第14話 波人と渚は友達になる

ファミレス『サインゼリア』に入店すると、店員さんが僕たちの元へ駆け寄り、優しく話しかける。


「何名様でしょうか?」

「2名でお願いします」


すると咄嗟に渚さんが対応する。


「2名様ですね、席へ案内します、こちらです」


そのまま僕たちは店員さんについていき、窓際の席へ案内される。


「では、ご注文がお決まりになりましたら、お声かけください」


そう言って、去っていった。


渚さん、なんか慣れてるなっと思った。別におかしいわけではない、だけどなんて言うのかな。

どう言葉にしていいか分からないけど、意外?って表現が正しいのか?


「ねぇねぇ、波人くんはなに頼むの?」


と言いながらメニュー表からチラッと覗き込み、にっこりと笑う。

本当に楽しそうだな。


「僕は、このナポリタンにしようかな」

「じゃあ、私もそれにする…店員さ〜〜ん!!」


渚さんは店員さんを呼び出し、メニュー表を見て注文する。


「ナポリタン二つでお願いします」

「はい、ありがとうございます。ナポリタンがお二つですね。少々お待ちください…」


ごく普通に注文する渚さん。やっぱり、意外だ……。

いろいろ考える僕は、渚さんをじっと見つめていた。


「な、波人くん。あんまり、ジロジロみられると…そ、その恥ずかしんだけど」

「あっ、ごめん。ちょっと考え事してて…」

「考えごと?」

「まぁ、少し?」

「ふぅ〜ん」


ムクっと頬をふっくらと膨らませて、僕の方に向かって可愛く睨みつける渚。

そんな顔をしたむっくりな渚さんはとても可愛かった。


「な、なに?」


少し怒っている様子を見せている渚さん。僕には理由がわからなかった。


「私にはわかるよ、波人くん…」

「は、はい」


少し怖い渚さん。すると僕のオデコに指パッチをする。


「いて…」

「これで許してあげる」

「はい?」


マジで意味がわからなかった。僕はただ渚さんについて考えていただけなのだが……。

女の子ってわかんねぇ〜。


「こちら、ナポリタンでございます、ごゆっくりお召し上がりください」

「わぁぁぁ!きたよ波人くん!!」


「ありがとうございます」


「波人くん、このナポリタンすごく美味しいよ〜〜ほっぺが落ちちゃうよ〜〜」

「大袈裟だな…」


すごく美味しそうに食べる渚。お世辞とは思えない笑顔、本当に不思議だ。


「あれ?波人くんは食べないの?」

「食べるよ……」


そして僕はナポリタンを口にする。


「あっ、美味しい…」

「だよね!!」


ここには何度も来たことがあるし、このナポリタンも何回も食べたことがある。

なのに、今食べたナポリタンは今まで食べてきた中で一番美味しいと思えた。

渚さんのおかげだろうか……それともあれかな、一人で食べるよりみんなで食べた方が美味しいというやつだろうか。


「あっ」


渚さんは何かに気づいたのか声をあげる。僕はふと渚さんの顔を見る。

すると、渚さんの手で僕の顔にゆっくりと……。


「えっ…」

「動かないで…」


僕は反射で目を瞑ると、頬に触れられる感触があった。


「はい、拭けたよ」


渚さんはおしぼりで頬についてナポリタンのソースを拭き取っていた。


「あ、ありがとう」

「なに顔赤くしてるの?もしかして…照れちゃった?」


目線を少し下ろし、上目遣いでニコリと小悪魔のように笑った。


「うっ」


ドキドキしてしまった。まぁ今日はずっとドキドキしているのだが、今のはヤバかった。

てか、その笑顔は反則でしょ。普通、頬についたナポリタンのソースを拭く行為は恋人同士がやることだ。


「照れちゃって、可愛い」

「うっ、う〜。勘弁してくれ…」


本当に渚さんは最近、大体になった気がする。学校では結構クールでかっこいいんだけどな。

今の渚さんは、一人の女の子に見える。これが女の子の二面性ってやつか。

まぁ、可愛いからいいか。


「ごちそうさまでした」

「ごちそうさま」


僕たちはお昼ご飯を食べ終え、店内から出る。

そしてしばらく、目的もなく歩くことになった。


「波人くんはどこか行きたいところとかないの?」

「行きたいところかぁ〜ゲーセンは行ったしなぁ〜〜」


