第5話 渚ちゃんの誘いを断った結果、なぜか安曇くんとご飯を食べることに

教室に戻る、僕と渚さん…教室に入るとクラスメイトの視線が僕たち集まった。


ーーあ〜勘弁してくれ


屋上でのお昼は夢のような時間ではあったが、この光景を見ると気分が下がる。


「はぁ〜〜」

「ため息をつかないの…幸せが逃げちゃうよ?」

「ははは…そうだね」

「もう、元気出して!!」


そう言って、渚さんは僕の背中を叩く。


なぜか渚さんに慰めれる状況に陥った僕、そしてクラスメイト、いや特に男子生徒の目線が痛く突き刺さってくる。


チャイムの音が教室中に鳴り響いたーーお昼時間が終わったのだ。


「じゃあね」

「う、うん」


僕と渚さんは元の席に戻った。


ーーはぁ〜これからどうなるのやら


たった一つのきっかけでなぜか渚さんとお昼ご飯を共にする関係になった僕。


別に嫌ではないのだが、なぜかすごく寒気を感じるのだ。

そのまま午後の授業が始まり、気づけば、6時間目の授業が終わっていた。


「はぁ〜全然本に集中できないよ…」


新作も半分以上読み進め、気になっている中、未だに渚さんの顔がチラついて、全く、読むことに集中できない。

先生が教室に入り、帰りの挨拶をして、1日の学校が終わる。


「今日は、早く帰って、本を読もう…」


そう思い、思いっきり、立ち上がり、バックを片手に持って、帰ろうとすると渚さんが歩む道を拒んだ。


「あっ…渚さん」

「一緒に帰ろう、波人くん」

「え?」


その意外な言葉に周りの生徒も……


『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!』


と叫んだ。


「うん?みんなどうしたの?急に叫んで…」


渚さんは「?」を浮かべていた。

どうやら、この状況を理解していないっぽい。


ーーう、うそでしょ


驚愕のあまりに、声が出ない僕。


「おいおい、渚ちゃん、急にどうしたんだよ?今日の渚ちゃん、ちょっとおかしいぜ?」


僕の前に座る男子生徒、安曇正志(あずみまさし)が席から立ち上がり、なぜか反論した。


ーーついに出ちゃったよ


この状況…僕が恐れていた。


「うん?なにがおかしいのかな?教えてよ…安曇くん」

「いや、それは……」


戸惑う正志、きっと咄嗟に口を出してしまったのだろう。


「だって、おかしいだろう?急にそんな陰キャと仲良くしているなんてさぁ」

「誰かと仲良くするのは私の自由でしょう?それとも私が仲良くする相手には必ずあなたの許可が必要なの?」

「あ、いや…」

「みんなも、そう思うよね?」


渚さんって結構悪魔なんだっと僕は思った。


だって、顔が完全にかよわいひよこを弄ぶような顔をしているんだもん。


みんなはなにも言わず、ただ「うんうん」と頷いた。


やっぱり、渚さんのクラスとしての力って相当なものなんだなと感じた。


「じゃあ、波人くん…帰ろう」

「いや、そもそも一緒に帰るって言ってないし…」

「え?」



『え?』



渚さんの情けない声をかき消すほどに周りの生徒たちの驚きの声が教室全体に響いた。


「いや、流石に渚さんと二人で一緒に帰るのは、ちょっと…」

「な、なんでよ〜〜波人くん」


泣きそうなうるうるとした瞳で僕の瞳を覗き込む。


「だってさぁ、目立つじゃん普通に…」



『確かに…』



息をそろえて、クラスメイト全員が共感した。


「う、う〜、わかったよ…じゃあ、また明日ね」


泣きそうな顔を浮かべながらも、我慢して、友達の元へ向かう渚。


ーー納得してくれたか、う〜ん、もうちょっと言葉を選ぶべきだったかな


僕としてはこれで最後にしたいと思っていた。

けど、流石に女の子を泣かせるのは少し心にくるな。


でも!!これも全ては僕の生活を守るため!!ごめん、渚さん。


