第18話 フラれたら、振ったやつを後悔させるのが一番の仕返しだ!!

ぐつぐつと煮込まれた味噌煮込みうどん。

お互い、ふうふうしながら、うどんをすすった。


「うまっ!!」

「美味しい…」


うどんの、のどごしもさることながらも、味噌の風味が舌を唸らせ、ネギの香りがより、旨味を引き立てている。


「うまい…こんなにうまい味噌煮込みうどんは初めて食べたかも」

「うまぁ〜〜」


渚は落ちそうなほっぺを手で押さえながら、美味しそうに食べている。

緩む顔がまた可愛らしく、見惚れてしまう。


「波人くん、このお店はチェック必須だね」

「あ、ああ…」


あんなに美味しいそうに食べてる……これって結構レアなんじゃないか?

そう思った。


「ふう〜ふう〜ふう〜」


邪魔そうな髪を片手で避けながら、箸でうどんをすする渚。

熱いのか、頬が赤く、汗が顎のラインに沿ってぽたっと落ちる。


え、エロくないか?

味噌煮込みうどんよりも、どうしても渚に目を持ってかれる。

これがいわゆる美少女を食べ方……。


「うん?どうしたの波人くん?」

「あ、なんでもない」


渚に箸が止まっていることに気づかれてしまった。

僕もやっぱり、健全な男子高校生なんだな…と自覚した。


「ふぅ〜ごちそうさま」

「ごちそうさま…」


「ほほ、よく食べたね〜〜」


「美味しかったです」

「こんなに美味しい味噌煮込みうどん初めて食べました」


「若者にそう言われると嬉しいよ……」


おばあちゃんの癖は強かったけど、その時見せた笑顔はとても優しいかった。


「じゃあ、おばあちゃん…また来ますね、ごちそうさまでした」

「バイバイ、おばあちゃん、ごちそうさま」


「ありがとうねぇ〜〜お二人さんも仲良くね」


最後は笑顔で手を振ってくれた。

こんなにいいお店なのに、どうして人気がないのだろうか。

そう思いながら、お店を見上げる。

あ、お店の見た目か……。


「見た目が良ければ、人気出るのにな〜〜」

「だよな〜」


渚も僕と同じ意見らしい。

味もいい、接客もおばあちゃんが優しくて文句ないのに、見た目だけがな〜〜。


「みんなに共有しておこうかな…」


渚がスマホを取り出し、ぽちぽちと画面をタップする。

おそらく、友達に連絡をしているんだと思う。

まぁ〜僕は関係ないし、それに……共有する友達も……。


こうして僕たちは夜ご飯を食べ終え、帰りの駅へ向かった。


僕と渚、二人で横並びで歩く姿はとても不自然だった。

傍は凡人、全てが凡人、顔も頭も運動神経も全てが凡人、そのもう傍は美しい美貌を持ち、頭脳もトップクラス、まさしく完璧という言葉にふさわしい美少女。



「おいおい、あの子、超可愛くない?」

「ああ、あんな美女が世の中にいるんだな」

「あの隣にいるやつ誰だ?」

「まさか、彼氏?」

「嘘でしょう、あんな冴えないやつ」

「そうそう、ありえないぜ」



左右前後から聞こえる声。それは風がなびくように聞こえてくる。


もう8時半を回ってるのに…なんだ、この目線の集まりは……。

しかも、僕に対する悪く口が聞こえた気がするんだが…。


「はぁ〜〜」

「浮かない顔だね…」

「渚は気づいてないのか?」

「う?」


渚はこの目線に気づいていないらしい。

マジかよ!?っと反応したいところだが、正直、そろそろ体力の限界に近い。

早く、家に帰って寝たい……。


「眠そうだね」

「渚は眠くないのか?」

「全然、こうして、一緒に歩いているだけで楽しいからさぁ」

「……楽しいのか?」

「うん、楽しいよ…すごく」


小さな微笑みをこぼす渚。本当に楽しかったことがわかる。


「そうか〜」

「波人くんはどうだった?楽しくなかった?」

「楽しかったよ…」


この殺気のある目線と目立たなければ、もっと楽しかったけど……。

そのことは黙っておこう。


楽しく会話をしながら、駅に向かっている途中……。


「なっ!?なんで!!お前達が!!!」


大きな叫び声が響き渡る。

そこにいたのは、拓也くんだった。

拓也くんは僕たちに気づき、近づいてくる。


「おい、波人!!どうしてお前が渚ちゃんと一緒に…そ、その…い、いるんだよ!!」


僕に詰め寄り、問いかけてくる。

顔が近いんだけど……。


「ただ普通に遊んでただけんだけど…」

「あん?なんだと!!」

「そこまでにしなさい、拓也くん!!」

「なっ!?渚ちゃん…」


眉を八の字によせて、ツンツンな瞳で拓也くんを睨みつける。

あっ…クール渚だ。


「拓也くん、あなたはまだ懲りていないのですね」

「渚ちゃん…ひとつ聞かせてくれ、どうしてコイツなんだ…」

「それを聞いて、拓也くんは納得するの?」


「………」


「子供ね、そんなんだから、怒りを他人にぶつけることしかできないのよ」

「なっ、なんだと!!」


「そうでしょう?実際に拓也くんは波人くんに八つ当たりをしているじゃない?少しは現実を見たらどうなの?そんなメソメソしているなんて男らしくない!!」


「ぐっ…」


心に突き刺さったのか、膝から崩れ落ち、拓也くんは歪んだ顔があらわになる。

なんというか、とある劇を見てるようだ、と隣に眺める僕。



「拓也くんの性格には問題がある、けどそれは決して直せないほどじゃない…たかが一回フラれた程度で八つ当たりなんて、子供よ子供よ、男なら!!フラれたら、見返してやる!!って気持ちを抱いて、見返しなさい!!俺と付き合わなかったことを後悔させてやる!!って感じでね…」



前の毒舌な渚とは違う。渚は優しいから励ましているんだ。

いや、そもそも拓也くんって告白していないよな……。まぁいいか。



「はは…そうか、ああ!!わかったよ!!」



拓也くんは立ち上がる。



「これはリベンジだ!!ぜってぇ後悔させてやんよ!!渚ぁぁ!!」



あっ、が消えた。

覚悟を決めた拓也くんの横顔はさっきまでの幼稚な顔から男らしい顔つきに変わった。



「そのいきよ、拓也くん!!」



なんか、渚もテンション高いし……まぁ〜楽しそうだからいいか。

てか、なんでこんなドラマチックな展開になってるんだろう。

けど、これで拓也くんから敵意の目線がなくなるわけだから、ある意味よかったのかな。



「そ、その波人、急に突っかかって悪かったな」

「あ、うん、全然気にしてないから、大丈夫だよ」

「そうか…」

「うん…」



二人の少し照れた様子を眺める渚。

その空気になぜか危機感を感じる。

なに?この異様な空気は…二人が仲良くなったことはいいことなはずなのに。

あの二人の顔を見ていると、なんだか心がざわめく。



「じゃあ、俺は帰るから」

「ああ、バイバイ」

「また学校でな、波人」



「え、私にはなし?あんなに私のこと固執してたのに?」


バイバイと帰りの言葉を言われなかったことがショックだったのか、落ち込む渚。



「まぁまぁ、……僕たちも帰ろう」

「そうだね…」



そして帰りの駅に到着した。



「波人くんは地下鉄だったけ?」

「うん、そうだよ」

「……じゃあ、ここでお別れかな」

「また、学校で…」

「うん、学校で…波人くん」



そしてお互い、後ろを振り向いて、歩き出す。

今日という日は楽しい1日であり、僕と渚との距離が縮んだ1日でもあった。

本当に色々あった……。



「波人〜〜〜〜〜〜!!!!」



後ろから僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。

咄嗟に振り向くと、にっこりとした笑顔で渚が大きく手を振っていた。


「また、一緒に遊ぼうね!!」


「………」


僕はコクリと頷いて、再び後ろを向いて、一歩を踏み出す。


「あっ…阿澄さんのこと、聞くの忘れてた……まぁいいか、そんな大事なことでもないし……」


電車内でうとうとしていると、スマホから一件の通知がくる。

ポケットに入れてあるスマホを取り出し確認すると……。


「………え?」


その通知には………。



 阿澄:明日、会えませんか?


ーーーーーーーーーー


これにて主人公の波人と渚のデート編は終わりです。

さて、そろそろ、踏み込むとしますかな。


少しでも『面白い』『続きが気になる』と思ったら『☆☆☆』評価お願いします。


また次回をお楽しみに!!














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