閑話 リュリュ、愛に振り回される
「シ、シノブンじゃあ行って来るねぇ!」
「あっ、ちょっとリュリュ!?」
ウチが正式にシノブンの家にお邪魔させて貰って3日目。
朝食後、ウチはシノブンの家を飛び出したの。
ウチの仕事は、山菜集めや狩り。
普通に出かけようとしたんだけど、バッタリシノブンと会って慌てて飛び出したんだぁ。
「あ〜・・・良いわよシノブ。私が一緒についていくから。」
「すまんレイリー・・・にしても、俺、何かやったか?」
「『・・・はぁ。』」
そんな声が聞こえて来る。
う〜・・・どうしてこうなっちゃったのぉ!?
ウチはその原因を思い返したの。
そう、あれはクラーケンを討伐した時の事だったのよねぇ・・・
ウチはクラーケンに吹き飛ばされて意識が朦朧としているシノブンを守るために、クラーケンの前に立ちはだかったの。
必死に障壁で守ってたんだけど・・・クラーケンは強くって、ウチ、もう耐えきれないって思ったんだよねぇ。
でも、そんな時に、
「うおおおおぉぉぉぉ!!!」
そんな声と一緒に飛び込んで来たシノブンが、ウチに迫る触手を切り飛ばしちゃったのぉ。
ウチはその直前のクラーケンの攻撃で、もう駄目かな?って思ってたから、それで気が抜けちゃったんだよねぇ・・・
全身から力が抜けて、そのまま倒れ込みそうになったウチを、シノブンが抱き支えてくれたんだけど・・・
「すまん、リュリュ。そちらの人魚の
ウチのほっぺたに手を添えて、そう言って悔しそうな表情で言うシノブンを見た瞬間、胸がびっくりするくらいドキンッ!!ってなったのぉ!!
で、その後に、怒った表情でクラーケンを睨みつけたシノブン・・・何故か、身体が熱くなって、シノブンがキラキラして見えて・・・
自分でも戸惑ってたんだけど、その後のシノブンが凄すぎてびっくりしちゃった!
クラーケンを押し始めたのよぉ!
いつまでも見ていたいって思っちゃったぁ。
でも、そんな場合じゃ無かったのよねぇ。
シノブンに一斉に触手が群がったのを見て、すぐに助けなきゃって思っちゃった。
だから、ウチは回復も半分位に思わず飛び出しちゃったんだよねぇ・・・
横合いから、おんなじような状態のレーちゃんが飛び出してきたから、二人で頷き合ってシノブンの援護をしたの。
シノブンの怒涛のような攻撃をみんなで補助して、目に見えてクラーケンが弱っていくのが分かったの。
でも、そんな
なんとか助けようと、レーちゃんと一緒にシノブンが傷をつけた急所を攻撃したら、シノブン、自力で触手を引きちぎっちゃったのよぉ!!
凄い!
それにドキドキする!!
そして、その後なのっ!!
なんか凄い光る技でクラーケンを貫いたシノブンが、ニヤって笑いながら更にアクアボムで追撃したんだけど、その衝撃でシノブン、弾き飛ばされちゃったんだよぉ。
で、それが止めになったみたいでクラーケンが沈んでいったんだけど、シノブンもそれを見届けるように視線を送りながら、目が閉じていくの!
ウチ、それを見た瞬間、シノブンが死んじゃうんじゃないかってすっごく悲しくなって、シノブンを抱きとめたんだよねぇ。
そしたらシノブン、自分はボロボロなのに、ウチを元気づけるように、ニコって笑ったの!
その時だよぉ!
心臓を鷲掴みにされたみたいにギュッってなったの!!
そしたらね?
