閑話 リーリエの葛藤

 まずいです!まずいです!!まずいです!!!


 いつの間にかライバルがいっぱいです!!!!


 おかしい!

 忍さんには私が1番リードしていた筈なのに!?


 確かに忍さんは魅力的ですよ?

 男らしいですし、お優しいですし、知力もお持ちです。


 ですがっ!


 なんでこんな事に!?


 うう・・・リュリュまで忍さんを・・・


 リュリュ達人魚種のあり方には憐憫を覚えましたし、呪いが解かれた事にも安堵しましたが・・・ちょっと涙がちょちょぎれてしまいます。


 まぁ、幸いと言って良いのか、リュリュは『男女の愛』というものに振り回されているので、決定的な事はまだ起こらないと思いますが・・・でも、それも時間の問題です!


 ようやく私が顕現出来るスキルの一つを忍さんが手に入れてくれましたのにっ!!

 増えるの早すぎますよ!もうっ!!


 はぁ、それでも【覚醒】のスキルを入手頂けたのは幸いですね。


 これは、単純な効果としては気絶時に目を覚ましやすくなるだけなのですが・・・隠し効果があるのです。

 とあるスキル二つと組み合わせる事で生まれる効果・・・それこそが私が現界する事に必要なものなのです。


 ・・・余計な称号も入手しておられましたが。

【水中の王者】・・・これは良いのです。

 この称号は、水中戦闘に補正が付き、能力が向上するものですから。


 まずいのは・・・


 そう、【愛の伝道師】!

 あれはいりません!

 あれは、好意的な者からの愛情が得られやすくなるという悪魔の称号です!!

 忍様には必要ありませんでしたのにっ!!

 なんて事なのでしょう!!

 泣きそうです!

 

 ただでさえ、忍様は好かれやすいというのに!!





 はぁ・・・正直、思うところはあります。


 私は、忍さんを利用しているのでは無いか、と。


 ですがそれでも、私は忍さんと一緒に居たいのです。

 愛し合いたいのです。

 

 忍さんに触れたい。

 忍さんと『私』としてお話したい。

 あの、優しい眼差しで私を見て欲しい。


 私を1番最初に愛して欲しい!




 ・・・はぁ、なんてあさましいのかしら・・・私は。


 サマーニャ様に言われて覚悟していたつもりなのになぁ・・・

 

 自分の醜さ加減が嫌になります。

 ・・・こんな事では忍さんに嫌われてしまいます・・・


 レイリーもリュリュもとても魅力溢れる女性です。

 見た目も、性格も、生き様も。


 それに比べて私は・・・はぁ・・・


 安全な所にいて、肝心な時に役に立たず、ただ口を出すのみ・・・あの、愚かなエルフと何が違うのでしょうか・・・


「・・・リエ。リーリエ!」


 あっ!?

 いけません!!

 忍さんが呼んでいるようです!

 落ち込んでいる場合ではありません!!


『申し訳ございません忍様。』

「・・・どうした?何かあったのか?」


 忍さんが私を気遣ってくれています。

 ・・・今の私はただのステータスに過ぎないのに・・・


『いえ、なんでもありません。どうされましたか?』

「・・・」


 私が平静を装って答えます。

 忍さんのフォローが私の役目。

 困らせたりしたら申し訳がたちません。


「なぁ、リーリエ。」


 そんな私に忍さんは心配そうな表情をされました。


「君は俺のステータスだ。そして、女神様が俺のために疑似人格を与えてくれた。であれば、君の悩みは俺の悩みと同じだろう?だから・・・何かあるならきちんと言ってくれ。俺は君に悩みをかかえ、辛い思いをさせたくないんだ。」


 ・・・胸が切なくなります。

 ああ・・・この人はどれだけ優しいのか・・・

 仮初の人格だと認識している私にさえ、このような優しさを与えてくれるなんて・・・


『・・・忍様、私はレイリーやリュリュのように戦えません。お世話をする事も出来ません。・・・女性として忍様を悦ばせる事も出来ません・・・そのくせ、偉そうに忍様に助言などと口出ししております。・・・私は、あなたの役に立っているのでしょうか・・・?私は必要でしょうか・・・?』


 ポツリと言葉が出ました。

 言った瞬間ハッとします。

 私は忍さんになんてみっともない真似を!!


 すぐに謝罪しなければ!!


 慌てて謝罪の言葉を口にしようとした私。

 ですが、そんな私に忍さんは驚きの言葉を口にされました。


「リーリエ、俺は君に感謝している。」


 思わず口をつぐみます。

 忍さんは柔らかい口調で続けられました。


「君は、右も左もわからなかった俺に、その知識でしっかりと補助してくれている。俺には君が必要だよ。だからそんな事は言わないでくれ。」

『・・・』


 思わず、目頭が熱くなります。

 忍さん・・・

 

「それになんというか・・・君と話していると心が暖かくなるんだ。こう・・・懐かしい気持ちというか、忘れてはいけない何かを思い出させるというか・・・だから、これからも君に居て欲しい。いなくならないで欲しい・・・ずっと俺の傍に居て欲しい。」


 頬に温かいものが流れるのを感じます。

 視界が歪んでいます。

 ああ・・・忍さん・・・私はあなたを・・・


『・・・勿論です忍様。私はいつでも、いつまでもあなたのお傍に。例え命を終えても・・・生まれ変わっても。』

「はは!ああ、そうだな。よろしく頼むよ。頼りにしているよリーリエ!」


 心の底から身体が暖かくなります。

 ああ・・・やはり私にはあなたしか居ない。

 

 私が心の底から愛しているのはあなただけ。

 私の全てがあなただけのものです。


 愛していますよ、忍さん。


『おまかせ下さい!』


 例え、現界出来なかったとしても、私はずっとあなたを愛し続けます。

 ずっと支えていきます。


 それが私の願いなのだから。



****************

これで第三章も終わりです。

いかがだったでしょうか?

次は第四章です。

次はどんな種族でしょう?(笑)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る