行きたところなんてあるわけがない、だってぼっちだから。基本一人だから、行きたい場所以前に行ってきたところが少ないから、選択肢がそもそもない。

さて、どうしたものか。


「楽しいね、なんか夢みたい」

「え?」

「波人くんは私と遊んで楽しくなかった?」

「いや、そんなことはないよ。女子と遊ぶの初めてだったけど渚さんと遊べてすごく楽しかった。この気持ちに偽りはないよ」

「そうか、波人くんが楽しんでくれて私は嬉しいな〜〜」


満遍なにっこりとした笑顔。空を見上げて、楽しそうにゆっくりと歩く。

だけど、やっぱり……。


「渚さん…」

「ねぇ、波人くん…その渚さんっていうのそろそろやめない?」


それは唐突なことだった。

『渚さん』この言い方は僕にとっての敬意であり、なるべく距離が近づかないようにするための防衛線だ。

それを無くす……それは、とても怖いことだ。


「ダメかな?」

「いや、別にダメというわけでは…ただ…」


割り切るべきだろうか。けどここで渚と呼んでしまったら、何か変わってしまう気がする。

僕はまだ渚さんのことをなにも知らない。

いや、きっとみんなはそんなこと関係ないよっと言うかもしれないけど、僕はそう思わない。


「どうしたの?波人くん…」


心配そうな顔で見つめてくる渚さん。

はぁ〜なんで僕はこんな変な気持ちになっているのだろうか。

いやそうだ、きっと僕は逃げているんだ。恐れているんだ。


あの時みたいに他人のフリをされるのが……。


あの時は平然としていたけど、つらかった。悲しかった。あんな思いにどとしたくないと思った。

だけど、そうもいかない。

最初は友達を作る気なんてなかった。だって後がつらいから…けど、うん。

そして僕はある決断をする。


「ねぇ、一つ聞いていい?」

「なに?」

「渚は僕のこと…友達だと思ってる?」


これは僕にとっては思い切った発言だった。


渚…僕は君の友達になれるだろうか?人気者である君と…友達に、そんな心境がずっと僕の心にはあった。

そしてこの気持ちが何なのか今はまだわからないけど、何事もまず友達からだと、誰か、から聞いたことがある。

だから僕はまず君と友達になろうと思う。


僕の発言に対して渚はクスリと微笑み……。


「当たり前じゃん…」


その時の笑顔は僕がみてきた中で一番の満遍な笑顔だった。

その笑顔を見て、僕の心は動かされた。


「そ、それに…私としては…そ、その、ともだ…ち、いじょ…うの関係にも」


渚がボソボソと喋っている中、僕はそんなボソボソ声は聞こえず、驚きのあまり固まった。


「って、波人くん!!ど、どうしたの!!」

「はっ!!いや、なんかこう…う〜ん、なんて言うのかな…嬉しいのかな?」


変な気持ちが心にじんわりと染み込んでいくのを感じる。

そう、この時、僕たちは意識しなかったけど、確かに波人と渚は友達になった。

だからこそ、僕は余計に知りたくなってしまった。



あの時、なぜ河川敷の橋の下で泣いていたのか。

なぜ、顔には出さず、を我慢して……いるのか。



けどきっと渚はそれを教えてくれないだろう。

きっとそれを教えてくれるのはまだ先の話……。



渚は僕のあやふやな返答に冗談半分で笑う。


「なにそれ、変なの〜〜」

「うるさいな…はぁ〜なんか変な話になったな…こんな話はもうやめてどこ行こうか」

「そうだね〜う〜ん。そうだ!!服を見に行こうよ」

「服?」

「そう!!きっと波人くんに似合う服がたくさんあると思うんだ」


服かぁ〜あんまり買うことないしちょうどいいかもな。

それに渚はファッションセンスもいいし、ファッションの勉強にもなりそうだ。


「それじゃあ、行くよ、波人くん」

「そうだな、けど…あんまり走るなよ、普通に危ないから」

「はぁ〜い!!」


僕たちの土曜日遊び《デート?》はまだまだ続く。


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目指すはカクヨムコンテスト8、ラブコメ部門大賞!!


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