第31話 宴とその後

『それでは皆さん、人魚の里を救ってくれたシノブさんとレイリーさんに感謝をして!乾杯!!』

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


 『拡声』の魔法を使って号令をかけたララさんの声に合わせて、盛大にコップを掲げて叫ぶ声。

 勿論、俺も片腕を掲げている。


 意識を取り戻した翌々日、宴が始まった。

 俺はララさんのいるテーブルについており、両脇にリュリュとレイリーが座っている。

 リュリュはまだちょっと距離があるが・・・こないだよりかは近いな。

 しかし、なんで突然距離を取るようになったのだろう?

 まぁ、良いか。

 なにせ、テーブルの上には沢山の海の幸が!

 美味そうだ!!


 おっ?これは?


「それはリーちゃんが教えてくれたイカの調理法で作ったのよぅ?」

『忍様がアイテムボックスで油や味噌、醤油を持っていてくれて助かりました。イカの揚げ物、イカの刺し身、煮込み・・・沢山ありますからね?』

「揚げ物や煮込みは人魚種では一般的では無いみたいね。まぁ、海の中だし仕方がないけどさ。私が作ったのよ?食べて見て?」

「ウチも手伝ったの!食べてみてねぇ?」

「ありがとう、リーリエ、レイリー、リュリュ。頂きます。どれ・・・美味い!!!!」


 おお・・・!これは美味い!!

 刺し身は提供した醤油がズバリ合う!!

 それに揚げ物も美味い!

 煮込みも最高だ!!


「・・・これは確かに美味ですね。人魚は基本海藻を食べたり、生のお魚を食べたりする程度ですから・・・ふむ、これは・・・こうすれば、取引が・・・」


 ブツブツと何かを考えながら色々な料理を食べるララさん。

 視界には、様々な人魚達が舌鼓をうっているようで、時々歓声が聞こえる。

 

 ちなみに、今はこの広場全てが空気に包まれており、人魚達は下半身を変化させて立っている状態だ。

 俺たちのために、申し訳ない。


「シノブ?あーん。」

「れ、レイリー、俺は自分で食べられるから」

「駄目よ?お世話するって言ったでしょう?」

「むっ・・・だが・・・」

『ぐぎぎ・・・忍様、レイリーの言う通りにして下さい・・・くぅっ!悔しい・・・!だけど、こうしないと多分・・・うう・・・忍様!さぁ!!』

「う・・・わかったよ。」


 なんでそんなにリーリエが情緒不安定なのかわからんが、だが、怖いので言われた通りにする。

 ・・・やはり、美味いな。


「う、う、ウチは・・・うう・・・」

「あら?良いのリュリュ?じゃないと・・・」


 ん?ララさんが何故か広場を見ると、じ〜っとこちらを見ている人魚達がいるが・・・なんだろう?狩人みたいな目をしているが・・・


「・・・くぅ!あんなに!?そりゃみんなもあの時見てたもんね・・・は、恥ずかしいとか言っていられないねぇ!よしっ!シ、シノブン!はい、あ〜ん!」

「りゅ、リュリュまでか?だが・・・」


 突然距離を詰めて来たリュリュに戸惑う。

 しかし、


『ギリギリギリ・・・忍さん!早くリュリュの言う通りに!!』


 リ、リーリエ!?

 なんだか怖いんだが!?

 それにいつの間にかリュリュを呼び捨てになっている。

 まぁ、打ち解けるのは悪いことでは無いが・・・

 

「シノブン!早く!」

「わ、わかった・・・ああ、美味いな。ありがとうリュリュ。」

「・・・うん。」


 リュリュが真っ赤になって微笑んでいる。

 う・・・これは可愛い・・・ってイタタタ!?


「シノブ!にやけてないでほら!あ〜ん!」

「レ、レイリー!?なんで耳を引っ張るだ!?食べる!食べるから!」

「うふふ・・・あら、あの子達悔しそうねぇ。リュリュ?こうやってちゃんと周知しないと、多分一瞬で持っていかれるわよ?」

「う、うん!シノブンは渡さないもん!レーちゃん!リーちゃん!頑張ろうねぇ!」

「そうね。狼がいっぱいだもの。子兎は保護よ。」

『籠に入れて出さないようにしましょうね。』


 ゾクッ!!


 な、なんだ!?

 三人の言葉に背筋に冷たいものが走った。

 意味がよくわからんが・・・狼とか子兎とか、どういう事なんだ?


