第4章 空前絶後のじゃじゃ馬
第32話 少しの変化
リュリュが正式に家に来て二週間がたった。
最初は何故か俺を避けていたように感じていたリュリュも、最近はそんな事も無く、以前と同じ・・・とまではいかないが、それでも逃げるような事は無くなってきた。
おかげで一つ困っている事がある。
それは、
『リュリュ!何度言ったらわかるのですかっ!!』
「え〜?でも〜ウチはもともと寝る時裸だったし〜?」
「あのねぇリュリュ?あんたこの間まで恥ずかしがってたでしょ?」
「う〜ん?でもねレーちゃん?なんか服着て寝ると暑いんだよ〜。」
『はしたない!はしたないわよリュリュ!女性が肌を見せるのは将来を共にする男性にのみです!あなたの気持ちがどうであれ、忍様があなたをそう思っていなければ駄目なのです!!』
「だって〜レーちゃん。」
「・・・まぁ、少しくらいならいい気もするけど・・・てゆ~か私も裸で寝たいんだけど。」
『レイリー!?あなたまで!?・・・そう言えばあなたも入浴の際に一緒にとかどうとか・・・ズルいですっ!!じゃなかった、はしたないですよっ!!』
「リーリエ、漏れてる漏れてる。」
「リーちゃん、可哀想にねぇ。」
『き〜〜〜〜〜っ!!あなたたち〜〜〜〜〜!!』
・・・あ〜、今日もか。
リュリュが本調子になってから、よく三人で口論になっているんだ。
いや、口論というかなんというか・・・おおらかなリュリュにきっちりとしたリーリエが注意し、それにレイリーが引っ掻き回すというか。
どちらにせよ、このままじゃいかんな。
「あ〜、なんだ、三人とも。一度落ち着け。」
『ですが忍様!!』
「まぁまぁ、リーリエ、そう興奮するなよ。ようは俺がしっかりと自制できれば良いんだろ?なんなら俺が別の部屋で寝れば・・・」
「それは駄目よ。」
「駄目だよシノブン?」
・・・なんでだ?
なんでレイリーとリュリュは反対するんだ?
『・・・うう、確かにそれは嬉しいですが、忍様にご配慮頂くのもなんだか悪い気が・・・でもこのままでは忍様の目の毒に・・・忍様がもし我慢出来なくなったら・・・いえ、それも忍様を信頼していないようで・・・う〜っ!』
そしてなんでリーリエは唸っているんだ?
・・・女性の気持ちはよくわからん。
「まぁ、よくわからんが、それでも今はもう朝だ。今日すべき事をやろう。」
何がどうあれ日々の生活は進んでいくのだからな。
リュリュ達人魚種のおかげで、海の幸も手に入りやすくなった。
かわりに、山の幸や調味料を工面する事になったが、それも三人いればなんとかなる。
正直、かなり助かっている。
最初は一人でなんとかしていたからなぁ・・・かなり豊かになった。
それに・・・なんとなくだが、リーリエも楽しそうにしている気がするんだ。
リーリエ、か・・・なんとなく、百合さんを思い出す。
もしかしたら、女神様が俺に気を使って、百合さんに似た疑似人格にしてくれたのだろうか。
まぁ、百合さんはあんな風に怒鳴ったり唸ったりする事は無かったがな。
いつもおしとやかで、それでいて芯があり、優しくも厳しい人だった。
少なくとも、俺と話をしていたあの頃は。
そんなあの人に俺は惚れたんだ。
あの人は本当に優しかった。
厳しい所もあったがな。
たまにしか会わない俺が無理をしていないか、だとか、負傷しているのを見つけられた時、心配そうにしながらも、気を付けるように注意されたものだ。
眉根を寄せてにじり寄って来る百合さんに、冷や汗を流したなぁ・・・
なんだか、凄く圧力を感じたんだよな。
あれに比べれば、熊や狼なんてどうって事無かったな、ははは。
『・・・忍様?』
「おぁっ!?リーリエか、な、なんだ?」
昔の事を思い返していたら、いきなり目の前にステータスがあってびっくりした。
『・・・なんだか、不穏な気配を感じたものですから・・・何かお考えで?』
「い、いや、なんでもない。なんでもないぞ、うん。」
・・・なんだろう。
めちゃくちゃ怖い。
この感じ・・・やっぱり似ているなぁ。
女神様もこんなところは似せなくても良かったと思うんだが。
『忍様?やはり・・・』
「いや!なんでもないんだ!それよりもリーリエ!今日も一日頑張ろうじゃないか!ははは!」
『・・・はい、頑張りましょう。・・・むぅ、なんだか怪しい・・・』
・・・誤魔化せたか?
おかしいなぁ、仮に百合さんに似せた人格だったとしても、こんな風に尻に敷かれるとは思えないんだが・・・いや、そうでも無いのか?
もしあのまま一緒になっていたと仮定する。
するとどうだろう?
俺が怪我をして帰ったり無茶をしたら・・・うん、こんな感じになりそうだ。
・・・あれ?
やっぱりリーリエって百合さんの心を参考に作られてるのか?
・・・いやいやまさか。
流石にあの女神様がそこまでするとは・・・まぁ、嫌では無いんだが。
どちらにせよ、リーリエを百合さんと同一視するのは、どちらにも失礼か。
それに、思い出は綺麗なままで良い。
百合さんはおしとやかで優しい、いつも笑顔が可愛い、それで良いじゃないか。
こんな風に頭が上がらないなんてのは男として格好悪すぎるだろう。
百合さんは可憐!リーリエは強い!百合さんとリーリエは違う!!
それで良い!!
うん、それで良・・・
『忍様?』
「っ!?さ、さぁ!今日の仕事を始めよう!みんな頑張ろう!」
・・・こわぁ。
声、めちゃくちゃ低かった・・・
この圧力・・・やっぱり似てる気がするなぁ。
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