第20話 新たな居住者

『どういうつもりなのですかっ!!』

「あはは、まぁまぁ良いじゃないの。」

『よくありません!!』


 家に着くまでも、着いてからもずっとこの調子だ。

 激昂するリーリエとのらりくらりと躱すレイリー。


 このままでは埒があかない。


「それで・・・レイリーはこれからどうするんだ?」


 俺がそう口を挟むと、リーリエは興奮覚めやらぬ状態で口を閉ざし、レイリーは逆に神妙にした。


「・・・私、これで帰る場所無くなっちゃったんだよね。お願いがあるんだけど・・・良い?」


 そう言って俺を見つめるレイリー。

 あまり人付き合いをしてこなかった俺でも、レイリーの頼み事は分かった。

 だから、


「・・・実は、人手が足りない。もし良かったら、ここに居てくれないか?」

「ホント!?勿論!ありがとうシノブ!!」

『忍様!?それは一体どういう・・・まさか!?そんな!?嘘!?』


 気色満面なレイリーに対し、この世の終わりだという反応を示すリーリエ。

 人手が足りないのはリーリエが一番分かっているだろうに・・・何が不満なんだ?


「リーリエ、一体どうしたって言うんだ?」

『うう・・・だってぇ・・・忍様が・・・グスン。』


 泣くほどか!?

 というか泣けるのか!?


「人手が足りないのは分かっているだろう?レイリーは信用出来るじゃないか。」

『そうですけど、そうではないのです!!もう!なんであなたは・・・もうっ!!』


 う〜んわからん・・・どうしたら納得してくれるのか・・・


「まぁまぁリーリエ、ちょっとこっち来なさいよ。」

『・・・なんですか泥棒猫・・・』

「シノブ?ちょっと向こうで女二人で話してくるから、盗み聞きしないでよ?」

「・・・わかった。」


 女二人・・・か。

 やっぱりそうだよなぁ・・・リーリエ、完全に人の女っぽい感じだもんなぁ。

 それにしても、女神様が産み出した人格って凄いな。

 ほとんど人間とかわらん。

 おっと、耳を塞いでおくかな。





sideレイリー


『で、一体なんですか泥棒猫。』


 シノブから離れてこそこそとリーリエと話をする。

 やっぱりこの子は・・・


「もう、そんなに拗ねないでよ。あのさぁ?あんたシノブの事好きなんでしょ?」

『・・・私はステータスです。』

「とぼけるのは止めなさいよ。まぁ、それは良いんだけど、やっぱり私もシノブの事好きになっちゃった。」


 そう言った瞬間のリーリエは息を飲んでいた。

 確定ね。


『っ!!まぁ、忍様は魅力的ですから?仕方がないと思いますけど。ですが、忍様はあなたに、男女の機微としての愛情は無いと思いますよ?』

「そんな事は分かってるわよ。そこまでおめでたくないわ。だから、ちょっと相談なんだけど・・・私がアピールするのを見逃してよ。」

『!?ど、どうして私が見逃さねばならないのです!?』


 私は、実は推測していた事があったので、それを交渉材料に使う事にしたの。


「あら?そんな事を言って良いの?」

『・・・どういう事です?』

「シノブ、多分女神様から期待されてるわよね?この世界の存続の為に。」

『!?』


 甘いのよリーリエ。

 私はこれでも聡明で通ってたんだから。

 シノブから話を聞いて色々と引っかかってたのよね。


「シノブは、多分本人は知らないけど、この世界を生き抜いて、その上で沢山の子孫を残す事を期待されているの。違う?」

『・・・』

「で、あんたはそんな女神となんらかの取引をした女。それも、シノブと関係のある、ね。」

『っ!!・・・これ以上誤魔化しても無駄のようですね。驚ました。まさかあなたがそこまで鋭いとは。』


 ふふーん!

 やっぱりね。

 リーリエのシノブへの執着は生身の女の有するそれだもん。

 それに、満を持して送り込んだシノブが、期待されていないわけがないんだから。

 気がついたのはリーリエからのヒントもあったんだけどね。


 だって、明らかにそうならないように話てたから。


「まぁね。で、相談として、その中に私を入れて欲しいのよ。」

『・・・メリットがありません。』


 こいつはそれが嫌なんだもんね。

 だから私は最後のカードを切る。


「あんたそのうち姿を現すんでしょ?言わないのは口止めされてるから?」

『・・・っ!!そこまで・・・』

「だから、あんたを一番にするからさ?それに秘密も黙ってる。破格でしょ?」

『くっ・・・仕方がありませんね。』


 イエーイ!

 大勝利ね!

 悔しげなリーリエを見てそう思って小躍りする。

 しかし、


『・・・はぁ、まぁ、レイリーは良い人のようですから。あなたと一緒にいる時の忍様は楽しそうでしたしね。・・・私も、あんな風に言い合いする間柄の人はいませんでしたから、楽しかったです。これからもどうかよろしくお願いします。忍様・・・忍さんを守って下さいね・・・私には、出来ませんから・・・』


 優しい声色の後に悲しげな声。

 それを聞いてなんだか無性に腹がたった。


「何言ってるのよ!シノブがこれまで頑張れたのはあんたが居たからでしょう!つまんない事言わないでよ!それに私だって楽しかったわ!張り合いが無いからしょんぼりするな!!」


 思わず、そんな事を言ってしまった。

 リーリエが唖然とする気配を感じ、ばつが悪くなる。


『・・・そうね。これからもよろしく泥棒猫さん。』

「・・・さっさと姿を現しなさいよ。姿見せたらほっぺたつねってやるから。」

『うふふ・・・それは忍さん次第ですね。ちゃんとやり返すから、待ってなさいな。』


 ・・・まさか、初めてのニンゲンの女友達が、能力の窓の中の人とはねぇ。

 私達はクスクスと笑い合うのだった。


 心配そうにこちらを見ながら耳を塞いでいるシノブを見る。


「寂しそうにしているから行きますか!」

『そうですね。忍様には寂しい思いをせずに生きて欲しいですから。』


 私達はそんな事を言い合いながら、忍の所に行くのだった。




現在のステータス

 氏名 九十九 忍(ツクモ シノブ)

 種族 人間 

 性別 男

 年齢 18歳

 状態 良好

 スキル 言語理解 状態異常耐性【中】NEW 頑強 アイテムボックス 加工 気配察知【弱】気配遮断【弱】体術【中】NEW 剣術【弱】気功術 気闘術 魔力操作 風魔法【弱】 急所突きNEW

 称号 転生者 祝福を受けし者 切り開く者 **** |大物喰い《ジャイアントキリング お人好し

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