エピローグ

 ハーベスト村に戻って来たソイル一行。


 帰りはメタルゴーレムで飛んで帰って来たのであっという間で、メタルゴーレムに乗ったことのないブランは驚きまくりだった。


「このゴーレム、こんなに速いのかよ」


「ゴレ! ゴレ!」


 ブランに褒められたゴーレムはご機嫌である。


 ブランはソイルとセモリナさんの活躍を労う。


「ソイル、セモリナ、ゴーレムの長旅で疲れたろう。茶をしながら町で買った美味い菓子でも食っておやつにするからダイニングに来い」


「ゴーレムは速かったから別に疲れてはないけど?」


 普段は言わないようなことをいうブランさんに不思議がるセモリナさん。


 ダイニングに行くと既にブランさんは妻のフラワーさんとケーキを食べながらお茶を始めていた。


「お疲れ。まあ、座れや」


 ソイルとセモリナさんが席に着くとブランは書類を広げる。


 多分、騎士になる条件を書いてある書類と思う。


「ソイル、お前は騎士になる条件を覚えているか?」


「領主に任命されることですけど、ブランさんが領主になるには3つの条件が必要でしたよね。たしか、住民を1000人にすることと、地場産業が必要でした。あと一つは……」


「親領主の承認が必要なのよ」とセモリナさん。


 ブランさんは国王からの命令書を取り出す。


「なんだけどよ、俺が国王に直談判して全てをすっ飛ばして俺が領主になってこの村もハーベスト領になっちまった。その代わりに一年ほど国王専属の冒険者として子守をする羽目になっちまったがな」


 やけっぱちな感じで大笑いするブランさん。


 セモリナさんも笑いながら何かに気が付いたみたいだ。


「ということは?」


 セモリナさんが目を輝かせる。


「ソイルくんを騎士に任命できるのね」


「そうだ、ソイルは騎士になる気はあるのか?」


「ぜひ!」


「そうか。わかった、頼むぞ」


「はい!」


 ソイルは力強く答える。


「新春祭でお前を騎士に任命する」


「ありがとうございます」


「まあ、元々ハーベスト村にいた連中は全員騎士に任命するつもりだけどな。がははは!」


「お父さん、そんなことをしていいの? 村人全員を騎士にするなんて無茶苦茶よ」


「そうか? グレートボアを一人で狩れる奴なんて他の街の騎士でもそうそういないと思うぞ」


 たしかにな。


 ソイルは同意せざるを得ない。


「それとお前たちは結婚するんだろ?」


 いきなりの結婚話にセモリナさんは顔を赤くして俯いてしまった。


「ソイルくんが良ければ……」


 ソイルは隣の席に座るセモリナさんの手を取りプロポーズをする。


「セモリナさん、結婚してください!」


「はい!」


 ソイルの力強いプロポーズにセモリナさんは抱きついて答えた。


 ブランはそれに満足気だ。


「じゃあ、春にはお前たちの結婚式を挙げるぞ。ソイル、セモリナをよろしくな」


「ソイルくん、よろしくね」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 ソイルはこの国の仕来しきたり通り新年を迎えた後の『来春祭』にセモリナさんと結婚することになった。


「あとはケイトをどうするかだな」


「ケイトかー。あの子もソイルくんと結婚したがってて困ってるのよ」


 ソイルもケイトさんには猛烈にアタックされて困ることも多かった。


「ソイルはこの村をどうする気だ?」


 軍事力を上げて強国にしたいとかだろうか?


 そんなことはせずに、魔獣や野盗の外敵や、欲の張った奴らから住民みんなが安心して暮らせる幸せな領地にしたい。


「どうするとはどういうことですか? 僕はこの村を強国とかにはせずに、皆が幸せに暮らせる領地にしたいです」


「そう言うことじゃねーよ」


 ブランさんは質問の意味が通らなかったので少し不機嫌だ。


「もう俺は領主になれたのでお前を騎士に任命出来るようになったんでこれ以上この村の開発はする理由は無くなったんだが、それでもソイルはこの村の開発を続ける気があるのか?」


 あっ、そうなのか。


 ブランさんが領主となった今はもうこの村を開発する必要は無くなったのか。


「そうか、そうなるのよね」


 セモリナさんもブランさんの言いたいことがわかったようだ。


 でも、僕は、この村を……悪者の思うようにされずに人々が安心して住める領地にしたい。


「ブランさん、僕はこの村の開発を続けたいです」


「ほう」


「ウッドストックの件も、リヒト村の件もそうなんですがこの世には悪人の付け入る隙が多過ぎます。僕は人々が安心して住める街を作りたいです!」


「そうか。大変だと思うが頑張れ」


「はい、頑張ります」


「お前がこの村の開発を続ける気があるならケイトとも結婚しろ」


 えっ?


