第29話 紗枝との作戦会議②

 紗枝は気持ちを切り替えたのか、作戦について、語り出した。


「波人くんはまず、渚ちゃんと二人っきりになる場面を他の人には見られたくないんだよね?」


「そうだけど…」


「なら、まずは時間帯を決めないとね」


「時間帯かぁ〜〜」


「やっぱり、見られたくないなら、夕方まではやめた方がいいよね。そうだな〜〜夜の18時以降がベストかも」


「確かに、紗枝の言う通りかも、でも18時以降に呼び出すって渚に怪しまれないか?」


 俺は率直な疑問を口に出した。すると紗枝はニヤリと笑いながら、ドヤ顔で紗枝自身に親指を立てる。


「どういう合図?」


「私がいるでしょ、私が!!」


「大丈夫なのか?」


「安心して、責任持って波人くんが指定する場所に渚を連れていくから」


 自信満々な表情で言うが、正直心配だ。


 だって。


 顔が、表情が、笑ってないもん。絶対何か企んでるよ。


「まぁ、期待はしないでおくよ」


「なんで!?」


「まぁ、そこら辺は自分で理由を考えてもらって…」


「なんか、投げやり!?」


 そんなコントのようなことをしていると、紗枝が真剣な眼差しを向けてくる。


「波人くん、私は真剣なんだよ」


「だったら、その表情ぐらい隠した方がいいぞ」


「え!?どんな表情!?」


 紗枝は自前の鏡で自身の表情を確認をしだした。


「それで、ちゃんとやってくれるの?」


「そ、それはもちろんだよ!!」


 表情を見る限り、しっかりとやってくれそうだ。


 紗枝との協力で場を作ることはできそうだ。あとは俺次第、けど、正直自身はない。


「あ、そうだ。あと波人くんにはやってもらいたいことがあるんだよね」


「やってもらいたいこと?」


「そう!!それは……イメチェン!!」


「………はぁ?」


 俺は心の底から呆れた声が漏れた。


「まずは、渚の心をぎゅっと掴まないとね!!」


「ちょっと待って!なぜそんな話になるんだ?」


「だって、波人くん。それ素じゃないでしょ?」


「………あ、え、うん?」


 俺は反応に困った。まず素とは?と頭に流れた。


「波人くんって、高校生でだいぶ見た目とか口調とか、意図的に変えてたよね?」


 顔を近づけながら、問いかけてくる紗枝はまるで見透かしているようだった。


 そして顔が近い。


「それはまぁ〜〜か、変えてるけど…」


「だよね。だって今、一人称が俺になっているし、口調も少し荒くなってるし、きっっと波人くんはそれが素なんだよ。だから、渚と二人で対面して話すときはその素で行くこと」


「あ、ああ、わかったから。離れてくれ、近い…」


「ご、ごめん…」


 朱璃は頬を染めがなら、一歩二歩と後ろに下がる。


 恥ずかしがるなら、最初っから、顔を近づけなければいいのに。と思うが、きっと無意識なんだろうな。


「と、とにかく、渚ちゃんと話すときは素で行くように、あとは波人くん次第だよ」


「はぁ〜〜わかったよ。頼んだの俺だし…」


「素直でよろしい。あとはいつ、何時に渚ちゃんを呼び出すかだね。波人くん、どうする?」


「それはもうすでに決めてる」


「へぇ〜じゃあ、バッチリだね」


「じゃあ、よろしく頼むぞ、紗枝」


「うん!!任せて、波人くん!!」


 お互いに拳を合わせ、俺たちは解散した。


 勝負は明日。決めたら即実行、じゃないと、自分が弱気なってしまうから。


 明日の19時に渚と腹を割って話す。そして俺自身を変えてみせる。



次の日。


 いつもの通りの登校道、正志と拓也と一緒に登校した。最近ではこれが普通だ。


 そしてお昼休み。


 俺は正志と向かい合ってご飯を食べていると。


「波人!!ちょっと付き合えや!!!」


「へぇ?」


 突然、教室に入ってきて俺の名前を呼ぶ、関わりのない女子生徒。ふと紗枝の方に目線を映すと。


 紗枝が親指グットで返してきた。


 ついていけと!?


 こうして勝負当時に、俺は見知らぬ女子生徒に連れていかれることになりました。




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