第61話 今度こそ、約束を守る
俺たちは、ディアを目指して移動を開始した。
あの化け物を倒せたわけでは無いのに、何故か身体が行きよりも軽い気がする。
どうもそれは気のせいでは無く、帰路の方が速度を出せていた。
俺が疑問に思ったことを野営時にルールーが教えてくれた。
「あの化け物は倒せなかったかもしれないけど、あれと相対して生き延びたの。あの化け物は力の塊だったの。だから、そこから剥がれ落ちた力を吸収しているの。後、聖樹が消える時に、おそらくルールーとシノブに力を少し移したの。あの化け物から吸収した力を浄化する為に、なの。あの力は・・・あまりよくない力だったの。だから良かったの。」
・・・なるほど。
そんなに大きな恩があるのか。
聖樹には。
なら、この苗木はしっかりと育てないとな。
俺は改めてそう思うのだった。
行きは一週間ほどかかったが、帰りは1日短縮出来た。
俺達が到着した時には、どうもキョウカ達が帰った数時間後だったようで、みんなで俺のことを話している最中だったようだ。
ディアの広場にみんな集まっている所に俺たちが現れたから驚いていた。
「シノブ!無事だったのね!!」
「シノブン!うわぁ〜ん!無事で良かったよぉ!!」
「ルールーも無事か!本当に・・・良かったぜ・・・」
三人が泣きながら抱きしめてきた。
照れくさいが、それでもそれだけ心配かけたのは間違いない。
俺も三人を抱きしめ返す。
「心配かけたな。すまん・・・」
「・・・む〜っ!」
『うう・・・羨ましい・・・』
ルールーとリーリエから何か聞こえるがよくわからなかった。
俺とルールーは、あの場で何があったのかの詳細を話た。
まず、ここに居るルールーが大魔法師の仲間だと言うことにディアのみんなは驚いていた。
中には平伏しようとした者もいて、慌ててルールーが止めていた。
そして、詳細を語り、未だ奴は健在だという事で、レイリー達やエルフ達、鬼族の達は息をのむ。
もっと強くならねばな。
「すると、そこにいらっしゃる精霊族・・・英雄の一人、ルールー様も一緒にこの村で過ごされる、というわけですか?」
「その通り「ルールーはシノブと一緒に住むの!」・・・という事だ。」
「さようで。流石ですなシノブ様。」
「・・・何が?」
「いえいえ。なんでもありませぬぞ。かかか!」
村を任せているレガリアの問いかけに、ルールーにどうするか聞こうとしたら、被せるようにそう言われたので苦笑いしてそう答える。
そして、意味がわからない。
なんで流石なんだ?
にしても・・・何故だろう?
女性ばかり増えていくような・・・
「・・・ねぇ、リーリエ?これって・・・」
「あうあう・・・やっぱりそうだよねぇ・・・」
「なんつーか・・・すげぇなシノブ。物語の英雄だぞ相手は?」
『・・・仕方がありませんよ。その息子なのですから・・・でも、悔しい!!』
そして呆れたような、諦められているようなレイリー達の言葉が聞こえる。
どういう意味なんだ?
よくわからない。
「後で話し合いだなこりゃ。」
「そうね・・・にしてもシノブったら・・・」
「む〜っ!・・・でもルーちゃんなら一緒でも良いかな〜?」
『・・・そうですね。ルールーさんは仕方がありません。それに、私もあと一つ、ですから。』
「お!?そうなのかい!?そりゃ楽しみだねぇ!」
「ふふふ!ついに雌雄を決する時が来るのね!!」
「そ〜なの〜!?楽しみだねぇ!!」
「む〜っ!ルールーも仲間に入れるの!隠し事は無しなの!後、リーリエはルールーにさん付け無しなの!水臭いの!!」
女性陣が何やらきゃっきゃとしている。
俺が近づこうとしたら、何故かレガリアに止められた。
「女性のああいう時は、近寄ってはいけませんぞ。酷い目に遭いたくなければ。」
・・・そうなのか?
勉強になるな。
こうして、ディア・・・というか、俺の家に新たに居住者が増えた。
そう言えば、聖樹は俺の家の敷地・・・の結界の外に植えた。
あまり家に近くなると、大きくなった時に陽の入りが悪くなるかなと思ってな。
すると、驚くことに、翌日には俺の家から30メートルほどだった結界が、何故か聖樹を中心に100メートルくらいに展開され、家にもギリギリかかっており、実質かなり広がる事になった。
何故だろう?
そう疑問に思っていたのだが、リーリエが調べてくれた。
『この結界はサマーニャ様がサービスでつけてくれたものですが、聖樹がその結界を構成する【魔力では無い力】を吸って同調し、似たような力を有したようです。もともと聖樹は神聖なものでしたしね。このまま行けば前よりももっと成長するかもしれません。あと、少し忍様の家の結界とは違う所があるようです。聖樹付近の結界は、穏やかな心であれば野生動物でも入れるようです。また、ルールーさんが見たい光景が見られると思いますよ?』
とのことだった。
正直結界が広がるのは助かる。
それに、俺もおふくろが見た光景を見たいしな。
聖樹の結界付近での狩りは禁止とした。
俺たちは聖樹にお礼を言うために、お供物を持って並んだ。
聖樹もこれから一緒に暮らす仲間だからな。
「・・・今度は絶対に守るの。これはレナとした約束じゃないの。ルールーが聖樹とする約束なの。だからすくすく大きくなるの。前よりも立派な木になるの!」
ああ、そうだな。
これはルールーがする約束だけじゃない。
俺たちみんながする約束だ。
俺とルールーが聖樹に最後助けられたことはすでにレイリー達には話してある。
だから、俺と同じ気持ちでいてくれる筈だ。
表情がそれを物語っている。
「なぁ、みんな。強くなろう。何者にも、どんな困難にも勝てるように。」
「ええ、次はちゃんと戦えるように。」
「うん!負けないよ〜っ!!」
「ああ、そうだな。鬼族の誇りにかけてな!」
『・・・次は、私も・・・きっと・・・』
俺の言葉に、それぞれが決意の言葉を呟く。
「みんなきっと強くなるの!ルールーも頑張るの!」
ルールーが強い眼差しでそう言った。
親父、おふくろ。
俺、頑張るよ。
頑張って、強くなる。
親父やおふくろよりも強く!!
現在のステータス
氏名 九十九 忍(ツクモ シノブ)
種族 人間
性別 男
年齢 18歳
状態 良好
スキル
言語理解 状態異常耐性【中】頑強 アイテムボックス 加工 気配察知【強】気配遮断【中】体術【極】剣術【強】気功術 気闘術 魔力操作 魔纒術 鍛冶 風魔法【中】水魔法【中】火魔法【中】急所突き 覚醒 生活魔法 暗視 採掘 鬼神の血 魔法鍛冶 NEW解放
称号
転生者 祝福を受けし者 切り開く者 勇者の子 |大物喰い《ジャイアントキリング お人好し 水中の王者 愛の伝道師 災厄を超えしもの NEW聖樹の守り手と共にある者
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