第64話 大魔法師の仲間について(2)
「で、その後に会ったのがレンベルト・・・レンなの。レイリーは知ってるの?」
「それが・・・どこの氏族かも知らないのよね。エルフの戦士が仲間になってたってのだけ伝わってるけど・・・」
「・・・そうなの。本当に愚かなの。あの愚鈍な一族は。」
レイリーの言葉に、何やらムスッとしてそう呟くルールー。
どういう事なのだろう?
「レンは、エルフの王族だったの。王位継承権第二位だったの。」
「ええ!?嘘でしょ!?そんな話聞いたこと無いわよ!?」
「多分で良ければ話すの。あのね・・・」
なんでも、出会った時、レンベルトさんは少数の兵と共に、人間の軍に追われていたそうだ。
実は、それはレンベルトさんの兄、つまり、王位継承権第一位の長男に嵌められたらしいという事を後から聞いたそうだ。
で、そこにたまたま通りがかったおふくろとルールーが助けたそうだ。
「あれは、助けたとかそんなレベルじゃなかったの。レンが最初、偶然遭遇したレナの事を、新手の敵だと思って部下の兵士だけは助けて欲しいって懇願したところ、レナはきちんと話を聞いて悪いのがニンゲンの軍だってわかると、『じゃあ、助けましょう。ルールー?これから使う魔法は、特殊な魔法だからきちんと見ていなさいね?』って言って、魔力をすんごく高めた後、『・・・
・・・ええ〜?
お、おかしい・・・本当に俺のおふくろなのか?
そんな容赦なかったか?
・・・本当におふくろなのか自信が無くなってきたんだが。
「ルールーも、レンも、レンの部下も、唖然としたの。で、レナはこう言い放ったの。『”敵には一切容赦しない事!心をくじき、二度と同じ事をさせない事!”これ、うちの家訓の一つなのよね。力を制御出来るように訓練して貰った時、徹底させられたのよ。』だって。」
おいおい、どれだけ物騒な家系なんだ!?
俺、そんなうちの子なのか!?
というか、誰に訓練して貰ったんだ!?
「その後は、もう一度レンと話をしたの。レンは他種族を見下さない感性をしてて、魔王討伐の為に各種族で協力し合うべきだってのを進言した事で、エルフの王族・・・つまり、父親や長男達に暗殺されそうになったって事を知って、レナはすっごく怒ったの。それまでの旅で、魔王の脅威を知ったレナは、帰る前に魔王を倒そうと思ってくれていたから。で、乗り込んだの。」
「・・・どこにぃ?」
ごくりと唾を飲んでリュリュが問いかける。
まさか・・・
「エルフの王族のところなの。」
「嘘でしょ・・・」
・・・行動力ありすぎだろ・・・
レイリーも、リュリュも表情が引きつってるじゃないか。
キョウカも唖然としているし。
「当然、まともに取り合ってくれないから、また襲ってくるのを全部叩きのめして謁見の間まで乗り込み、恐怖のあまり失禁している長男と、半泣きの王の前で、『あなた達、私やルールーなんかの別の種族を見下しているんですって?で、まだ見下せるのかしら?それとも・・・まだやる?』って告げると、全員が平伏して降参したの。で、『レンベルトから話を聞いたわ。彼はとてもまともな感性をしている。だから、私はレンベルトを応援するわ。もし、彼を排斥するのであれば、私の敵って事。私は、敵には容赦しないわ。』っていうのがダメ押しになって魔王を倒す事に協力する事になったの。」
・・・容赦ないなホント。
「だけど、だからこそ多分、魔王討伐後にレナがいなくなった事で、これ幸いとレンを排斥して、歴史から消したの。レンも、おそらくもう馬鹿らしくて付き合いきれないって思って、
「うわぁ・・・聞けば聞くほど、あの叔父様やボンボンを思い起こすわね。そんなのが王様だったなんて、ホント情けないわ・・・」
・・・なるほどなぁ。
レイリーが顔に手を当ててため息をついている。
「バカ鬼はその後に仲間になったけど、知ってるだろうから割愛するの。そして最後に、ヴィー・・・ヴィクトリアなの。ヴィーは人魚の里を救ってから、魔族領で出会ったの。最初は、同じ魔族にすら牙をむく狂暴な吸血鬼って噂もあって、警戒していたんだけど、いざ会って見ると・・・」
そこでルールーは嫌そうな顔をした。
なんだろう?
「一言でヴィーを表すなら・・・【愉快犯】なの。」
愉快犯・・・ねぇ。
「享楽主義とでも言うの?自分が楽しければそれで良い、ってスタンスなの。だから、仲間になってからも、よく生真面目なレンと口喧嘩してたの。」
へぇ。
「しっかし、それならよく仲間に入れたな?普通そんなの嫌がるんじゃね〜か?」
俺もキョウカに同意見だ。
しかし、ルールーは苦笑した。
「それが、違ったの。勝手について来たの。最初こそ、悪ぶってたし、レナだって仲間に入れるつもりはなかったの。ついて来たのだって、レンと力比べをして引き分けたから興味を持っただけって言ってたから。」
それがなんで仲間に?
俺たちの疑問はわかっているとばかりにルールーは少し微笑んだ。
「実はヴィーはすごく優しくて、ヴィーの言う楽しいには、どんな種族も関係無く、楽しく笑顔で暮らせるようにって意味があったの。・・・まぁ、実際悪戯も多かったけど。それに時間をかけて気がついたルールー達は、いつの間にかヴィーを仲間だって認めていたの。なんだかんだで見捨てたりはしなかったし、命がけで一緒に戦ってたし。レナ曰く、”つんが無いつんでれ”なの。」
なるほどな。
ん?
ちょっと待てよ?
レンベルトさんは、おそらくおふくろに鍛え直して貰って、ルールーと同じくらいに強かった筈だ。
・・・そのレンベルトさんに引き分けた?
ルールーにその事を聞いてみる。
「そうなの。ヴィーは強かったの。でも、それも当然なの。ヴィーは魔王に反抗するために、死にものぐるいで力をつけていたの。だから、逆に引き分けたレンや、更に強いレナに興味を持ったの。」
そういう事か。
以前に俺たちだけはルールーに聞いたのだが、魔王は前の神の手下で、世界を神の享楽に力を注げるように、生き物を殺しまくっていたらしい。
そんな性格の人が、魔王の手下になるわけがない。
魔王との戦いも、結末も既に聞いている。
おそらく、そこで何かがあって親父とおふくろは俺が居た世界に来たのだろう。
これには、リーリエも同じ結論に至っている。
そして今回の話を受けて、リーリエは更に一歩深く、親父達がこの世界から消えたのは、ここに来た時と同じように次元穴に巻き込まれたのではないか、という事を提唱していた。
まぁ、そこは良い。
それよりも・・・
「レンベルトさんとヴィクトリアさんは生きているのか?」
「・・・多分生きている、と思うの。例の化け物の脅威がある以上、二人の協力も視野に入れるべきだと思うの。もっとも、レンは追放されているみたいだから、探して会える可能性があるのはヴィーで、多分、前にルールー達が会った住処にいると思うの。ただ、ここから魔族領はかなり遠いから、計画が必要なの。レンはその後でも大丈夫だと思うの。」
ふむ・・・これは、きちんと考えないといけないかもなぁ。
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