運送ギルドにて
ゴーレム輸送作戦決行当日、夜明け前。
本日の明け方にブランたちがなにか画策しているのとの情報を得て、ハーベスタへと調査に向かった黒ずくめの男がウッドストックの運送ギルドに戻って来た。
男のコードネームはブラック。
ブラックは往復20時間以上、悪路を自らの足で疾走しウッドストックへ戻って来たのである。
往路は馬に乗って出発したものの道中で巨大なムカデに襲われ馬は巨大な
この長旅も諜報部員として長年働いて来た経験と『夜目』や『疾走』といったスキルとともに運送ギルドから支給された大量の体力回復薬が無ければ完遂することは不可能だったろう。
ブラックを待っていたのは運送ギルド長のワーレン・トラス
「ただいま戻りました」
「ご苦労。で、ハーベスタの調査の結果はどうであった?」
「なにやら、ゴーレムを使った輸送部隊を計画しているようです」
「ゴーレムだとあの悪路は走破出来ないはずなのだが?」
「どうやら、新型ゴーレムを設計し悪路の問題は解決したようです」
「なんだと?」
驚くワーレン・トラスにブラックはゴーレムを模写したスケッチを取り出して見せる。
ワーレン・トラスが身を乗り出してスケッチを見るとそこには大きく長い胴体に無数の足の生えた禍々しいゴーレムが描かれていた。
スケールの対比として書かれた人間が
「なんだ、この巨大で気持ち悪いゴーレムは?」
「ムカデ型のゴーレムのようです」
「ムカデ型のゴーレムだと? 戦闘力はどうなっている?」
「戦闘力は皆無のようですが、その巨体は十分に殺傷力があり走行に巻き込まれれば魔獣でさえひき殺されるようです」
ワーレン・トラスは椅子の背もたれに身を投げ出す。
「ハーベスタ村の村長はとんでもない物を作り上げたものだ。これでは大金を投じて行ったウッドストックの経済封鎖が意味を為さなくなるではないか」
有るのは魔の森だけでそれ以外はなにもない村だからと放置していたのが完全に裏目に出たとワーレン・トラスは大きなため息を吐く。
ブラックの上長であり、元密偵でワーレントラスの腹心のチャーリーはスケッチを凝視する。
チャーリーはワーレントラスの背後で汚い仕事を長年して来た。
ワーレン・トラス卿の今の地位もチャーリーが作り上げたようなものだ。
今回はウッドストック町長のジョンの監視をしていて、部下のブラックにハーベスタ村の調査を任せたのが完全に裏目に出た。
こんなゴーレムを作っているとの情報が有れば自分で調査に向かって精度の高い調査をし、隙があらば破壊活動までしていたのにと後悔する。
「ずいぶんと不鮮明なスケッチだが、このムカデゴーレムの足の部分はどのような構造になっていたんだ?」
「足の部分ですか? ムカデと同じ足としか見えなかったですね」
ブラックはそう言い切るが、その割には足が太くムカデの足と同じ構造には見えない。
「密偵ならターゲットを正確に描写しないとダメだろ」
「すいません、魔獣の徘徊する平原で模写したものでこれでも限界ギリギリまで近づいて模写したんです」
俺ならばこんなミスは犯さないと、チャーリーは自分の
「魔光機での撮影はしてないのか?」
「一応してきました」
魔光機とは使用者の視界を切り取りそのまま撮影保存する魔道具だ。
当然近づかなければ鮮明な撮影は出来ない。
あのスケッチの出来からするとあまり近づいていないのは間違いなく撮影は失敗したと思ったが、魔光機を覗き込むと奇跡的に構造がはっきりと見えた。
多数のゴーレムを並べて巨大な箱を担がせてるのか。
これなら多少の街道の穴は克服克服出来るし、その重量で魔獣も轢きつぶせる。
だが所詮ゴーレムの集合体。
対策はいくらでも取れる。
「でかしたぞ!」
「ありがとうございます。偵察だけは自信が有るんです」
チャリーはムカデゴーレムの構造的弱点を見抜き、すぐさま対策をするのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます