第17話 渚の本性に少し触れてしまった波人
阿澄さんにからかわれた僕たちは少し気まずい空気が流れる。
渚に目を合わせようとするも、全く合わせてくれない。
多分、かなり恥ずかしかったんだと思う。
まぁ〜あのからかわれ方は僕でも流石に恥ずかしいし、目も合わせずらい。
「ご、ごめんね、波人くん…その迷惑かけちゃって…」
「全然、そんなことないよ」
目線を斜め下へ落ちる。渚はなぜか落ち込んでいるようだった。
恥ずかしさもあるのか、頬も少し赤いが、問題なのが……。
この空気のままは、流石に気まずい。
「そっ!そうだ!!渚…」
「な、なに……?」
「あ、阿澄さん?について少し教えてよ」
「え〜〜〜?」
なぜか、阿澄さんの名前を出すと、渚が目を細めて僕を睨みつけた。
あれ?なんかまずかったかな?話を逸らそうと思ったんだけど……。
「まぁ、いいけど…何で、そんなこと聞くの?」
「いや、渚の知り合いみたいだし、渚の知り合いなら、同じ高校の生徒だろ?僕、あの子のこと、見かけた事すらない気がするんだよ」
「見かけなくてもよくない?別に……」
「うぅ……」
ダメだ、聞く理由にしては不自然すぎたか……でも、気になったのは事実だし。
でも、渚の目が……。
渚の瞳は完全に僕を疑っている瞳だった。
「はぁ〜〜」
渚がため息をついた。
何かを悟ったのか、はたまた諦めたのか、僕に対する疑いの瞳……。
「波人くんってやっぱり、優しんだね」
「うん?なぜ、そんな考えに……」
「ふふっ、空気を読んで話題を変えようとする人が優しくないわけがないでしょう?つまり、そう言うこと…」
「うっ、やっぱり…」
どうやら、渚に気づかれていたらしい。
そもそも渚に気を遣ったところで、隠し通せるはずがないのだ。
「まずは、お店を決めよう、そこでゆっくりと阿澄ちゃんのこと、教えてあげる」
「う〜〜ん」
僕は渚を見つめた。
「な、なに?」
「いや、渚って本当に、学校の時と雰囲気、違うよなって思ってさ…」
「えっ?」
渚は急な話題の変わりように驚きを見せる。
「あっ、いやもちろん、阿澄さんのことは気になるんだけど…今までの渚の言動や行動、口調や性格を見ていると、やっぱり、雰囲気に違いがあるな〜と思って…」
「急…だね……」
「ははっ、ごめんね…」
腕をまくり、時計を確認すると気づけば、時間は7時半を回っていた。
「もう、こんな時間だ、早くお店を決めないと…」
すると渚は暗い顔で……。
「……波人くん、知ってる?」
「うん?」
渚のその一言は、今まで聞いたことがないほど重く、悲しみが込めれていた気がした。
だけど、僕はその時……。
「人ってね、耐えられない時、無理にもう一人の自分を作るの…そうやって心のバランスを取って、もう一人の自分に『大丈夫だよ』って励ましてもらうの…」
渚の口から発せられた言葉は本心だった。
それはこんな僕でもわかった。
けど、渚の顔を見ると、すごく苦しそうで悲しそうで…まるであの時と同じ顔つきだった。
それは渚の本性だと、僕は感じた。
だから、なんて返事をしたらいいか分からない。触れてこなかった、わざと触れないようにしていた。
人の事情なんで人それぞれだ。
誰だって、悲しいことや苦しいことだってあるし、家庭の事情だってあるだろう。
だから、僕が渚に投げかける言葉なんて決まっている。
「渚…」
「………」
「人は変わる、ずっと同じってことはありえない…それは自分がよく知っている…だから、そこまで悩む必要はないと思う…だって渚の人生はこれからだろ?」
「波人くん…」
人は悩む生き物だ。だから渚の起きていることは当たり前のことで、そしてそれは決して僕が関わるべきではない。
だから、僕は触れない。
「さぁ、さっさとお店を決めよ、渚」
「うん」
はっきりと見せた微笑み、それは満遍な笑顔ではなく、少し安心した笑顔だった。
それを見て、僕もホッとした。
「さてと、話が長くなったけど、本当にどこにしよう…」
「う〜ん…この時間になると、人気なお店とか満席かな〜〜」
悩みに悩み、僕たちが決めたお店は……。
「ここって……」
「なんか…お、おしゃれだね」
「こ、これが?」
僕たちが訪れたお店は『力』という名前のうんど屋だった。
見た目はボロボロだが、店内にはうっすらと光はあるし、調べたところまだ営業中と書いてある。
「と、とりあえず入ろっか…」
ガラガラっと開けると、机も椅子もボロボロだった。
どこを見渡しても、ボロボロ、手入れされていないことは見てわかる。
「あらあら、いらっしゃい…」
すると奥側のレジあたりから、おばあちゃんが出てきた。
とても優しそうなおばあちゃん。田舎のおばちゃんが連想される見た目。
「さぁさぁ、ここに座りなさんな、今、お冷やを持ってくるからね」
「あ、ありがとうございます」
「ありがとう、おばあちゃん」
おばあちゃんに案内された席へ座った。
「思ったより……」
「うん、もしかして、結構いいお店、見つけたかもね」
「はい、お冷やだよ」
「ありがとうございます」
お冷やが運ばれてきた。
それを見てあることに気づく。
このお店にはおばあちゃんと奥の厨房にいるおじいちゃん以外いない。
「あのすいません、おばあちゃん、このお店のおすすめメニューってありますか?」
渚が、おばあちゃんにおすすめメニューを聞いた。
こういうお店に限らず、おすすめメニューを聞いておいて損はない。
何より、お店がおすすめするのだから、味にも自信があるはず……。
まぁ、僕は話しかけるのが苦手だから、聞くことはないけどね。
こういうのは話すことに慣れている渚だから、こそできる。
「あ〜それなら、この味噌煮込みうどんがおすすめだよ」
「じゃあ、その味噌煮込みうどんでお願いします」
「じゃあ、僕もそれで…」
「はいはいあ、味噌煮込みうどんが二つだね……フゥ〜〜〜」
「うん?」
突然、おばあちゃんが大きく息を吸い出した。
なぜ、深呼吸?
「「あんた!!味噌煮込みうどん!!!二つだよ!!!!」」
店内におばあちゃんの叫び声が響き渡った。
その叫び声にを聞いたおじいちゃんは……。
「「はいよ!!!味噌煮込みうどん!!!!二つ!!!!!」」
さらに店内に響き渡る声が返ってきた。
「少し待っててね」
『あ、はい…』
僕と渚の声は重なった。
そして同時に同じ感想を抱いた。
『ちょっと、クセ強すぎない(か)?』
耳元に響いてうるさかったが、なぜか怒りを抱くことはなかった。
これに関しては本当に不思議だ。
「ねぇ、波人くん…」
「わかってる、渚が言いたいことはわかってる」
お互い、空気を感じ取る。
おそらく、同じ感想を抱き、同じ印象を受けた。
「このお店ってもしかして、結構やばい?」
「いや、こういう癖のあるお店ほど、隠し味や、仕込みに手が凝っていて美味しいってテレビで見たことがある…」
「波人くん…」
「なんだ、渚…」
「ちょっと耳かして…」
渚は机に手を置いて、僕の耳元で囁いた。
「ちょっと、ドキドキするよね」
甘い声が耳元でふわりと囁かれ、僕はすぐに渚と距離を取った。
「や、やめろよ、心臓に悪い…」
「だって、顔が固いんだも…」
「それは、あの声を聞けば固くもなるだろう」
「下も?」
「そんな下ネタ話はしてない」
「ほら、柔らかくなった」
見透かされた笑顔。どうやら、渚にはお見通しのようだ。
けど、あの笑顔と声は反則だ。
狙っているのか分からないけど、たまに不意をついてくるときがあるのが本当に心臓が止まりそうになる。
「わざとやってるだろう」
「そんなことないよ、波人くん」
絶対にワザと、ということはわかった。
するとニヤリとしたおばあちゃんがこちらを見つめていた。
あの、おばあちゃん…楽しんでるな……。
楽しそうに微笑んでいる渚とニヤリと眺めているおばあちゃん。
まさしくカオスだ。
しかも、渚の笑顔が自然なのも気になる。
しばらく、渚と話していると、味噌煮込みうどんがきた。
「はい…味噌煮込みうどん、二つだよ」
「ありがとうございます」
「ありがとう、おばあちゃん」
「お二人共、ごゆっくり」
ゆっくりと歩き出すおばあちゃん。なぜかニヤリと笑っていた。
「じゃあ、食べよっか、波人くん」
「あ、うん」
少しおばあちゃんのことが気になったけど、それ以上に味噌煮込みうどんがすごく美味そう。
熱々の湯気に、そこから漂う味噌の香りに加え、備えられているネギもほのかに香り、食欲がそそられる。
そして、僕たちは手を合わせて……。
「いただきます」
「いただきます」
ーーーーーーーーーー
『会話』波人&渚&作者
波人:なぜ、こんな中途半端に終わってしまったんだ!?
渚:しょうがないよ、文字数が多くなっちゃうんだから
波人:いやいや、ここは文字数が多くなってでも書き切るべきだ
渚:文字数が多いと読むのに時間がかかるでしょう?少しは読書の気持ちになってみなさい
波人:くぅ、何も言えない…で、でも!!流石に「いただきます」で終わらせるのは…
渚:それに関しては私も少し思うところはあるけど…そこはやっぱり直接、作者さんに聞くべきよ、波人くん
波人:それはいい案だ、渚!!ゴホンっ…では、作者の真菰さ〜〜ん!!
作者:うん?あっ、はい、なんのようですか?
波人:少し聞きたいのですが、なぜ、この重要な第17話がこんな中途半端に……
作者:では、次回をお楽しみ!!
波人:え!?ちょっと待っ……
作者の力により、会話が強制的に終了した。
作者:このお話の続きはまたどこかで、あ!あと少しでも『面白い』『続きが気になる』と思ったら『☆☆☆』評価お願いします。
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