閑話 アダマス氏族からの伝言
リュリュが来て5日がたったわ。
最初はシノブに照れてあまり近づけなかったリュリュも、少しづつ慣れて来ているみたい。
・・・はぁ。
なんでこんなに他の女の心配しなきゃいけないのかしら・・・でも、リュリュは悪い子じゃないから、ほっとけないのよねぇ。
リーリエもおんなじみたい。
ま、いっか!
仲良くやれそうだし。
それにしても・・・シノブも鈍感よねぇ。
とっくの昔にリュリュ達の呪いは解けているってのに、まだ愛を教えてあげないとって悩んでいるんだもんね。
正直、悩んでるシノブは可哀想だし、教えてあげたい気もするんだけど・・・リュリュが恥ずかしがっているから言えないのよねぇ。
どうしたもんかしら?
・・・それは追々考えるか。
今日は、リュリュと一緒に、前に魔物化したムカデを倒した湖に来ているの。
たまに確認に来ないと、元同胞が何を仕掛けているかわかんないからね。
・・・はぁ、こっちもため息が出るわね。
あれで自分たちが間違っているって気がついてくれると良いけど。
そんな時だった。
「あれぇ?ねぇレーちゃん、なんかあるよぉ?字が書いてある。」
リュリュのそんな声。
手分けして周囲を伺っていたんだけど、小走りにリュリュのいる所に向かった。
「木板?・・・これは・・・」
それは驚いた事に、アダマス氏族からの私あての伝言だったの。
木の板に魔力で文字が書いてある。
魔力で書いた字は、数ヶ月消えないからね。
簡単に目を通して更に驚いたわ。
そして、すぐにそれを持ってシノブの所に戻ったの。
相談する為に。
「へぇ、それは驚きだな。」
「そうなのよ。どうしようか?」
「そうだなぁ・・・」
シノブの家ですぐにシノブに相談したんだけど・・・木板にあった伝言の内容は、やっぱりシノブやリーリエも驚く内容だったの。
それは、
『レイリーの叔父親子が追放されていたなんて。』
リーリエの呟き。
そう、あの後、どうも氏族内で話し合いが行われたみたい。
実力を大きくあげた私と、強者であるシノブの庇護、もしくは、協力体制を築くべきでは無いか、という者達と、叔父親子の下賤なニンゲンなどの協力などいらないってもの。
最初は叔父親子の方が優勢だったみたいだけど、あの場にいたエルフの戦士達の証言と、あの時の叔父親子の出した指示を暴露すると、すぐに天秤が傾いたらしいの。
でもまぁ、そりゃそうよね。
もし私たちを排除しようとしても、あの場にいたエルフの戦士達が私たちに敵うわけが無いし、そもそも、自分達だけ安全な場所にいて、戦士たちに死ぬような指示だけ出していた叔父達の醜悪な場面を見ている。
それを
で、それを聞いた他の同胞が激怒したらしいわ。
だって、そうよね?
エルフの戦士達の家族だってその場に居たんだから。
結果、最後まで
それに付き従うのはほんの数名だったらしい。
最後まで聞き分けの無かった叔父は、武器を持った戦士達に追われるように逃げ出したんだってさ。
あの、バカ息子なんて半べそかいてたらしい。
情けない・・・
で、元同胞達に対してなんだけど・・・正直、複雑なのよね。
だって私は、全てを捨てるつもりであの対応をしたんだからさ。
でも、やっぱり情が無いわけじゃないの。
あの叔父親子がいなくなったのなら、残る同胞は後30人前後。
中々苦しい生活をしているに違いないもの。
私は、シノブの家にいるから随分といい暮らしをさせて貰っているし・・・
「・・・レイリー、君はどうしたい?君のしたいようにすればいいよ。協力するでもいいし、君が氏族長に戻っても良い。まぁ、その場合は寂しくなるから、出来れば定期的に会合でもしたいところだが。」
そんな私を見かねてか、シノブがそう言ってくれた。
シノブを見ると、慈しみが溢れる表情でこちらを見ていたわ。
・・・やっぱり、シノブは優しいなぁ。
大好き・・・
「・・・いいえ、私はもう、レイリー・ツクモだもの。私の居場所は、シノブの傍よ。でも、協力はしてあげたい。」
私がそういうと、シノブはにっこりと笑った。
「そうか。なら、適した住処と定期的に食料を渡そう。リーリエ、可能か?」
『そうですね・・・レイリーの話では、30人ほど人数だそうですし、今はこちらにリュリュも居ますから可能でしょう。レイリーの為にも、助けられるなら助けてあげましょう。』
「リュリュも、それでも良いかな?」
「うん、良いよぉ。レーちゃんの元家族でしょう?助けてあげよぉ。ウチも頑張って食べ物とって来るからさぁ。」
「ありがとう。」
みんなの言葉に、心が暖かくなる。
本当に、みんなに出会えて良かった!
こうして、私は別の木の板に伝言を書き、元のところに置いておいたの。
こちらから供出出来るものを書いて、20日に一度程取引する事になったわ。
取引にしようと言ったのは私。
一方的に支援するのは間違っていると思ったから。
こちらに依存されても困るしね。
それと、比較的に安全な住処を作る協力をする旨も書いておいた。
とりあえず、あと7日程で、夜を照らす星・・・シノブとリーリエは『月』って言ってたけど、月がまん丸になる日が来るので、その時に落ち合う旨を書いておいたわ。
でも、それがあんな事を引き起こす事になるとは夢にも思わなかった。
まぁ、それが分かったのはずっと後なんだけどね。
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