閑話 リーリエの焦り

 まずいです!まずいです!!ますいです!!!

 恐れていた事態がついに!!


 忍さんの所に女性が現れてしまいました!!!!


 レイリーは私が思っていたよりも切れ者でした。

 まさか、裏の事情に気づかれるとは思いもしませんでしたよ。

 本当に予想外でした。


 私がサマーニャ様から言われている事は大きく3つ。


・忍さんのサポートをする事

・忍さんが、私が顕現出来るようになるスキルを得るまで、忍さんに百合だとバレない事。

・忍さんにたくさんの種族と子孫を残させる事


 そのうち二番目については、顕現するのにそれが必要だからという事で、それは理解しているので良いのですが、3つ目については・・・正直複雑ではありました。

 しかし、それは最初に覚悟を問われた際にも言われていた事ですし、諦めてもいます。

 複雑ではありますが、仕方がないとも思っていますから。


 ですが!

 ですが!!

 まさかこれほど早くとは思いもしませんでした!!!


 誤算です!

 大誤算です!!


 私の予定では、私が顕現した後に、そういった女性が増えるというものだったのに、まさか取得する必要のある、いくつかのスキルの内の一つすら入手する前に来てしまうなんて!!

 

 う〜!

 悔しいよぅ!


 私が1番忍さんを好きなのに!!

 忍さんが生まれ変わる前から愛しているのに!!


 生身でいつも一緒に居られるだなんて!

 触れられるだなんて!!

 ズルい!!!


 ・・・ですが、レイリーは不本意ながら良い子です。

 とても優しい、素敵な女の子なのです。


 ・・・私とも仲良くなれるとも、思わなくはありません。

 いえ、むしろレイリーの性格は好ましいと思っています。

 

 短い間ですが、それはよくわかりました。

 彼女は裏表がありませんから。

 それに・・・正直、馬が合いそうな気もするのです。


 だけど早いでしょう!?

 なんでこんなに早く現れるの!!

 早すぎでしょう!?


 今日も、お風呂に一緒に入ろうとか言ってるし!!

 絶対ダメ!!

 私だってまだなんだから!!


 レイリーの言葉を聞いて、私の前で少し顔を赤くしている忍さんを見て、私がどれだけ憤慨していたか!!

 そりゃ、忍さんも男ですし、レイリーは魅力的だからわからなくもありませんが、だからと言って私の前でそんな顔は見せないで欲しい!

 だって嫉妬しちゃうもん!


 うう・・・ステータスなこの身が恨めしい・・・

 でも、仕方がありません。

 全てはまた忍さんと会う為。

 もう一度、生身で忍さんと会う為です。


 ここは耐えるしかありません。


 私は、横並びで寝ている忍さんとレイリーの布団の間に霊体で現れました。

 

 忍さんの寝顔を見て、顔がほころびます。

 ついつい、触れないのに頬をつんつんしてしまう。


『・・・忍さん、まだ、レイリーに手を出したら駄目ですよ?私が顕現するまで待って下さい。だから、早くスキルを入手して下さいね?待ってますから。』


 そして後ろを振り返り、ヨダレを垂らしながら寝ているレイリーを見る。


『レイリー。私より先は許しませんからね!』


 唸りながらレイリーを睨む私。

 だって羨ましいんですもん!

 同衾・・・では無いのですが、それでも一つ屋根の下、それどころか同じ部屋で一緒に寝るだなんて!

 反対してもレイリーがゴリ押ししちゃうし!

 忍さんも押されて了承しちゃうし!!もう!!


 しかし、そんなレイリーを見ていると、ふと顔がほころんでしまいました。


『でも、忍さんと出会ってくれて・・・一緒に居ようとしてくれてありがとう。私もあなたが来てくれて嬉しいわ。これからもよろしくね。』


 そんな私の声が届いたかわかりませんが、レイリーの顔が微笑みました。

 ・・・こうして見ると、流石はエルフ種。

 とても綺麗な顔立ちですね。


「シノブゥ・・・はやくぅ・・・もう我慢できない・・・」


 しかし、次の瞬間そんな寝言を言ったのを境に、眉間にシワが寄るのが分かりました。


 どんな夢を見ているのかわかりませんが、釘を差しておく必要がありそうですね。


『レイリー・・・万が一、私よりも先にしたら・・・毎晩枕元に立って文句を言いますからね?恨みつらみを流し続けますからね?』

「う・・・」


 私が重々しい声でそう言うと、レイリーは顔をしかめました。

 今もう〜う〜唸っています。


 ふぅ・・・これでよし!


 私は笑顔でそう思いました。

 今、自分が凄く良い笑顔な気がします!


 ・・・はぁ、早く忍さんの前に姿を見せたい。

 忍さん、頑張ってね?

 レイリーの誘惑に負けないで下さいね?

 信じていますから。


 絶対ですよ?


**************

これで第2章も終わりです。

次々と現れる死客(嫁候補)!

リーリエの明日はどっちだ!?

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