四人衆

 ブランはかなり怒っていた。


「ブレイブ、てめーはソイルになにをしている!」


 ブレイブと呼ばれた男はブランにいきなり殴られてかなり不服なようだ。


「なにって、村に入り込んだ不審者を捕まえようとしてるんだよ」


「不審者? こいつがか?」


 ブランはソイルを指さし、ブレイブに確認する。


「そうだ。村の周りに壁を作って入れなくした上に、セモリナを人質に取った卑怯な野郎だ」


「バカもん! こいつはロックの息子でソイルと言ってな、この村を発展させるために俺に協力してくれている新しい住民だ」


「新しい住民だと?」


 それを聞いて納得のいかないブレイブ。


 そんなことは聞いてないと態度を荒げる。


「新しい住民なら村民を集めて紹介するのが筋だろうが!」


「お前の言うことも一理ある」


 ブランは戦闘態勢を解いて腕組みをする。


「それなんだがよ、今まで村にやって来た住民で居ついた奴はいるか? みんな一週間も経たずにケツを割って逃げ帰ったろ? だから10日を過ぎたぐらいで歓迎会を兼ねて紹介しようと思っていたんだ」


「たしかに……そう言われるとそうだな……」


 ブレイブはブランがソイルを紹介しなかった理由を納得したようだった。


 遠巻きに見ていた仲間を呼び寄せてソイルに頭を下げる。


「すまねー、新しい村民だとは聞いてなかったもんで……。俺は若手四人衆のリーダー格のブレイブだ。そしてこっちが……」


 ブレイブが紹介しようとするのを遮る長身の男。


「自分で自己紹介するわ。俺はケビン槍使いだ、よろしく」


 次の男はガッシリとした体格で寡黙かもくだった。


「ジャズ、槌使い」


 最後に紅一点のアイドル的な女の子だ。


 多分年齢はセモリナさんと同い年。


「わたしはローズ、主にボウガンを使ってるわ。よろしくね」


 ソイルも続けて自己紹介をする。


「この村に土魔法の修行に来た土魔法使いのソイルです。よろしく」


「建築ギルド所属の魔法建築士のケイトよ、よろしく」


 一同はソイルの自己紹介に腰を抜かすほど驚いた。


「あんなに剣を扱えるのに土魔法使いだと?」


「信じられねー!」


「…………」


「土魔法なんて全然使ってなかったじゃない!」


 するとブランが豪快に笑い出す。


「こいつは根性だけはあってよ、俺が少しばかり剣の特訓をしてやったらあっという間にマスタリースキルまで取りやがって……剣聖の母親の血って恐ろしいもんだな」


「剣聖の息子かよ。どおりで俺には敵わないぐらいあんなに強かったのか」


 ブランはブレイブたちに向けてにたりと笑う。


「最近特訓してなかったから、お前らもマスタリー取るまで特訓な」


「じょ、冗談だろ?」


 あまりに突然なブランの特訓開催に固まる四人衆。


 特訓後無事でいられるかは彼ら次第だ。


 *


 結局村の東西南北の4か所に出入り口を設置し、それ以外の防御壁の穴は修繕された。


「この外壁の大きさで4か所も出入り口があると、穴だらけに見えますね。これで防壁の役に立つんですか?」


 ソイルの質問にケイトさんは頷く。


「いい所に気が付いたわね。最初の防御壁はこれでいいのよ」


「最初?」


「村民を1000人にするんでしょ? それならこの小さな囲いの中にはそんなに入らないわよ」


 確かに言われるとそうだ。


 直径300メトルの囲いの中に1000人も住めるわけがない。


 あくまでも仮の囲いだ。


 と言うことは……。


「さらに大きな防御壁を作るんですよね?」


「そう、そのつもり。でもね問題もあるのよ」


 問題とはなんだろう?


 僕の魔力が続かない事だろうか?


 ソイルは考え込む。


「ソイルくんの魔力が原因じゃないわよ。あれだけあれば十分だもん」


 ケイトさんは村の外の砦を指さす。


「更なる防御壁を作るならしっかりと開拓して安全を確保してから作らないとね。例えばゴブリンの住処になっている砦を制圧しないと意味ないし、これから移住してくる住民の為に食料を供給する畑も作らないといけないし、人数分の井戸も掘らないとね」


 なるほど。


 村の規模を大きくするのならばそれに見合った生活基盤を作らないといけないし、安全を確保しないといけない。


 そんなとこまではソイルでは気が回らなかったのでケイトさんを指導者に引き入れて本当に良かったと感謝する。


「まあ、わたしはセモリナに拉致されてやって来たんだけどね。開拓が成功したら後でしっかりと報酬を貰うから覚悟しておいてよ」


 まさかそのお礼がソイルの第二夫人としての地位だとはソイルは思いもしなかった。

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