第12話 渚は待つ姿が可愛いと証明されました
ーー五十嵐波人視点ーー
渚さんと遊ぶ約束をした僕は明日に向けて、身だしなみをチェックなどを行っていた。
相手はあの渚さんだ。僕なんかと一緒に歩いていたらすごく目立つ。
そんな中、明らかにファッションセンスのない服装で行ってみろ、よけい目立つ。だったら、ちゃんとした身だしなみをした方がきっと、いいはずだ。
少しでも目立たないためにも。
とはいえ、僕はあまり友達と遊んだ経験が高校に入学してからなく、今、どんなファッションが流行なのか、わからない。
「どうしたものか…」
まさか、この僕がこんなにもファッションのことで悩むことになろうとは思わなかった。
ただずっと着ていく服を何着か候補に選び、悩み続ける。
「う〜ん…いやいや、う〜ん…どうしたら」
ファッションを選ぶ上で一番避けたいのはオタクっぽい服装と小中学生っぽい服装だ。
高校生1年の時に経験したのが、あの時の友達だった男3人組と遊びに行く時、聞いてしまったんだ。横を通り過ぎた女子組が……。
「ねぇねぇ、今の人たちみた〜?」
「うんうん、見た見たやばいよねぇ〜未だにいるんんだね」
「なんていうかぁ〜オタクっぽいというかぁ〜」
「そうそう、恥ずかしくないのかな〜」
「さぁ〜」
そう言って笑っていた。
あの時の友達だった男3人組は気づいていなかったが、僕は聞こえてしまった。
「あれは〜きつかったな〜〜」
それが聞こえてから、遊んでも全然楽しめなかったし、あれは地獄だった。
さて、そんな悪夢を思い返すのはやめて、さっさと明日着ていく服を決めなくては……。
不意に僕はスマホを眺める。
すると「ピコンッ」と音が響く。それは『リャイン』の通知だった。
「うん?」
画面の通知をタップすると、どうやら、渚さんからだった。
「なんだろう?」
集合場所と時間はちゃんと聞いたし、特に話すことはないと思うんだけど…なんかあったのかな、と頭を傾げる。
まさか、僕の返信の仕方におかしなところでもあったのだろうか。
僕はこのかた16年間、女子と『リャイン』をしたことがない。
だから、どうしても『リャイン』での言葉使いや配慮をどうするか、迷ってしまう。
こればっかりはどうしようもない。こういうのは連絡ツールに慣れるしかないのだ。
「なんじゃ、こりゃ…」
送られてきたのは大量の自撮り写真……。
しかも、めっちゃ可愛い、写りもいいし、これ一枚500円って言われても買うレベルに可愛い。
でも、どうしてこんなにたくさんの自撮り写真が送られてくるんだ?
波人:なんだこれ…
渚:ちょっと聞きたいことがあって、どれがいい?
波人:どういうこと?
渚:もう〜どの洋服が可愛いかって聞いてるの
波人:はぁ〜なるほど…う〜ん
と感じな会話になった。
なぜ、僕に聞く?っと思った。
しかし、聞いてくる異常を返答してあげるのが優しさ……。
「お〜〜30枚ぐらいはあるな…」
僕はしっかりと一枚一枚、確認していった。
ーーど、どれもかわいい
正直言って、似合わないという言葉が思い浮かばないほどに、全ての服が渚さんを美しく引き立たせている。
まるで、渚さんのためにこの服があるように。
「いや〜これは、どれを選べばいいんだ…」
ここは素直に全部似合ってるよって言うべきだろうか。
いや、そんな返答をしたら、逆に怒られそうだしな。
「う〜、お〜〜なんか、悪いことをしているみたいでなんかやだな…」
決して、悪いことはしていないが、こんなにたくさんの渚さんの写真を見ていると、僕がただの変態みたいじゃないか。
「と、とりあえず、写真を選ぼうかな…」
僕は特に良かったなと思った写真を選んだ。
「これでいいかな…」
波人:まぁ〜あえて選ぶなら
写真(選んだ写真)
そして選んだ写真を送信した。
「なんか、付き合いたてのカップルみたいな……なんか、……」
ふとそう思った瞬間、体が熱くなってくるのを感じる。
胸元から顔へ熱く、熱くなっていき、気づけば頬が薄く染まっていた。
「ダメだ、ダメだ、意識しちゃダメだ…平常心…平常心…」
ふぅ〜と息を吐いて深呼吸をする。胸元へ手をおくと、心臓が早く鼓動していることに気づく。
「こんな状態で大丈夫かな〜」
急に心配なってくる自分。チラッとスマホに目線が吸い寄せられる。
返信が気になるのだ。
これが男子特有だと思うが、女子からの返信というのはすごく気になるのだ。
特に慣れていない男子は全員、経験したことがあるはずだ。
「あ〜〜〜〜〜〜」
こうして待つこと1時間、返信こず、テンションが下がる波人。
「キモかったかな〜」
返信内容が悪かったのかなと思い始め、反省を始めた。思い込みとは怖いものだ。
「と、とりあえず、着ていく服を決めないと……」
時間はすでに0時に差し掛かっている中、服を選び始める。
体が重く、なぜか気分が落ち着かなくなる感覚が体に染み込むだす。
「もう、これでいいかな…」
なんか、もうどれでもいいかな……。
投げやりな気分になり、さっさと決めて、眠りについた。
そして、今日、土曜日、集合場所マツドナルドへ向かった。
普通に街中を歩いていると、なぜかマツドナルドで人集りができていた。
「なんだろう、何かイベントでもやっているのかな…」
恐る恐る近づいてみると、人集りからこんな会話が聞こえてきた。
「おいおい、あの子、超かわいくね?」
「それな、まじ可愛いわ」
「誰かと待ち合わせかな?」
「きっと超イケメンだぜ」
「だよな〜羨ましいぜ、あの子と付き合っている男は…」
ーーうっ…まさかな
人集りの中を掻い潜り、そこから抜けると、見覚えのある彼女の姿があった。
マツドナルドの近くでスマホを見つめながら、待っている立ち姿は周りにいるみんなを釘付けにしていた。
「あ、あの服って…」
ーー僕が選んだ……
ってそうじゃない、これどうしよう。こんな人集りで「待った?」なんて言えないし、てか、この人集りを作れるほど可愛いとか、僕が罰当たりそうなんだが…。
ーー本当にどうして俺なんかと…
「あっ!!波人く〜〜〜ん」
僕がどう動くべきか悩んでいたら、渚さんがこちらに気づき、にっこりとした笑顔で左右に手を振る。
その瞬間、人集りが渚さんが向いている方向にギラっと振り向く。
「…え」
僕はそのまま、気にしないようにして渚さんの元まで向かった。
ーー目線が痛い…
明らかに、僕の方に目線が集まり、ヒソヒソ話が耳に痛く入ってくる。
ーーまじで何!?普通こんな反応になるかぁ?渚さんっていったい何者!?
「渚さん、はや、かったね」
「そうかな?」
ーーまだ10時50分だけど…
「まぁ、いいじゃん…それに早く集まれた方が長く遊べるし…」
「まぁ、確かにな…」
「じゃあ、行こっか」
「そうだな…」
僕と渚さん、二人で並ぶ姿はあまりにも釣り合わないと誰もが思っただろう。
だが、そんな考えすら、彼女の笑顔で消え去るのです。
だって、その時の彼女の笑顔はとても素敵だったから。
こうして波人と渚の土曜日遊び(デート?)が始まった。
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