閑話 女神と??

「あらあら、まさかこんな所に迷いこむだなんてね。それも遺体と魂だけでだなんて、次元穴にも困ったものだわ。」


 そんな声で意識が戻される。

 

 ここは・・・?


 私の目の前には、美しい風景とこの世の物とは思えないほど綺麗な異国の女性。

 そして・・・ボロボロになって死んでいる自分の酷い姿。


「あなたは、崖から落ちて大怪我を負ったの。そして死ぬ間際に次元穴という超常現象で世界を越えて、ここに迷い込んだのよ。」


 次元穴?

 よくわからない。

 それよりも・・・私は死んだ・・・のよね?


「ええ、死んでいるわ。で、別の世界の神域・・・神が座する所に迷い込んだのよ。」


 神様?

 ということはあなたは・・・


「ええ、私は女神、正確には管理者でサマーニャという名前よ。にしてもどうしたものかしら・・・ただ迷い込んだだけなら帰すことは出来るのだけど、まさかここに来てから死ぬだなんて・・・う〜ん・・・困ったわね・・・」


 どういう事でしょう?


「普通、迷い込んだ人間はそのまま帰すか、残る意思があるのかを確認して措置を取るわ。でも、あなたは既に死んでいる。魂だけで帰らせる事は出来なくは無いけれど、それは元から魂だけで来た場合なのよ。こちらに来てから死んだのであれば、その魂はこちらの輪廻に乗せる必要があるの。」


 それの何が問題なのでしょう?


「あなたの身体と魂から情報を読んだわ。もし、こちらの輪廻に乗せるのであれば、あなたは彼には二度と会うことは出来ない。生まれ変わっても、ね。」


 そ、それは嫌です!!


「そうよねぇ・・・だから困ってるのよ・・・あなたの魂の色はとても綺麗だし、なんとかしてあげたいけど・・・」


 そう言って考え込む女神様。

 私、生まれ変わってもあの人に会えないの?

 なんでこんな事に・・・私はあの人のためならなんでも出来ると言うのに・・・


「・・・その言葉、偽りは無い?」


 悲嘆に暮れていると、女神様が真剣な顔をして訊ねてきた。

 そんなの決まっています。

 嘘偽りは無いです。


「そう。では聞くわ。実は、私は彼に目をつけていたの。といっても男として見ていたわけじゃないけどね。ちょっと下手を打った後輩のせいで、世界が一つ滅びかけていてね?まもなく滅びを迎えるのよ。で、その管理を任される事になったわ。・・・私はもう一つ世界を管理してるってのにさぁ!?酷くない!?」


 あ、あの、怒りを押さえて下さい。


「あ、ご、ごめんなさいね?で、その世界を正常にする為に、リソース・・・力を持つ人を送り込む必要があるのよ。でもね?さっきも言った通り、その世界は滅んでいる。文明も無いわ。だから、勇者と呼ばれる強者を放り込んでも意味がないの。サバイバル能力・・・何も無い所でも生き抜く力を持った人が必要なのよね。」


 何も無い所でも生き抜く・・・まさかそれであの人を!?


「そう。彼が天寿を全うした後に、転生させようと思っていたのよ。年齢を操作した上でね。」


 なるほど・・・確かに、彼なら適任かもしれない。


「で、私は彼にいくつかスキル・・・技能や、補助機能を与える事になるんだけど、その補助機能になる気、ある?」


 補助機能・・・ですか?


「ええ、そう。あなたをそのまま生き返らせる事は出来ない、それに、転生させても出会えるとは限らない。だから賭けになるけれど、上手く行けば、生前の姿で彼の元にいける方法があるの。辛い道になるし、努力も必要だけど・・・乗る?」


 考えるまでも無い。

 乗ります!


「・・・本当に?嘘をつきたくないから包み隠さず言うけれど、彼には沢山子孫を残してもらわなければならないの。様々な種族のね?なにせ、正常な命もかなり減っているから。言ってる意味、わかる?」


 ・・・勿論です。

 沢山の女性と一緒にならなければいけない、という訳ですね?


「そう。あなたがもし了承したら、彼が生きるサポートをしながらそれを見届けて貰う必要があるわ。実体の無いあなたには、話をする事くらいしか出来ないし、現界するための制約として、自分が誰かを明らかにする事も出来ないわ・・・辛いわよ?」


 ・・・確かに辛いです。

 それでも、共にいられて、支えられるのであれば・・・私はそれを望みます!


 だって、あの人の側に・・・もう二度と会えないと思っていたあの人の側に居られるのだから!


「・・・なんだか、利用しているようで悪いわね。なら、私も協力しましょう。まずは、補助的な身体を与えるわ。そして、眷属見習いとします。あなたは、まずはサポート出来るように知識を深めなさい。ここには様々な情報がある。どれだけ知識を得られるかはあなた次第よ。」


 はい!


「期限は、彼が寿命を全うするまで。具体的には後60年位かしら。その間は彼を見ることも、話をする事も出来ないわ。耐えられる?」


 わかりました。

 それが必要ならば。


「・・・そう。もし、諦めるのならば言ってね?その時はあなたは正式に眷属にするから。」


 それはありえません。

 私は、必ず彼の・・・忍さんの元へ行きますから!


「決意は固いようね。では、補助的な身体はあなたの亡骸を触媒に・・・これでよしっと。具合は・・・良さそうね。がんばりなさい・・・百合ゆり。」

「はいっ!!サマーニャ様!!」


 忍さん。

 待っていて下さい。

 私は、必ずあなたともう一度会って見せる!


 そして、あなたと添い遂げて見せますから!!

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