第22話 予想外の出会い

「さて、ちょっとまた湖に行ってみるか。」

「わかったー!」


 俺とレイリーは自宅から湖に移動する。

 大量の水を確保しがてら仕掛けを回収するためだ。


 あの湖の水は、湖の割に綺麗だからな。

 本当は川の方が良いのだろうが、飲料用じゃなければ別に問題無い。

 それに、煮沸しゃふつして濾過すれば湖の水でも飲めるだろうし、用途はある。


 先日の魚は、肥料や調味料に化けたため、食べた量は実は少量だった。

 幸い、俺にはアイテムボックスがあるから、賞味期限を気にする必要は無いのだ。


 これは、あの時魚の処理が終わった後にリーリエに聞いたのだが、実はアイテムボックスには命ある生き物が入れられない代わりに、時間は経過しないらしいのだ。

 ということは、魚を〆て入れておけば、いつでも魚が食べられるというわけだ。


 ・・・本当は、海の魚を食べたいのだがな。

 前に住んでいた所も山の上だったので、あまり縁が無かったのだ。

 両親の生前、どこからか入手して来たときがそこそこあって、その旨さに驚いた事は今でも覚えて・・・ん?そういや親父達はどこから海の魚を入手して来たんだ?


 海までかなり離れていると聞いていた気が・・・だが、幼少の頃にそんなに長期間お親父達が不在の時は無かったような・・・本当に、一体どうやったんだろう?

 百合さんの家の商家でも、海の魚を取り扱った事は、俺が記憶している限りでは無いし。


「シノブー!?もう着くわよ〜。」

「あ、すまん。」

「珍しいわね、ぼ〜っとしているなんて。」

「まぁ、たまにはな。っと着いたか。」

「かなり短縮出来るようになったわね〜。」

「ああ。」


 レイリーの言う通り、気功術や魔纒術の習熟が進めば進むほど移動速度が向上する。

 俺たちは、魔ムカデを討伐した事もあり、かなり強化されているようで、気や魔力の総量そのものも増えているし、日々の訓練でコントロールも向上していた。

 今なら、長距離走なら気功術を覚える前の全速力くらいの速さで、一時間以上は走り続けられるかもしれんな。

 そのうち、もっと遠くを散策してみても良いかもしれん。

 上手く行けば海まで行って、海の魚が手に入るかも・・・

 っと、いかん、また他事を考えていたな。

 やる事はさっさとやらねば。


「さて、まずは水を確保するか。リーリエ、どうすれば良い?」

『手のひらを水につけ、アイテムボックスに水を入れるイメージをして下さい。』

「なるほど・・・こうか?」

『この方法なら水を大量に確保出来ます。まぁ、他のゴミなども吸い込んでしまうかもしれませんが、後ほど捨てれば良いでしょう。』


 言われた通りにしてみると、凄い勢いで水に流れが出来た。

 多分、アイテムボックスに流れ込んでいるのだろう。


 そんな俺をレイリーが関心したように見ていた。

 

「やっぱり便利ね〜。ねぇリーリエ、アイテムボックスって私では覚えられないの?」

『できなくはありません。その為には時空間魔法を・・・忍様!!』

「おわっ!?」


 いきなり水中から手を握られ驚く。

 そこまで強い力では無いがかなり驚いた。

 女の手か!?それとも子供!?


「シノブ!?なにそれ大丈夫!?」


 レイリーも弓をつがえた。

 俺はレイリーを制止する。


「待てレイリー!何かわからんが力は弱い!このまま引き上げる!!」

「分かったわ!じゃあ、、すぐに動けるようにしておくね!」

「ああ、行くぞ?3・2・1」


 俺はカウントダウンしその手を掴み返し、


「ふんっ!!」


 一気に引き上げた。

 すると大きな影が水中から飛び出て来て、


「ひゃああああぁぁぁぁん!?・・・ぐへぇ!?」


 間の抜けた声が響く。

 そして、引き上げたその姿を見て驚く。


 レイリーも唖然としており、リーリエも言葉も出ないようだ。 

 そして、それは俺も同じだった。

 それも仕方がないだろう。


 俺の眼前で蠢く生き物。

 叩きつけた地面にビチビチと大きな尾が跳ねる。

 その尾は綺麗な桃色の鱗に覆われていた。


「いたたたた・・・うう〜・・・ひどいですよぅ・・・それと、ウチの下着返して下さぃぃぃ・・・」


 鱗と同じ桃色の髪の毛に大きな目。

 整った顔に大きな胸を顕にし、今は手で胸を抑えている。

 上半身は裸、下半身が魚の美少女が涙目でこちらを見ていた。


 これってまさか・・・物語に出てくる人魚か?

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