


「どんな手品を使ったのか、小娘がいきなりエントランスに現れたのには驚いたが、

いやいやお見事。どうゆう手で反撃したのかさっぱりだ。見えない敵を攻撃するとは些か驚いた。恐れ入谷の鬼子母神だな」


挨拶がてらに恐れ入谷の鬼子母神だな、などと古臭いことを言うコイツは何だ?

こんな場所にいるぅてことは。コイツは、、敵、敵だな。おいおい、早速新たな敵かよ。毒使いを倒したのかもワカラナイのに。。


とすると、コイツは俺と毒使いとの攻防を観察してたってことか。

毒使いの次は覗き趣味のある変態野郎の登場か、覗きが趣味とは女に嫌われるぜ。


「しかもだ、驚いたことに瞬時に熊をも殺せる毒を喰らっても平気の平左だ。

 いったいどういう身体の構造をしているのか、ぜひ見てみたい」

「いや、見せてくれ、オマエの身体の隅々まで」


「おいおいその言い方。勘弁しろよ身体の隅々とか。ドスケベなやつだな。

 こう見えてまだ処女なんだぜ。それにアンタは俺の        

 好みのタイプじゃないし。ざーんねん♪ がっかりさせて悪ィけど出直してきな」


「俺?男みたいな口調だな。オマエ水商売には向いてないな。が、益々興味が湧いた」


「しつけーな。おとといきやがれ!」

  








 

















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る