第一章:二幕 波人と渚がデートする
第11話 天音渚は波人くんと『リャイン』を交換する
時間は少し遡る。
波人くんに一緒に帰ることを断られ、ここずっと落ち込みながらも、なぜ断られたのかその理由をずっと考えていた。
「ん〜なにがダメだったんだろう…」
ここほんの数日で仲良くなった気がしていた渚。
しかし、それは気のせいだったと、気付かされた。
「ん〜」
だが、天音渚はそんなことで諦めるほど、やわではない。
「待って、そいうことなのかな…」
渚はあることに気づく。
現在、波人くんとの仲は『一緒にお昼ご飯を食べる』…だけなのだ。
つまり、私たちはそもそも友達にすらなれていなかったのでは?
だから、断れられた。
私自身が納得できる内容だ。
「友達…そうだ!!波人くんと友達になれていなかったから!!……でも、どうやって友達になろう?」
ここで渚は友達とは?と考え込む。
ここまでくると哲学の話になってくる中、渚は自分なりの答えを導き出す。
「そうだ!!遊ぼう!!一緒に遊べば、それってもう、友達だよね!!」
答えを導き出し、早速、誘おうとするが、その日に限って『自己紹介』というめんどくさい行事が行われ、誘う機会を失い断念する。
そして次の日!!
屋上に波人くんを呼び出し、今、現在に至る。
「で、どうなの?」
ーーなぜ、こんな状況に……
僕がなぜ、屋上に呼び出され、それに応じたのか、それは簡単な話だ。
お昼ご飯を作ってもらった時に持ち帰ったお弁当箱を返しにきたのだ。
だが、まさかこんな状況になるとは……誰も予想できないだろう。
実際に僕は予想できなかった。
誘われた僕は断ろうにもすでに「え…まぁ暇だけど…」っと言ってしまった。
断ることができなくはないのだが、そんなことをして周りからどう思われるか…。
ただでさえ、昨日の『自己紹介』で廊下を通り過ぎると「あっ!!あの人って確か〜」って言われてしまうほどに目立ち始めている。
これ以上、目立つのは本望ではない。
それに目を輝かせながら、期待を宿す瞳…正直、めっちゃ可愛い!!
僕は、押しに負け……。
「…わかったよ」
「よかった…じゃあ、今週の土曜日にね、あっ…あと、待ち合わせ場所とか相談したいから、連絡先交換しよ」
「う、うん」
僕と渚さんはお互いにスマホを取り出し、『リャイン』を交換した。
「じゃあ、またね」
「ああ…」
屋上を降りて行った渚さん。
この時、初めて女子の『リャイン』を手に入れた。
「ま、まじか…まさか…」
嬉しいようで何故か複雑な感情が紛れ込む。
この嬉しさを受け入れて本当にいいのか。
「くぅ〜〜はぁ〜なんか、どんどん、僕の思い描いていた高校2年生生活が離れていく気がする」
その頃、天音渚は満遍なにっこりとした笑顔で紗枝に話しかける。
「紗枝ちゃん!!私、波人くんと『リャイン』交換したよ!!」
「へぇ〜頑張ったじゃん」
「実は私、ずっと考えてたの、どうして、一緒に帰ることを断られたのか…」
ーーそんなこと、考えてたんだ
と驚きを見せる紗枝。
「それは私と波人くんの関係にあったんだ…だからさっき、波人くんと遊ぶ約束をしたの」
「お、一気に攻めたね」
「これできっと波人くんと友達になれるはず!!」
「まぁ、頑張ってね」
「うん?どうしたの紗枝ちゃん?なんか元気ないよ?」
「そ、そうかな?」
「うん、なんか…悲しことでもあった?」
「別にそんなのないんだけどな〜〜」
「もしかして、昨日、体操服を取りに行ったときに…」
「あっ!!渚ちゃん!そろそろチャイムが鳴るから、次の授業の準備しないと!!」
「そうだった!!次って世界史だよね…あの先生苦手なんだよね、上から目線っていうか、自分が一番偉いって雰囲気を出すからさぁ〜〜」
話を逸らした紗枝。ほっとした気持ちが心に染み出す。
だって、渚ちゃんには言えないことだし、気づいてほしくない。
そう、昨日の件は、渚ちゃんには言っちゃダメ。
今の渚ちゃんは輝いていて、私が見てきた中で今一番、恋する少女のように青春をしているんだもん。
邪魔はできないし、そのままその恋を成就してほしい……友達として。
でも、言えないよ……渚ちゃんには言えないよ。
『波人くんと遊ぶ約束をしたの』と聞いた時……。
ーーモヤモヤしたなんて…
こうして、日々の毎日は続いていき、金曜日の夜が訪れた。
ーー天音渚視点ーー
明日は初めて波人くんと遊ぶ日。
このワクワク感とウキウキ感が昂ぶり、心の底から楽しみにしていた。
すでに何回か『リャイン』で波人くんと会話をして集合場所や日時を確認を済ませた。
渚:集合場所はここにします
URL……………………………………(マツドナルド)
波人:わかった、何時に集合?
