閑話 レイリーの気持ち
「シノブ〜?やっぱり一緒に入らない?気持ちいいわよ〜?」
『レイリー!いい加減にしなさい!!』
リーリエの怒声を聞きながら私は肩までお風呂に浸かる。
あ〜気持ちいい。
こんな気持ち良いなんて知らなかったわ。
エルフは水浴び位しかしないからね〜。
それにしてもと私は考える。
あの、不思議な男の人・・・シノブの事を。
最初は、ニンゲンという事もあって、凄く警戒していた。
というか、今思えば助けて貰ったのに、あの態度は無かったわね。
私もあいつらと変わんないのかも。
でもさぁ?
小さな頃からニンゲンは悪い奴らだって教わって来たし、仕方がないとも思うのよね。
でも、よくよく考えてみたら、エルフ種にだってあいつらみたいに最低な奴らもいたら、お父さん達みたいに善人もいるんだから、ひとくくりに考えるのは間違っているとは思うんだけど。
刷り込みって怖いわね。
とはいえ、この世界のニンゲンは本当に身勝手で悪い人が多かったとは思う。
他種族を攻めて、奴隷を作りまくってのは本当の話だしね。
はっきり言って、ニンゲンそのものについてはまだ信用していない。
そう考えると、シノブのようなニンゲンの男の人と出会えたのはこの上ない幸運な気がしてならないわ。
・・・シノブ、かぁ。
実際、格好いいし優しいし強いし、良い男よね。
見た目はニンゲン独特といった感じだけど、それでも私は好き。
なんか安心するもの。
できるだけ離れたく無い。
だから、お風呂の外に居てもらってるんだけどさ。
まぁ、だから、リーリエと何があったのか知らないけど、リーリエがあれほど惚れ込むのも仕方がないと思うの。
それにしても、シノブには性欲とか無いのかしら?
エルフだってあるのに。
シノブの視線からは、そう言った感じは一切無い。
それにちょっと落ち込むけれど、でも、それだけ誠実なんだと思う。
あの、叔父様のバカ息子とは大違い!
あいつはいつも私を見る目がおぞましかったもの!!
思い返すだけでも・・・あ〜気持ち悪い!!
にしても、アダマス氏族はこれからどうなるのかしら?
あんな叔父様がまとめて行くんじゃ、お先は真っ暗な気がしてならない。
どのタイミングでみんなが目を覚ますか、よね。
ま、でも良いわ!
私もうアダマス氏族じゃないんだし。
それに、助言はしてきたつもりだし。
これで目を覚まさないなら、後はもうなるようになればいい。
どちらにしても、もう、私は戻る気は無いんだし。
正直、お父さんとお母さんが必死に守った氏族を捨てる事に、思う所が無いわけではない。
でも、それでも、これ以上あの人達とは一緒に居たく無かった。
シノブと比べて、エルフ種の・・・氏族の醜さが浮き彫りになっちゃうから。
それに・・・
「どさくさに紛れて、シノブの姓を貰っちゃった〜♡」
そう、レイリー・ツクモって宣言しちゃったのよね。
ニンゲンがどうかは知らないけど、エルフ種で他の氏族名を名乗るのは、その氏族と家族になるって事。
今回で言えば、シノブと家族って事になるのよね〜。
してやったり!だわ!
でも、多分ニンゲンも一緒だと思う。
だってリーリエがあれほど怒って動揺したのだから。
にしし!
リーリエの事、実は嫌いじゃないし・・・多分むしろ逆なんだけど、それはそれ、これはこれよ!
シノブの奥さんの一番は譲るけど、シノブからの気持ちの一番まで譲るとは言ってないもの。
リーリエがどうやって姿を見せるつもりかわからないけど、それまでが勝負よね。
リーリエがどんな見た目かわからないけど、私だって負けてないと思うし、あの感じだと転生前のシノブと何かあったのは間違い無いわ。
元夫婦にしては変だし・・・恋人とか?
でも、それもなんか違うような気がするのよね。
まぁ、良いわ!
リーリエからは名乗れないっぽいから、そこは付け入る隙よね!
それにしてもと思い返す。
シノブ、もうちょっと私の事、女として見ても良いんじゃない?
エルフよエルフ?
これでも私、美形が多いアダマス氏族の中でも、氏族一の美人って言われてたんだけど?
覗くとかあっても良いんじゃない?
「ねぇシノブ〜?ちょっと見てみる〜?」
『レイリー!!何言ってるの!!忍様は見ません!!』
あはは。
リーリエの叫び声が聞こえる。
お父さん、お母さん、氏族を捨ててごめんなさい。
でも、退屈しないで済みそうよ。
それに良い人達だから安心してね。
そのうちまた、お父さん達が眠っている所まで挨拶しに行くわね。
シノブと一緒にさ!
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