閑話 ルールーの気持ち
「ルールー様、如何でしょうか?」
一人のエルフが代表してルールーに村に出来た畑の様子を見せるの。
ルールーの後ろにはエルフが何人も固唾を飲んで見守っているの。
「・・・ん。しっかりと肥料や魔力が混ざり込んでるの。この土なら、良い作物が出来るの。それにこの近辺には聖樹の加護が得られているの。農作物はかなり成長が早くなると思うの。聖樹から力を貰ったからか、聖樹の気持ちがなんとなくわかるの。聖樹もルールーを助けてくれたシノブが大好きみたいなの。頑張って力になりたいって思ってるみたいなの。」
「おお!真ですか!?精霊族の中でも大地を司るルールー様のお墨付きであれば間違いありませんな!流石はシノブ殿の発案した肥料を使用しただけはあります。それに、伝承でしかしらないあの聖樹に認められるとは!とんでもないお方だ。」
「シノブ殿はやはり凄い!」
「まったくだ!!」
にこにこと嬉しそうなエルフ達。
どうやら、シノブはかなりがっちりエルフの心を掴んでいるようなの。
この辺りは流石はレナの子なの。
「シノブは、この村でしっかりとやっているの?」
ルールーは、畑を見せに来たエルフ族の代表のレガリアにそう聞いてみたの。
すると・・・
「ええ、勿論でございます。シノブ殿がいらっしゃらなければ、我々はこの滅びた世界でこのようには過ごせなかったでしょうな・・・最初こそ敵対してしまいましたが、今は感謝の念が耐えませぬ。シノブ殿は儂をこのディアの村長にと仰られましたが、私はやはり、この村の代表はシノブ殿がふさわしいと思っております。だからこそ、儂は村長代行と名乗っておるのです。なぁみんな?」
「そうです!あの方は、最初見下していた我々を助けてくれたんだ!ずっとついて行くよ!」
「そうねぇ。私もホントはレイリー様みたいにいつも一緒に居たいんだけど、でも流石に許してくれないからね〜・・・でも、一回抱いて貰ったら、なし崩しで行けるかもしれないし?」
「またお前はそんな事を・・・まぁ、この村の自衛をしている者たちも、みんな鍛え直して頂けたしな。強さも人格も良く、それでいて聡明だ。女どもが放っておかない気持ちもわかるが。」
「いや、それよりもシノブ殿の凄いところは、なんでも出来るがそれ以上に自分が率先して仕事をされるところだと思うぞ!俺は、あの家作りの時に、誰よりも汗水垂らして仕事をされていたあの姿を尊敬しているんだ!それも、その時点ではまだ、軽んじて見ている者も多かった中、黙々とだぞ!?それを見て、頭を打ち据えられた気分だったんだ。尊敬の気持ちを抱くのに、種族なんて関係ない!それをしっかりと理解出来たんだ!」
「「「「「確かに!」」」」」
・・・ふむふむ。
流石はシノブなの。
彼らのとても慕っている気持ちが伝わってくるの。
それにシノブを褒められるとなんだかルールーも嬉しくなるの!
「ルールー様。次はこちらのお召し物です。・・・ああ、やっぱり似合いますね!可愛い・・・♡」
「・・・いつの間にこんなに作ったの?」
「この村にルールー様がいらっしゃった時、お姿を一目見て、色々な服が思い浮かんだんです!」
「そうだよね!すっごく可愛らしかったので、急ピッチで四人で頑張りました!」
「ええ!やっぱり素敵だわ!」
ここは、鬼族の機織りの二人と一緒に仕事をしているエルフの女の子二人がいる所なの。
今は、四人にきせかえ人形にされてるの。
「この村で満足出来ているの?」
「勿論ですとも!最初は正直戸惑いました。ですが、様々な種族と接する事で、今までに無い発想や風習なども知ることが出来ました。今は楽しくて仕方がありません。エルフ族や人魚族の方々も良くして下さっていますしね。」
「そうそう!それにこの機織り機と糸紡ぎ機!リーリエ様設計のこれ、すごく使いやすいんです!だから、今までに出来なかったような装飾や柄も出来るようになりました!」
「そうね・・・私も、鬼族の二人の仕事は凄いと思ったもの。勉強になるわ。」
「だよね〜。」
なるほどなるほど、なの。
「夫と住める家まで作ってもらえましたしね。」
「うんうん!」
へぇ。
この二人の鬼族は既婚者なの?