明日、お弁当箱を返して、僕は本当に渚さんと関係を断つ。


「おい、五十嵐!!」


僕の名前を呼んだのはさっき、渚さんにめちゃくちゃ言われていた安曇くんだった。


「さっきは悪かった…」

「え、あ、うん」

「そして見直した…」

「はい?」

「お前がまさか、渚ちゃんの誘いを断るなんて、俺ならできねぇ、だが!!五十嵐!!お前はやってのけた」

「いや、別に褒めることではないと思うんだけど…」

「俺はもう渚ちゃんに嫌われちまった、五十嵐、同じ仲間として俺は……」


ーーなぜか、仲間扱い、てか馴れ馴れしい…


「よし、今日、一緒にご飯を食べるぞ!!」

「なぜ?」

「理由はご飯を流し込みながら、一緒に……」

「え、ちょっと、どういう…」


安曇くんは僕の手を引っ張っていった。


「よし!!いくぞ!!」

「ちょっ待って…」


僕は結局、安曇くんと夕ご飯を食べることになった。


「正志のやつ、どうしちまったんだ?」

「さぁ?渚ちゃんにきついこと言われて、おかしくなったんじゃね?」

「そうかも、はははは!!」


と正志と同じグループの人たちが騒ぐ。


「どうして、正志くんとは〜〜〜〜」

「ちょっと、渚?」

「どうしちゃったの?」


と渚はあの二人を見て、ギリギリと歯音を立てる。


渚さんとの関わりで僕の周りが変わっていく。


ーーねぇ、僕はあの時、どうしたらよかったの?


そして、安曇くんと一緒に、サインゼリアに行った。


「ここで食べようぜ」

「う、うん」


ーーまさか僕が、2年生になって、人と一緒にご飯を食べることになるなんて…。


サインゼリアに入って、席に座り、メニュー表を見る。


「五十嵐はなに食べるんだ?」

「僕は、スミパスタでいいよ」

「じゃあ、俺は……」


ーーってなんで、僕はこいつとご飯を注文しているんだ!!


無理やり連れてこられたとはいえ、絶対におかしいよ。


「よし、決まった、店員さん〜〜〜〜?」


安曇くんが店員を呼んだので、注文した。


「で、なんで僕を連れてきたの?」

「うん?ああ、そうだった、まず、改めて、ごめんと謝罪するよ」

「あ、うん」

「陰キャって言って悪かったな」

「それに関しては全然気にしてないけど、てかどちらかというと、安曇くんの方が、その、かわいそうというか」

「だよな〜〜〜!!!」


突然、安曇くんが泣きじゃくった。


「絶対に嫌われたよな〜〜ああ!!俺の初恋がぁ〜〜〜〜」


ーーはっ初恋!!案外、ピュア!!


「もう、終わりだ」

「まぁ〜まだ終わったとは限らないと思うけど、だって一度嫌われたからって、人間は変わるものって言うし……」

「でも、おれ…五十嵐のことを棚に上げて、俺は…」

「大丈夫だって、確かに今の印象は最悪だけど…」

「ぐさっ!!」

「それを治せば、きっと振り向いてくれるよ……多分」

「五十嵐……お前っていいやつだな」


安曇くんとは思えない、泣き弱っぷりに、驚愕を隠せない僕だった。


しかし、結構ピュアだったとは意外だ。


もしかしたら、あの性格もただ威勢を張っていただけなのかもしれない。


「よし!!今日は俺の奢りだ!!五十嵐!!じゃんじゃん、食べろ!!」

「あ、うん」

「いいよ、全然」って言おうと思ったが、めんどくさそうなので、奢られることにした。


ーーああ、それにしても新作の続き、読みたいな




その光景を見続ける謎の女子高生。


「渚ちゃんの誘いを断り、安曇くんと波人くんで一緒に夕ご飯っと」


メモ帳でカキカキと素早く、書き記す。


「それにしても渚ちゃんの誘いを断るなんて、波人くんのこと、見損ないました……しかし、渚ちゃんのあの表情、きっと諦めていないはず、しっかりと尾行せねば」














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