第13話 渚ちゃん、初めてのゲーセン(デート?)
周りから目線を集めるも、渚さんは気にせずに、ルンルンだった。
ーー渚さん、すごく楽しそうだな
「ねぇねぇ、波人くん…まずはここにいくよ!!」
と笑顔で振り返る。
その笑顔に見惚れながらも、案内された場所は意外な場所だった。
「え…ここって」
そこはゲームセンターだった。
「よし、いくよ!!波人くん!!」
「う、うん」
ーー渚さんってゲーセン行くんだ、意外なんだけど…
ゲーセン特有のアーケードゲームの音、メダルゲームの音、みんなが楽しく遊んでいる音があちこちで聞こえてくる。
流石に会わないよなっと周りをチラチラと見る波人。
ゲーセンは僕もよく行く場所だが、ある欠点がある。それが同じ高校の生徒と出くわすことだ。
「なに、見てるの?」
「あ、いや、なんでもないよ…そ、それより、ゲーセンで何するの?」
「おっ、よく聞いてくれました!!まずはこれっ!!」
そう言って最初に案内されたのはダイコンの達人だった。
「おっ、お〜」
「これ一度やってみたかったんだ〜〜」
「え、初めてなの?」
「うん、てかこのげ、ゲーセン?にくるのも初めてだよ…」
「う、うそ」
ーーえ、初めてなのにここにきたの?
あまりにも信じられなかった。
いやだって、普通選ばんでしょっと思いつつも、渚さんの顔は興味津々だった。
「ねぇ、波人くん…早く、やろうよ…ね?」
「そ、そうだね」
ダイコンの達人…それは曲に合わせんがらダイコンで叩くゲーセン定番の音ゲーというものだ。
すでに全世界に展開されており、知らない人などほとんどいない。
実際、僕も一時期ハマっていた時期があった。
「よっおっ、やぁっ!!え〜波人くん〜これ難しいよ〜〜」
「ははは、それはそうだよ、いきなり鬼なんてやるから」
「え…鬼ってなに?」
「難易度のことだよ、ほら、ここに鬼って書いてあるでしょ?ダイコンの達人では鬼が一番難易度が高いんだ」
「へぇ〜〜って!!波人くん、フルコンボって書いてあるよ!!」
「まぁ、一様、経験者だから…」
「すごいね、波人くん」
普通の笑顔なはずなのに、こんなにも心に響くものだろうか。
僕が影響されやすいのか、それとも……。
とそれはさておきて、楽しいには楽しいのだが、目線が集まっているのが、すごく気になる。
「波人くん、もう一回やるよ」
「はいはい…」
どうやら、渚さんはダイコンの達人にハマってしまったようだ。
けど、こういうのも悪くない。
………周りの目線がなければ
「ふぅ〜〜ん、はぁ〜楽しかった、次はどれで遊ぶ?」
「う〜ん、クレーンゲームとか?」
「クレーンゲームってあの噂の?」
「なに、噂って…」
「ほら、お金を巻き上げるあの…」
その瞬間、僕は渚さんの口をサッと塞ぐ。すると周りが「お〜」と小さく聞こえた。
「あんまり、そういうこと言わないの」
「ぶはぁっ、ご、ごめんなさい」
うるっとした瞳、その時、僕が今やったことに気づく。
あっ僕、今渚さんに……。
僕はサッと手を後ろに隠した。
「ごめん…」
「うんうん、じゃあ、行こか」
「そうだね」
急な密着に照れる二人。そんな雰囲気が流れる周りのみんなはこう思った。
「イチャイチャするなら他所でやれ」と。
そして僕たちはクレーンゲームが置いてあるところをぐるぐると回った。
「ねぇねぇ、このクマちゃん、かわいいよ!!」
まさか、ゲーセンがこんなに楽しいと思う日が来るなんて…けど流石に少し興奮しすぎでは?と思いつつ、僕は渚さんに引っ張られながら、あちこち歩き回る。
「よし、これに決めた…」
渚さんが選んだ台は大きなイルカのクッションだった。
ーーこれは取るの大変そうだな
1回目は失敗し、2回目3回目とドンドン100円玉が投げられていく。
ーーこれ…大丈夫か?