「ほら、シノブ?」

「シノブン!こっちもぉ!」

「ちょ!?もうちょっとゆっくりと頼む!食いきれん!!」

『・・・う〜!早く私も・・・でも、ようやく一つスキルが・・・後二つ・・・忍様!早くして下さい〜きぃぃ!やっぱり悔しいぃぃぃ!私だって!!私だって!!』


 次から次へと食べ物を口に運んでくれるレイリーとリュリュ、そしてリーリエが怖い・・・












 宴の翌日、俺達はこの里を出る事にした。

 ララさんにはあらかじめ言ってあった。

 土産に、大量な海の幸を貰ったので、アイテムボックスに入れてある。

 勿論クラーケンもな。


 実は戻る為に、川を遡上しなげればならないが、どうしたものかと悩んでいたのだが、そこはララさんからリュリュが魔法を伝授されて事なきをえた。

 その魔法は、人魚の王族の固有魔法で解決したのだ。


 なんでも、『アクアワールド』で繋いだ空間は、本人に限り記憶されているらしい。

 で、『リ・アクアワールド』という魔法で、再度繋げる事が可能との事だ。

 リュリュは出発の時、あの生け簀代わりの岩の所で『アクアワールド』を使用しているので、ララさんを連れて一度戻り、ララさんにもあの場所で『アクアワールド』を使用して貰い、あそこを生け簀兼人魚種との連絡所にするという事になった。

 俺達に用がある時はあそこに石版を残して貰い連絡を取り合う、というものだ。

 また、ララさんから醤油や味噌、油の提供をお願いされたので、それの取引をする事にもなったのだ。


 対価は海の幸。


 まったく問題は無い。

 むしろ、助かる。


 いずれは、自宅の敷地内のどこかに繋げるようにしたいが・・・今のところはまだ考えつかないので保留だ。

 そのうちなんとかしたい。

 結界が広げられれば良いのだが・・・


 リュリュにも、簡単に実家に帰れるようにしてあげたいからな。


 そう、リュリュは俺たちに着いてくる事になった。

 今度は正式に住人として。

 ララさんからもお願いされたし、それ以上に強いリュリュの意思に押された。


 いつの間にかリーリエとレイリーも納得していたしな。


 まぁ、リュリュには『男女の愛』を理解して人魚種への呪いを解いて貰う必要もあるしなぁ。


「・・・まだ気がついてない。どれだけ鈍いのよ。」

『仕方がありませんよ。なにせ、忍様は生前はまったく女っ気が無かった筈ですから・・・私以外に・・・はぁ・・・なんでこんな事に・・・』

「シノブンったら・・・でも、ウチばっかりドキドキするのは悔しいから、頑張ってドキドキさせよぅっと。ね?レーちゃん、リーちゃん?」


 何か、ボソボソとやっているリーリエ達。

 ていうか、リーリエ、本当に自由だなぁ・・・俺、ここの所ステータスオープンって言ってないんだが・・・いつの間にかいるし。


 そんな三人?をララさんはクスクス笑いながら見ている。

 俺はララさんに向き直った。


「娘さんをお預かりします。必ずお守りしますから。」

「うふふ、大丈夫ですよ?シノブさん達を信頼していますから。それに・・・いえ、これ以上は野暮ね。ですが、人魚種を代表して、シノブさん、本当に感謝していますよ。これは、感謝の印です。」

「いえ、感謝なんて・・・って!?」


 チュッ


「「『ああ〜っ!?』」」


 ララさんが俺の頬に口づけをした。

 そしてそれを見咎めた三人が一斉にこちらに近寄ってくる!


「何隙を見せてるのシノブ!!」

『そうですよ!忍様!反省して下さい!空よりも高く海よりも深く!!』

「ママ!何してるのぉ!!シノブン!今上書きするからねぇ!!」

「『こらっ!リュリュ!!』」


 はは・・・は・・・随分とまぁ、賑やかになったもんだ・・・

 俺はそこら中をつねられながらそれを苦笑して見るのだった。


 まぁ、寂しいよりはずっと良い、よな?







現在のステータス

 氏名 九十九 忍(ツクモ シノブ)

 種族 人間 

 性別 男

 年齢 18歳

 状態 疲労(中)

 スキル 言語理解 状態異常耐性【中】頑強 アイテムボックス 加工 気配 察知【弱】気配遮断【弱】体術【強】NEW 剣術【中】NEW 気功術 気闘術 魔力操作 魔纒術 風魔法【中】NEW 水魔法【中】NEW 急所突き 覚醒 NEW

 称号 転生者 祝福を受けし者 切り開く者 **** |大物喰い《ジャイアントキリング お人好し 水中の王者 NEW 愛の伝道師 NEW

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