第39話 火魔法を教わる

 キョウカが家に来てから10日がたった。


 今の所、大きな問題も起きておらず、むしろキョウカとは良好に思える。

 

 キョウカは、強者には敬意を持って接するようで、俺と戦った翌日にはレイリーと、その翌日にはリュリュと模擬戦をして、二人の実力に納得していたようだ。


 まぁ、結果はキョウカの勝ちではあったのだが。


 魔纒術を使ったレイリーとリュリュを上回る強さは流石の一言だった。


 だが、悔しがる二人にキョウカはというと、満足したようで、


「いや〜アタイ以外の鬼族ならほとんどレイリーとリュリュに負けるぜ?アタイはこれでも、鬼族の中でも最強に近いんだ。まぁ、例外は除くが、な。」


 との事。


 その例外とはなんだろうか。

 例外、と言った時のキョウカは苦虫を噛み潰すような表情をしていたが・・・

 

 ちなみに、キョウカは豪快な所もあるが、実は結構細かい事にも気がつく性格をしている事に気がついた。


「お〜いレイリー、これってどこしまうんだ〜?」

「あ、ごめんキョウカ。わたし仕舞い忘れてたみたい。ありがと。」


 だとか、


「おい、リュリュ!これ落ちてたぞ!」

「あっ!?ウチのパンツ!?ありがと〜キョーちゃん!」


 だとか、


「リーリエ、そろそろ鉄を補充しておいたほうが良いんじゃね〜か?」

『・・・そうですね。先日忍様が鍛冶仕事をされて減ってきていましたね。すみませんキョウカさん、採掘お願いできますか?』


 という具合だ。


 なんというか・・・姉御肌とでも言うのか。

 なんだかんだで、レイリーもリュリュも、そしてリーリエもキョウカを頼りにするようになっていた。


 そして、俺はと言うと、


「ふんっ!」

「くっ!?やっぱやるなぁシノブ!」


 よく、キョウカと組み手をするようになった。

 朝に軽く、そして魔法の訓練を終えてから本格的に。

 

 おかげで、スキルの【体術】が強から極になった。

 どうやら、強の上があったらしい。

 

 ああ、そうそう、火魔法も教えてもらい入手する事が出来た。

 ちなみに、レイリーとリュリュも使用する事は出来るようになった。

 レイリーは水魔法とおなじくらいだが、リュリュは火魔法と相性が悪いらしく、威力はあまりない。


 同じ様にキョウカも風魔法と水魔法を教わっており、風魔法はそこそこ使えるが、水魔法は相性が悪いようだ。

 そして、魔纒術と気功術も同じ様にキョウカに教えてある。

 習得にはあまり苦労していないようだった。


「これでも、戦闘種族だからねぇ。戦いに関係する事はね。」

 

 という事らしい。

 そして、また一つ強くなれた事を喜んでいたようだ。


 だがそれよりも、別の属性の魔法が使えるようになった事に驚いていたんだ。

 なにせ、この世界での魔法の常識としては、一人一系統のもの、という事らしいからな。

 だから、自分が他の系統の魔法を使えることになった事もそうだが、


「なんでシノブはそんな威力で色んな属性の魔法使えるんだ!?」


 と、俺の魔法を見てかなり驚いていた。


 ちなみに、これについてはリーリエが検証してくれていた。

 実はリーリエも気になっていたようで、ずっと解析を続けており、その解析が終わったのか、今日の夕飯時、つまり今教えてくれている。


『忍様は別の世界からこの世界に来る時に、魂が強化されており、生物として一段階階位をあげておられますから、魔法を使いこなすなど、造作も無い事でしょう。これは世界を越えた者はすべからくそうなるようです。後は、意図的に魂を強化した場合などもそうでしょうか。もっとも、普通は強化できませんが。』


 だとさ。

 俺にはよくわからんが、レイリーとリュリュ、そしてキョウカは納得していた。


「伝承にある、勇者と同じって事なんだねぇ。」

「なるほどね。そう考えれば辻褄が合うわね。確か、大昔にこの世界に来た女勇者は、全ての魔法を使いこなし、更に見たことない魔法を使ってたんでしょ?本人は勇者って呼ばれるのを嫌がって大魔法師って呼んでって言ってたらしいけど。そういう事だったのね。納得したわ。」

「ああ、鬼族にも伝わってるぜ?なんでもご先祖からの申し送りで勇者にはなるなって言われてたらしいな。映えある勇者になるなってどんな先祖なんだって話だが・・・その大魔法師に負けた伝説の鬼が、その大魔法師の仲間になったんだってな。ちなみに、その鬼が『ツクモ』って姓の鬼で、鬼族の中でも歴代最強だったらしい。ああ、そうそう、その鬼が持ってたんだよ。【鬼神の血】ってスキルをな。アタイが知ってる限り、そのスキルを持っていたのは3人だけだ。一人は伝説の鬼ツクモ、そこにいるシノブ、そして・・・災厄の鬼。アタイが言った例外って奴さ。」


 ほう、それが例外か。

 だが、なんでそんなにキョウカは憎々しげにしているんだ?


「アイツは・・・奴はまさに災厄だった。そしてまだ災厄は終わってねぇ。アタイの生涯の目的は・・・奴を滅する事なんだ。」


 俺たちが疑問に思っているのを察してか、そうキョウカは話始めた。

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