第30話 いぜ、あの場所へ

 謎の女子生徒に連れてこられた場所は、体育館裏。


 また、ここにくるなんて、てか、なんで俺は、この人ににらみつけられているんだ。


「あ、あの~なんでこんな場所に……」


「波人!今日、渚とタイマン張るらしいじゃねぇか!!」


「タイマン!?」


 タイマンって何の話だ?あっまさか、渚と向かい合って話し合うことにを言っているのか?


「違うのか!?」


 なぜか、驚くような表情を見せた。


「あ、いや~あっているようで?あっていないような?」


「どっちだぁ!!」


「あってます!!」


 なんだろう、この会話。


「あの~~」


「なんだ!!」


「お名前をうかがっても?」


「……そういえば、自己紹介がまだだったな!!私は神月梓かんづきあずさだ!!よろしく!!波人!!」


「あ、はい……で神月さん」


「梓と呼び捨てで結構!!」


「では梓、なんで俺は、こんなところに連れてこられたのでしょうか……」


「それはもちろん、紗枝に頼まれたからだ!!」


「紗枝に?」


「そうだ!!あと数分したら、紗枝もここにくる!!それまでまっていろ!!」


「はぁ……」


 状況が理解できない。今日の19時が勝負という大事な日になんでこんなことをする?


 頭が追い付かない、紗枝の考えが理解できない。


 不安と心配が心を覆い、ドキドキハラハラする変な時間。


「お待たせ、波人くんに梓ちゃん」


「おせぇぞ、紗枝!!」


「ごめん、ごめんって梓ちゃん。お礼に今度、アイスおごるから……」


「なら許す!!じゃあ、私の役目はここまでだ。また会おうぜ!波人!!」


「あ、はい……」


 そのまま、笑いながら、去っていた梓。

 

 不思議な人だった。性格はとても男らしい差を感じながらも、なんだか、友達思いな雰囲気を醸し出している。

 

 頼りになる先輩的な感じかな?いや、周りを歩くする太陽のような人?まぁ、いいか。


「それで、紗枝。なんで俺を体育館裏になんかに呼び出したんだよ……」


 すると、「ふん!」と得意げ満々のような、やる気満ち溢れているようなそんな表情を見せる。


「最後の打ち合わせだよ。渚ちゃんにはもうすでに、19時に例の場所に来るように約束を取り付けているからね」


「お~凄いな。どうやったんだ?」


「それは、秘密だよ」


「へぇ~~」


「まぁ、そんなことはどうでもいいの。どう?調子は?緊張している?」


「そうだな。調子は絶好調だし、緊張もしているのかな?なんだか、一周回って、してないかも」


「ダメだよ!!」


「はい?」


 突然、大きな声で、だめだしされる俺。


 どういうことだ?


「口調!!言ったでしょう?素を出しなさいって……」


「あっ……」


 そういえば、そんなことを言われてたな。


 完全に忘れていた俺は、はっ!!と驚いた。


「もう~~やっぱり、そんなことだろうと思ったよ」


「で、でも……別に素を出さなくてもいいと思うんだけど……」


「波人くん?」


「はい、すいません!!」


 紗枝が怖い。顔がすごく怖い!!


 冷たい目線でこちらをにらみつける紗枝がとても恐ろしいとか感じる俺。


「よろしい、じゃあ、最後の確認をするよ」


 作戦は、至って単純、19時にあの場所に行くだけ。


「でも、できればすこし早めにいってね」


「なんで?」


「女の子を待たせるなんて、男の子としてどうなわけ?」


「た、たしかに……」


「じゃあ、後は波人くん次第だね……」


「そうなるな」


「どう?今度こそ、緊張してきた?」


「そうだな……少しは?」


 緊張はしてない。むしろ、落ち着ている。不思議な感覚だ。


「あっもうすぐ、時間だね」


「早いな、じゃあ、教室に戻るか……」


 俺は、一足先に前を歩く。


 すると。


 突然、袖を引っ張られ、後ろに体を持っていかれる。


「えっ?」


 一瞬、視界に紗枝が。


「うっ……」


 気がつけば、ほっぺに唇が重なる。


「へぇ?」


「これで私は満足!じゃあ、頑張ってね!!」


 そのまま走り去っていった。


「……なんなんだよ」


 なぜキスされた?まさか、からかわれた?いや、でも紗枝がそんなことをするだろうか?


 意味わからん。


「最後の最後に、心だけ揺さぶりやがって、本当に、女の子ってわからないな……」


 授業が終わり、俺は、一足先に帰ることにした。


「あれ?今日はすぐに帰るのか?」


「ああ、ちょっと用事があって、ごめんね正志……」


「いいよいいよ、じゃあな!!」


「うん」


 そして、俺は、決戦場へ向かう。

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