「・・・まさか、こんな風に色々な種族が暮らしている村で住むとは思いもしませんでしたが・・・キョウカの見る目は確かね。」
「そうだね。シノブ殿、格好いいもんね。あたしも夫がいなかったらやばかったかも!あの訓練見たでしょ!?あの無敵のキョウカに勝っちゃうんだもん!凄いよねぇ!!」
「そうそう。しかも、伝説の鬼の息子なんでしょ?あの災厄の鬼もやっつけちゃうし・・・確かに夫が居なかったら、私もやられてたかもしれないわね。」
・・・この二人が既婚者で良かったかも。
「エルフの女性の多くは未だに頑張ってるよ?」
「レイリー様達のガードを抜くのは難しそうですけどね〜。」
二人のエルフのそんな意見。
・・・危険が危ないの。
しっかりとシノブを見とかないと、なの。
「あら?ルールー様。巡視ですか?」
「そんな大げさなものじゃないの。ただの散歩なの。」
「そうなのですか?ゆっくりして行って下さいな。」
この人魚は、人魚族の女王であるララなの。
今は常駐している人魚の様子を見に来ているらしいの。
「この村はどうなの?」
「そうですね・・・まず、シノブさんとそのお仲間には本当に感謝をしておりますの。クラーケンから救っていただいた事もそうですが、種族の呪いを解いて頂いた事も。」
「・・・ごめんなの。ルールー達がもっと早く到着していれば・・・」
「いえ、仕方がありません。それでも、攻め込まれていた当時の人魚を救って頂いたのは、あなた様方なのですから、感謝しております。」
そうなの。
ルールー達が昔、人魚の里を訪れた時には、既に人魚族に魔王の呪いがかけられた後だったの。
魔王はもう離れてたんだけど、人魚の里を支配しようと、当時の魔王の軍勢が攻めていたの。
「話を続けますが、この村は良いですね。色々な種族が楽しそうに暮らしているのですもの。その中に人魚種もいる。大変幸せな事ですわ。それに、うちのリュリュもシノブさんの傍らにいられるのですから。」
嬉しそうにそう言うララ。
・・・色気が半端ないの。
おのれ・・・その胸はどうやったらそうなるの!?
ちょっと動くだけでぷるんぷるんなの!!
その胸は凶器なの!
絶対にシノブに触らせたらだめなの!!
「ルールー様?」
「む〜っ・・・はっ!?い、いや、なんでも無い、なの。・・・それよりも、今後人魚種はどうして行く予定なの?」
「ええ、一応既に動いておりますよ?この村の湖から人魚の里がある海まで続く川は、幸い深さは十分にあるので、現在、向こうにいる人魚達で、川を上流に向かって整地しております。いずれは、河口付近に里を移住するか、この湖に移住するかを考えておりますの。我々は水さえあれば、海水でも淡水でも平気ですので。」
「そうなの?」
「はい・・・それにその方が、種族的にも色々助かると言うか・・・存続の問題で。」
・・・む?
何か嫌な予感がするの。
「存続・・・とは?」
「ルールー様もご存知の通り、人魚種のみでは子をなせません。他種族の男性が必要です。ここであれば・・・ね?」
やっぱりなの!!
「まぁ、鬼族のおふた方は奥様がお見えになるとの事ですので、新しく来られた鬼族の方やエルフ族の独身の方かもしくは・・・シノブさんか。というか、ほとんどの人魚種は、シノブさんを狙っていますよ?かくいうわたくしも、リュリュも手が離れましたしそろそろ二人目を・・・」
「ま、待つの!シノブのそばにはもういっぱいいるの!」
「ええ、勿論存じておりますよ?わたくしの娘もその中におりますので・・・ですが、ルールー様を含めてまだ伴侶というわけでは無いご様子・・・ですから、シノブさんが望まれたら・・・うふ♡」
エマージェンシー!
エマージェンシーなの!!
昔レナに聞いたの!
こういう時そう叫べって!!
妖艶に微笑んでいるララを見ると、うかうかしていられないの!!
リーリエ!
さっさと現界するの!!
このままじゃえらい事になっちゃうの!!
そうなったら、取り決めなんて吹き飛んじゃうの!!
このままじゃ、シノブはこのお色気おばけを筆頭に、色々な種族にしゃぶり尽くされちゃうの!!
「そ、それじゃルールーはもう行くの!!じゃあねなの!!」
「あらあら・・・ルールー様、それではまた。・・・急がれた方が良いかもですよ?色々と、ね?」
「はぅぅぅ!?」
バレてるの!?
うわーん!
レナ!
聞いてなの!!
レナの息子はとんだ女たらしなの!!
このままじゃ、この村の子はみんなシノブの子になっちゃうの!!!
ルールーは急いでシノブの家に帰るの!
シノブにあんまり女の子に隙を見せないように物申すの!!
「ん?どうしたルールー?そんなに汗かいて。」
「シノブ!あのね!あのね!!・・・ふぁ・・・」
作業中のシノブがルールーに気が付き、ルールーに近寄って来て持っていた布で汗を拭いてくれたの。
「風邪引かないようにするんだぞ?」
「・・・うん♡」
ふぁぁぁぁ・・・シノブが頭を撫でる手、優しいのぉぉぉ。
ルールーはここに来られて幸せなの・・・
あれ?何か忘れてるような・・・なんだっけ?
・・・ま、いっか、なの!
シノブ・・・しゅきぃ・・・♡
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