「リュリュ!?あんた光ってるわよ!?ナニソレ!?どうなってんの!?」
レーちゃんの声が聞こえて来た。
でも、ウチはそれどころじゃなかったの。
これが何か、本能で理解できたからねぇ。
ウチから出る光は、塊になって全ての人魚に降り注いだんだぁ。
後から聞いたけど、ママにも光は届いたみたいで、これがなにかすぐにわかったんだってぇ。
そう、この光は、呪いが解けたものだって事が。
で、ウチも気がついたの。
ウチは、シノブンを愛しちゃったんだって。
戦いの後、シノブンを丁重に手当して、部屋で眠るシノブンを見ていたんだけど、いつまで見ていても飽きないの。
ぐっすりと眠るシノブンの寝顔を見てるだけで幸せになってくるんだぁ。
それでやっとシノブンやレーちゃんやリーちゃんの言ってた事が分かったの。
愛する人としかそういう事をしちゃ駄目だって。
愛する人以外としちゃうのは悲しい事だって。
だって、ウチはもうシノブン以外の男の人に、身体を触られたくないから。
変な目で見られたくも無いから。
で、ずっとシノブンを見てたんだぁ。
ママが途中呼びに来たけど、断っちゃったぁ。
で、レーちゃんとリーちゃんが一緒にいたんだけど、その時に気がついちゃった。
「ねぇリーちゃんって、本当は【能力の窓】じゃないんでしょぉ?」
ウチのその言葉で二人は驚いてたんだぁ。
そりゃわかるよねぇ。
だって、本人の意識が無いのに、【能力の窓】が出てるわけがないんだしさぁ。
『・・・はい、私は、とある事情でステータスを装っているのです。私は、以前忍さんに関係のある女でした。そして・・・今でも忍さんを愛する女です。今は、もう一度忍さんに生身で会う為にこうしているのですよ。』
「やっぱりねぇ。」
「まさかリュリュが気がつくなんてね。で、リュリュ、あんたもしかして・・・」
「うん。ウチ、シノブンの事、好きになっちゃったぁ。クラーケンを倒した時の光はそういう事なの。」
『・・・はぁ。やはりそうでしたか。で、リュリュさんはどうするのでしょうか?』
リーちゃんがそうおそるおそる聞いてきた。
レーちゃんも固唾を飲んで見守っているなぁ。
ごめんねぇ二人共。
もう、決めちゃったんだぁ。
「ねぇ、リーちゃん。これからウチのことリュリュって呼んでぇ?多分、これからなが〜い付き合いになるんだからさぁ?」
「『・・・はぁ。』」
ウチの返答に、二人はため息をついた。
それがどういう意味か、分かったからだよ。
「ま、良いわ。リュリュ、これからよろしくね?仲良くしましょ?」
『・・・仕方がないですね。それに、リュリュの事、嫌いでは無いですから。仲良くしましょうね。・・・でも、私がそちらに行くまでは、いやらしい事は禁止ですからね!!』
「あはは。」
『あはは、じゃありません!!絶対駄目ですよ!友達でも許しません!!』
「リーリエったら厳しいんだから・・・ちょっとなら?」
『レイリー!駄目ったら駄目!ズルいもん!!』
「「あははは」」
うん。
二人とも、仲良くやってけそうねぇ。
だってお友達だもん!
同じ人を愛する・・・ね!!
・・・なんて思ってたのにぃ。
なんでこうなるのぉ!?
「リュリュ・・・あんた照れすぎよ。あの積極性はどうしたの?」
ウチを追いかけてきてくれたレーちゃんが呆れながらそう言うの。
「ふぇ〜ん!レーちゃ〜ん・・・ウチ、こんなの初めてだもん・・・どうしたら良いの〜!?」
ウチはレーちゃんに抱きついて泣きつく。
そう、ウチはシノブンの顔を見ると、真っ赤になってしまうんだよぉ!
こんなのどうしたら良いの〜〜〜!?
それに、今までの事もたまに考えちゃうんだよぉ!
シノブンの前で裸になろうとしたり、シノブンにおっぱい見られたり・・・あれ・・・?ウチ、もっと凄い所をシノブンに見られてるような・・・!?
「うひゃああああああぁぁぁぁ!?」
恥ずかしい思い出に顔が熱くなってしまう。
「やれやれ・・・頑張って慣れなさい・・・はぁ、なんで他の女の応援をしなきゃいけないのかしら・・・」
「レーちゃ〜ん・・・」
「はいはい、ま、いっか。友達だもんね!」
レーちゃんに頭を撫でられながらそう言われるウチ。
うう・・・早いとこ、直さないとぉ〜〜〜。
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