20回目へ突入していた。
「な、波人くん……と、取れにゃい」
ーーあっ噛んだってそうじゃない
涙目になりながら、こちらを見つめてくる渚、かわいいかよ!!っと心に突っ込みながら、僕はクレーゲームの台の前に立つ。
「な、波人くん?」
「少し待ってろ」
クレーゲームの台に100円玉を入れる。
ピロリっと音ともに僕はボタンを押す。
別にかっこいいところを見せたいわけではないが、流石に可愛いそうだと思った。
まぁ、その姿も可愛かったが……。
僕がボタンを押すとクレーンは動き出しイルカを捉え、がっしりと掴む。そこから持ち上がり、あとはそのまま持っていき落とすだけになった。
「あと、あと少し…頑張れ、頑張れ…」
ピロピロと音が鳴りながら、落とす穴へとクレーンがイルカを掴んで近づいていく。
「あとちょっと、あとちょっと」
クレーンゲームの台に顔を近づけ、眺める渚。
こんな姿、一体誰が想像できようか…関わる前の僕だったら、絶対に別人だと思うだろうな。
とあと少しというところで掴んでいたイルカが落ちる。
「あっ!!」
ダメだったと渚が思った瞬間、落ちたイルカが穴のふちにあたり、そのまま穴へ落ちた。
「え、落ちた……」
と驚きながら、僕の顔を見つめる。
僕はそのまま手に入れたイルカを取り出し、渚さんに手渡すと頬を少し染めながら、渚は受け取る。
「ほら、これ…」
大きなイルカのクッションを抱きしめながら、顔の半分をクッションで埋める。
そして、ぼそっと声を出す。
「あ、うん」
僕も少し恥ずかしくなり、頭をかきながら、顔を隠すように後ろに振り向く。
ーーなんか、恥ずかしいな
「波人くん…」
「な、なに?」
恥ずかしながらもチラッと渚さんの方に振り向く。
すると……。
「ありがとう」
頬が染めながら、イルカのクッションを抱きしめ、潤った瞳が僕を見つめる。そして柔らかな笑顔で言った渚さんの声。
その声は透き通っていて、一瞬、僕の時間が止まった。
「どうしたの?波人くん…」
「あっ、いや、なんでもない…」
あの顔は反則だろっと思った。
あまりにも可愛すぎて見惚れてしまった。本当に情けない。
きっと今、僕の顔は見せられないほどに真っ赤に染まっていると思う。
「そろそろ、お昼食べない?」
「あ、ああ…」
腕時計を見ると12時半を回っていた。もう、こんな時間かっと周りを見渡す。
するとゲーセン内もかなり多くの人数が集まってきた。
やっぱり、この時間帯になるとゲーセンも混んでくるな。
「とりあえず、ゲーセンから出るか」
「そうだね」
ゲーセンから出ると、あの息苦しい感じもなく、外の空気が新鮮に感じる。
そして僕たちはブラブラと歩きながら楽しく会話をする。
「ねぇ、どこでお昼ご飯食べる?」
「う〜ん、ファミレス?」
ふと思いついたファミレスを上げると、咄嗟にダメだと気づく波人。
しまった、渚さんのことだ、ファミスレなんて行かないよな。
ここはやっぱり、おしゃれなお店だろうか?けど僕、そんなお店、知らないしな〜。
「……いいね、ファミレス」
「え…」
「じゃあ、近くのファミレスにしようか」
「いいの?ファミレスで?」
「うん、だって少しでも長く波人くんと遊んでおしゃべりしたいからぁ」
と満遍な笑顔で言った。
もう今日だけで何回、渚さんの笑顔を見たことか。
いつまで見ても可愛い、魅了される笑顔。
そんな彼女と遊んでいる僕、だけど一つだけ違和感に思っていることがある。
それはあの時、雨に打たれていたあの日の後から思っていたことだけど……。
それは………。
どうして渚さんはそんなに苦しそうなんだろう。
こうして僕たちは近くのファミレス『サインゼリア』へ向かった。
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