渚:11時でお願いします
波人:了解
とこんな感じの『リャイン』。初めての男子との『リャイン』は楽しかった。
実は、私…男子と『リャイン』を交換したのは初めてだった。
少し文章はぎこちなかったけど、何故か胸の鼓動が鳴り止まなかった。
「何にしようかな?」
初めて男子と一緒に遊ぶ渚。身だしなみをしっかりしなくては思い、クローゼットから洋服を出来るだけ取り出し、洋服選びを楽しげにする。
「これかな?それともこれかな?う〜ん、やっぱり、こっちの方がいいかな?」
両手で洋服を持ちながら、目の前にある鏡で左右の洋服を確認し、試行錯誤する渚。
何着もある洋服から選び出すのは難しく、ここ1時間半ほどずっと洋服で悩んでいる。
「う〜ん、なんかピンとこないな〜〜」
何着も確認し試着しても、納得のいく可愛さにならず、ずっと洋服が手放せなくなっていた。
そして悩むこと、さらに1時間、すでに窓の外は暗く、夜10時を回っていた。
「もう、こんな時間…う〜ん、そうだ!!」
何かいいことを思いついたのか、自分で良かったと思う洋服を選び、着ると、スマホを片手で持ち、カメラを起動させる。
そして少し角度をつけて、上目遣いで一枚写真を撮る。
「これでよし!!」
そして次の洋服に着替え、また一枚、また一枚と撮っていく。
「ふぅ〜ん、大体…30枚くらいかな」
そしてスマホに顔を近づけ、ポチポチっと画面をタッチする。
「これで送信っと…」
私は洋服選びに悩んだ末に「そうだ!!波人くんに選んでもらおう」と思いついた。
そこで、自ら洋服を着ては、波人くんに送る用の写真を撮った。
「あっ…この時間帯に送って大丈夫だったかな…」
もうすでに夜10時を回っている、もう寝ているかもしれないと思ったその時、スマホから「ピコンッ」と通知が鳴る。
スマホ画面を確認すると『リャイン』からの通知で名前に『波人』と書かれていた。
「き、きた…」
ノリノリな気分で送った写真、返信が来るとなんだか急に体が熱くなっていき、スマホ画面を見つめていると頬が少し赤くなる。
ゆっくりと指を近づけ、ブルブルさせながら『リャイン』のアイコンをタップする。
波人:なんだこれ…
と返信が来たので、渚はその返信に答える。
渚:ちょっと聞きたいことがあって、どれがいい?
波人:どういうこと?
渚:もう〜どの洋服が可愛いかって聞いてるの
波人:はぁ〜なるほど…う〜ん
『リャイン』の会話で少し返信を待つと……。
波人:まぁ〜あえて選ぶなら
そう返信が送られてきたと同時に複数枚の写真も送られてきた。
「な、なるほど…こういうのが好きなんだ…波人くん……」
こうして洋服を選び終わり、夜遅くなりすぎると、起きられなくなるので、明日に備え、ベットで眠った。
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