「なんでそうなるのよ? ソイルくんはわたしと結婚するの!」


 僕よりも早く声が出たのはセモリナさんだった。


「ケイトはこの村の開発にはなくてならない人材だ。ゴーレムだってケイトがいなければ作れなかったんだろ? お前たちの結婚が理由で失望されて村を去るなんてことになって彼女を失うわけにはいかない」


 ケイトさんの助言が無かったらここまで村を発展させることは出来なかったはずで最大の功労者であることは間違いない。


「確かにそうだけど……。ソイルくんがわたしだけのものじゃなくなっちゃうのは嫌よ」


「お前たちは知らないかと思うが、戦争があったり野盗が跋扈ばっこする庶民の世界では男が殺されることが多く、女に比べて男が圧倒的に少なくて配偶者を見つけらず一生を独り身で終える女も多いんだ。大抵は成人式を迎えると同時に結婚することになるんだが、成人式をとっくに過ぎたケイトはこのままだと一生独り身のままだろうな。領主の息子となるソイルなら貴族扱いで嫁は何人でもめとれるからケイトとも結婚してくれないか? セモリナもソイルとケイトの結婚を認めてくれ」


 理由を聞いてセモリナさんは大きくためいきを吐く。


「わかったわよ……ソイルくんの一番はわたしでケイトは二番目だからね」


「もちろんです」


 ソイルは力強くセモリナの肩を抱きしめるとセモリナさんは満足したようだ。


「そうか。じゃあ、ケイトを呼んで来い」


 ブランさんのお嫁さんのフラワーさんに連れて来られたケイトさん。


 ゴーレム召喚の魔法陣を描くのが忙しくてソイルたちが帰って来たのに気が付いてなかったみたい。


「ソイルくん、おかえりー。疲れたでしょ? まずはお風呂にする? それともワ・タ・シ?」


「どっちもしないわよ!」


 セモリナさんの両親の揃っている前でもブレないケイトさんである。 


 軽い挨拶?の終わったところで真顔になるケイトさん。


「ウッドストックの事件は解決したの?」


「無事解決しました」


「じゃあ、なんでわたしが呼ばれたんだろ?」


 ケイトさんはなんでブランさんに呼ばれたのかよくわかってない。


「ソイルくんとセモリナの婚約が破局したから、ソイルくんの面倒を見ろとのお達し?」


「ソイルくんとは別れてないから!」


 セモリナさんはソイルを抱きしめてケイトに渡す気はない。


 延々とこの茶番劇が続きそうなのでブランが本題を切り出した。


「ケイト、この村の開発に貢献してくれた礼に褒美を出したいんだがなにか欲しい物はあるか?」


「まだ街が出来上がってないのにご褒美ですか?」


「俺が領主になったことでその礼だ」


 ケイトさんは褒美にソイルとの結婚を言い出すかと思ったんだけど、考え込んでる。


「いきなりご褒美を貰えると言われても……今だと欲しいのは『建築魔法大全』か『ゴーレム大全』ぐらいかなー?」


「そんなものでいいいの? ソイルくんとの結婚はいいの?」


「ソイルくんに何度アタックしても全然反応なくて脈なしで諦めたわよ。それに親友の彼氏を奪っても後味悪いしね」


「その親友がソイルくんと結婚していいって言ってるのよ!」


「ソイルくん、セモリナの暴力に耐えかねて破局したの?」


「ちがうわよ! 第二夫人なら認めてあげるって言ってるの」


「えっ? いいの?」


「いいわよ」


「じゃあ、ソイルくん結婚して!」


「ぜひお願いします」


「じゃあ、さっそく子作りを!」


「ダ、ダメー! ソイルくんの初めてはわたしのものだから! それに結婚式の前にそう言うことしたらダメだから!」


「ちぇっ!」


 ということでソイルはセモリナさんとケイトさんというお嫁さんを貰えることになった。


 都市開発はまだまだこれから。


 でも、成功することはわっている。


 大好きなお嫁さんと、頼れる仲間がいるからね。

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