第2話 囚われた男
ここは東南アジア地方にあるカンダ国。その国のロコ州ロコ市の州刑務所だ。
滞在中恋愛関係に至った女性との結婚のため日本へ一時帰国する筈だった。
帰国のため空港へ向かう途中、警察の職務質問に遭い問答無用で現行犯逮捕され、
この国の即決裁判である初公判において問答無用で死刑確定という理不尽な目にあっている。
あの時点で逆らえば公務執行妨害で射殺されていただろう。
この日未明に起きた強盗殺人容疑者の東洋人を緊急手配中とのこよで、そこにまんまと引っかかったのが間抜けな俺だった。
当然冤罪だし調べりゃわかるだろとタカを括るも公判中に検察側が俺が犯人だという目撃者を連れてきた。いるハズのない目撃者を。
俺はガンダ国の言葉は堪能なので後で自己弁護すりゃいいだろうと考えていたのだが甘かった。
裁判当日、やる気の無い国選弁護士、ジュースを飲みながらお菓子を美味しそうに頬張る裁判官、覇気はあるが適当な検察官に囲まれ、
東洋人は皆同じような顔をしているしコイツでいいだろうというクソ手抜き裁判で死刑が確定した。
国が変われば常識も変わるが俺に言わせりゃ出来レースのクソ裁判だ。
逮捕起訴した手前もう面倒臭いから犯人コイツでいいや、異国の独身野郎一人くらい死刑にしても問題ないし、じゃ死刑でって、クソヤローだぜ、どいつもこいつも!
自分以外の心配事といえばひとつしかない。
あいつどうしてるかな・・・妻になる予定の女性は帰国後の連絡を待っているだろう。しかし逮捕後も連絡はしていない。
この国は信用できないし俺が逮捕されたことで関係の無い彼女にまで腐敗警察の捜査が及ぶのを避けたいが為だ。
心配だが今は自分のことで手いっぱいの状況だ。すまないと思う。
暫くするとカンダ州刑務所に入所するのに病理検査のためと刑務所内診療室へと連行された。
診察室には中年の女医と博士と呼ばれていた老人と銃を下げた警護役兼助手の看守が2名いて逃げたくても逃げ出せない。
徐に女医が棚から取り出したもの、俺のバッグだ。バッグごと自分の荷物を返されたが喜びも束の間、中身は着替えだけだった。スマホもキャッシュカードも盗られている。
一時帰国時用にと100万円持参した金も手元には10万円しか無い。
残りの金は腐敗警官か刑務職員に抜かれたのだろう。
哀れと思ったのかそれでも10万円残っただけマシか。
老博士がこのままじゃ使えないので後ほど換金してくれるとのことだが、当たり前だろと言いたいぜ。
検査のためだから、という女医に採血された後、近年流行病の「コロリ」という世界的感染病ワクチンだという怪しげな液体を強制的に注射されたのだが、急に目眩がして意識を失った俺はその場で気絶してしまったらしい。
その後かったるい身体を起すとそこはもう刑務所内の雑居房だった。
更正を目的とせず犯罪者を閉じ込めて置くだけの刑務所なので収監施設内の行動は基本自由だ。
死刑囚ばかりがいる檻の中は金が物を言う。先に金だ。ここでは金が命より重い。
カーテンとベニヤで間仕切りされた一畳ほどの部屋と扇風機に1日に2度の飯も現金払い。金、金、金、地獄な沙汰も金次第ってやつだ。
人数に満たないトイレを個人で使うにも金がいる。
つまりこの房のギャングボスにそれらの使用料を払う仕組みだ。仕方ないな、長いものには巻かれろだ。
が、俺のバッグがない!バッグに入れた10万円もない!気絶してる間に囚人共に抜盗まれたのか?!ヤバい、、顔から血の気が引いていく。着替えより10万円が、、
俺が騒ぎ立てていると、老博士が預かっていたバッグと共にガンダ国紙幣に換金された10万円が戻ってきたときは嬉しさで転げ回りそうだった。
碌なメシも食ってないのだろう、囚人らはどいつもこいつも骨皮筋衞門だ。だからじゃないが囚人と俺を取り持つため細やかな歓迎会を開いた。
同房の囚人らには喜ばれたのだが金を持ってると思われたのか噂を聞いた他房のチンピラ共に金を貸せと因縁つけられてしまった。
ここじゃ金貸しては金をくれと同義語だ。そんな余裕は無いので断るとチンピラ3人組は睨みつけてきた。理不尽だが自分が蒔いたタネだと反省する。
チンピラ3人組の名も知らないがそれも困るので名前を付けてやろう。お前らは今からブータフータウータだ、名付けのお礼は要らないぜ。
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