セット魔法
翌朝、ケイトさんの監督の元、セット魔法の練習を始めるソイル。
魔法で出したレンガを積み上げ並べ始める。
「前はレンガをセメントで固めましたけど、魔法で固めるにはどうすればいいんですか?」
「セメント代わりに使うのはモルタルの魔法。魔法ならセメントの魔法でもいいんだけどセメントだと強度が少し弱いからね。ちなみにモルタルはセメントにつなぎの砂を混ぜた物よ」
つなぎの砂の代わりに砂利を使ったコンクリートという魔法もあるらしいけど、強度が強い反面なかに入ってるつなぎの砂利が粒が大きくてレンガ積みの邪魔になるから今回は使わないらしい。
やることはセモリナさんと作った壁の時と変わらない。
レンガを並べて接着剤代わりにモルタルの魔法を使うだけ。
今度は幅1.5メトル高さ1.5メトルの壁を作った。
「出来ましたね。これで倒れない壁の出来上がりですね」
ソイルが寄り掛かろうとしたらケイトが止めた。
「寄り掛かったら崩れるわよ」
「なっ!」
じゃあ、なんの為にこんな壁を作ったんだ?
「これはこれから作る防御壁のパーツよ。まずはこれをセット魔法で登録するわ」
そういえばセット魔法とか言ってたな。
壁を作るのに必死になってて忘れてた。
ケイトさんは次の作業の説明を始める。
「壁をよく見つめて、作った手順を思い起こしながら『登録 セット魔法「基本壁」』と唱えてみて」
「登録 セット魔法『基本壁』!」
するとレンガの壁が薄ぼんやり光ったもののなにも起こらなかった。
ソイルは魔法が失敗したと肩を落とすがケイトさんはままんざらじゃないといった顔をしている。
「よし! ここまで順調ね」
「順調なんですか?」
壁が薄ぼんやり光っただけなのに順調なの?
「うん、順調順調! 今度は壁を呼び出したい場所を意識しながら『セット魔法「基本壁」』と唱えてみて」
「セット魔法『基本壁』!」
まじか?
するとさっき作った壁の隣に新しい壁が現れた。
じっと黙ってみていたセモリナさんが感心して声を上げていた。
「ソイルくん、すごいわ! 作るのにあんなに時間が掛かった壁が一瞬で出せたわ」
大喜びのセモリナさんと、結果に満足気なケイトさん。
「まあ、これを繰り返して村の防御壁を作ってもいいけど、これだからね」
そういってケイトさんが壁を手で押すと壁が倒れて崩れた。
*
ケイトさんが防御壁の建設予定地を見たいということで、やって来たソイルとセモリナさん。
ケイトさんはフムフムと頷いている。
「地盤はまあまあね。これなら防御壁が間違いなく作れるわよ」
「ありがとうございます」
ソイルはほっと胸を撫でおろすがセモリナさんは納得しない。
「でもケイト、ここに壁を立てたけど寄り掛かったらさっきみたいに一瞬で崩れちゃったわよ」
崩れてバラバラになったレンガの残骸を指さす。
ケイトさんは「それね」と言った感じでそこらへんに落ちてた背丈ほどの木の枝を拾って地面に立てる。
「この棒を指一本で倒せる?」
「簡単よ」
セモリナさんが指で枝を押すと枝は簡単に倒れた。
「じゃあ今度はどう?」
ケイトさんは棒を半分ほど地面に埋めるとセモリナさんでも指一本では倒すのに苦労している。
最後は力任せに枝を折る勢いで力を込めていた。
「結構力が必要だったでしょ?」
「そうね」
「壁は地上の部分しか見えてないけど、倒れないように支柱を地面の下にしっかりと埋めてるのよ」
「そうだったんだ」
「見える部分しか見てない初心者あるあるね」
セモリナさんはいい事を思いついたような表情をする。
「じゃあ、支柱を作ればいいのね」
「いや、防御壁ならダメよ」
「なんで?」
「ボアならそれでもいいけど、ゴブリンなら地面にトンネルを掘って簡単に壁の下を潜り抜けて超えてきちゃうわ」
「そっか」
「と言うことで……わたしが考えている防御壁はこう!」
スケッチブックに防御壁のイメージ図をデッサンするケイトさん。
書かれたのは高さ3メトル、地下3メトル、幅1.5メトルの壁。
壁は垂直に3メトルほど切り立ち、丁度高さの半分3メトル分が地面に埋まっていた。
「これなら王都レベルの防御力を持った防御壁になるわ」
「いや、そんなすごい防御力の防御壁なんて要らないし! 第一材料費はどうするのよ? レンガだけでもとんでもない数になるわ!」
「相手は魔獣だから防御力は高過ぎても困ることはない。それに材料費は魔法で出すから無料だったんじゃないの?」
「そ、そうだったわね」
ケイトさんは魔道具らしきものをカバンから取り出す。
取り出したのは魔力測定具とのことだ。
「まあ、これはあくまでも理想論よ。これだけの物を作るには結構な魔力が必要だから、ソイルくんの魔力を測定してから現実的な案に落とし込むわ。せめて魔力量3000ぐらいあればいいんだけど、そんな人いないわよね」
笑いながらソイルの魔力量を測定すると魔道具の測定針が振り切れ測定値オーバーのランプが赤く光る。
「どういうことなの?」
セモリナさんが慌てる。
もちろんケイトさんもだ。
「最大測定量の3万を超えた……ありえない」
「凄いわね……」
実はソイルの最大魔力量は3万どころじゃなく3000万を超えていた。
流石500年分の魔法の訓練をしただけはある。
しかもこの防御壁の建設で更なる向上を見せて1000倍の魔力量30億を超えるのを知るのは後の話だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます