閑話 ステータスさんの驚愕
私はリーリエ。
今は忍様のステータスと補助をさせて頂いています。
予定通り忍様に呼び出して頂き、挨拶をさせて頂いた後、様々なご説明をさせた頂きました。
忍様は相変わらず・・・ごほん、とても聡明で、初めて聞く言葉や考え方にも順応し、ご理解をされておられるようです。
私は忍様をサポートする為にかなり頑張って勉強をしたのですが・・・忍様は予めサマーニャ様から予備知識をインストールされているとはいえ、理解力は別物です。
こうして改めて接すると、忍様はとても頭の回転が早いと、知識を得た今再認識できました。
やはり忍様は素敵・・・いえ、素晴らしいと思います。
さて、私が忍様とこの世界に降り立ち、少したちましたが、忍様は私のご助言を大事にして頂き、少しづつこの世界での居場所を拡大されておられます。
ですが、そんな忍様に最初の試練が訪れました。
魔物との遭遇です。
幸い、魔物は一匹の狼でしたので、私は撤退を進言しました。
なぜなら、この世界の魔物は、以前の世界の獣などより遥かに強力なのですから。
こちらの世界の住人でも、そこそこ戦える強さであっても遅れをとることが多々あるようです。
ですが忍様は戦闘を選択されました。
正直、私は驚いていました。
どう考えても、忍様には時期尚早だったからです。
ですが、私の予想を覆し、忍様は魔狼に勝利されました。
そのこと自体は喜ばしい・・・喜ばしい、のですが、
私は逃げろと言った筈なのです。
忍様のご自宅にはサマーニャ様からのご厚意で結界が張ってあったのですから。
いずれは倒す事になったとしても、今では無い筈なのです!
にも関わらず忍様は・・・
・・・あんな好戦的な面があるのは知りませんでした。
正直とても腹がたちます。
あなたが死んだら私がどれだけ悲しむのか理解されていません!!
ですが・・・ですが、とても男らしくて格好良かったです。
惚れ直した、というのが正解かもしれません。
私は忍様の戦闘を見たことはありませんでしたから。
しかし!
私は彼のサポートが役割です!
ですからしっかりとご助言差し上げましたとも!
ええ!それはもうしっかりと!
その後は功を奏したのか、魔物と遭遇する事無く、井戸の確保や周囲の散策も進みました。
私は安心していました。
忍様には傷ついてほしくありません。
そう、思っていたのですが雲行きが怪しくなりました。
それは洞窟の発見が切っ掛けでした。
私は、あまり関わって欲しくありませんでしたが、自宅近辺である事もあり、強く制止出来ません。
中には大型の獣が生息している可能性が高い事も判明しました。
ですが、それと同じくしてこの洞窟には岩塩がある事もわかりました。
人が生き抜くためには塩は大事です。
私は、忍様がここの獣を討伐する事を了承しました。
条件付きとして。
そして、ここの主が魔物化した熊だとわかった時、撤退も考慮するよう進言しました。
魔熊の危険性は魔狼の比ではありませんから。
魔熊はかなり危険です。
魔物化した獣の中ではトップクラスと言っても過言では無いでしょう。
後天的に魔物になったものの中では、ですが。
まぁ、忍様が退けないのも理解できます。
ここはあまりにも自宅に近すぎますので。
なので、罠をしかけるという前提での討伐という事で納得しました。
・・・思うところはありますが、いたしかたありません。
数日の観察で巣を根城にしているのは一匹と判明しました。
そして忍様は更にスキルもいくつか獲得されました。
これは称号の効果もありますが、忍様の元々の資質もあるのでしょう。
やはり素敵・・・いえ、なんでもありません。
討伐前夜、忍様が予想外の行動に出られました。
なんと、お風呂を作り、入浴されたのです。
そう、入浴です。
当然裸です。
いつもは身体を拭かれる程度ですし、暗い室内なのですが・・・夕暮れ時という事もあり、さらには忍様は一切隠されなかったので・・・その・・・丸見えなのです。
お恥ずかしながら、今まで一度も男性の裸を見たことが無く、ましてや愛しの忍様の・・・という事もあり、期せずしてまじまじと・・・お恥ずかしい。
思わず変な声が出てしまいました。
鍛え抜かれた忍様のお身体・・・素敵です。
・・・それにしても、男性の・・・はあんなに大きなものなでしょうか?
あれが・・・?嘘でしょ・・・?
あんな・・・あんな・・・はっ!?
取り乱しました。
さて、気を取り直して、魔熊の討伐は予想外の展開を迎えました。
なんと魔熊が気配を消して忍様を強襲して来たのです。
よりによって当日に!
当然私は忍様が撤退すると思っていました・・・いえ、本当はわかっていたのかもしれません。
忍様なら逃げずに戦うと。
あの、男性の中の男性である忍様は困難から逃げることは無い、と。
忍様は戦闘を決意されました。
今の忍様では勝ち目はありません。
それでも、かなり善戦されておりました。
その事実だけでも驚愕に値します。
以前の世界で熊を倒していたというのも納得です。
・・・信じていなかったわけではありませんでしたが、たまに持ち込まれたいた熊の肉や毛皮が、まさか普通に戦闘で倒していたものだったなんて・・・てっきり罠か何かだと思っていたのですが・・・話がそれました。
ですが、それも魔熊が魔法を使用した事で天秤が傾きました。
直撃をして意識が朦朧とする忍様。
死を強く予感させるその姿を見て、私の目から涙が流れて来ます。
どうか!
どうか死なないで!!
あなたが死ぬところは見たくない!!
自分が何を叫んだかは覚えていません。
しかし、今にも目を閉じてしまいそうな忍様はカッと目を見開かれました。
良かった!!
その後、称号の効果もあり、魔熊にもダメージを与え、最後は自力でスキルを入手し、魔熊に止めをさされました。
格好いい!
でもそれ以上に・・・生きておられて、本当に良かった・・・
称号の効果も切れ、フラフラしながら自宅に帰られる忍様。
出来れば隣で支えてあげたい・・・
自宅に到着して、
私は、霊体になって枕元に立ちます。
『・・・忍様、生きていてくれて本当に良かった・・・ああ、これほど近くにいるのに触れることが出来ないなんて・・・でも、姿を見せることは出来ないのです。あなたがスキルを得るまでは正体も明かせないのです。それでも・・・私はいつでもあなたのお傍に・・・』
私は忍様の頬にそっと手を伸ばします。
触れることができないのがもどかしい。
『私』として声をかける事が出来ないのも悲しい。
でも、あなたが私を忘れてしまったとしても、私はずっとあなたを支えて・・・
「・・・百合さん、ずっと・・・幸せに生きていてくれ・・・」
寝言。
たった一言の寝言。
私の目から涙が流れるのがわかります。
『愛していますよ・・・忍さん。』
私は霊体を解除します。
今はまだそれほど長く霊体でいる事も出来ません。
ですが、いずれきっと・・・
ですから、起きたらしっかりとお小言を言わせていただきますからね?
覚悟しておいて下さい!
私の、大事な、大事な愛しい人。
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