第4話 井戸作り

「よっほっ。」


 今日は朝から穴掘り。

 食料は昨日狩った魔物の狼・・・魔狼で良いか。

 魔狼の肉があるから、他の事に時間を費やす事にした。


『ここの庭の下には水源がある模様。井戸作りを推奨します。』


 とリーリエから教えて貰い、時間もある事なので今日は井戸を作る事にした。

 水の確保は出来ているものの、やはり川や湖に汲みに行くのは面倒だ。

 井戸があれば、更に他の事に時間が取れる。


 リーリエの指示により、どんどんと掘る。

 掘る道具はショベルだ。

 これも前世で作っておいた物が物置にあった。

 女神様本当にありがとう。


 現在は、俺の身体が縦に埋まる位の深さまで掘っている。

 にしても・・・


「疲れないなし、力が有り余っている。掘った土をわざわざ上に運ばなくてもあいてむぼっくすとやらに入れれば良いのは楽だな。にしても俺はここまで体力があったか?」


 【あいてむぼっくす】というのは、リーリエから教えて貰ったのだが、どうやら女神様がサービスでつけてくれたスキルのようだ。

 容量はよくわからないが、たくさん入る目に見えないカバンのようなものらしい。


『忍様は、魔狼を討伐した事で、魂及び身体の強化がされております。』

「へぇ。ここまで強化されるものなのか?」

『忍様、本来魔物を倒すという事は並大抵の事ではありません。その上、【転生者】の称号の効果により、忍様は得られる経験値が多いのです。現在の身体能力の向上は、その結果でしょう。』

「ふむ。」


 という事は、魔物を狩れば狩るほどより強くなれるという事か。

 強さはどれだけあっても困らない。

 むしろ、この世界で生きていくには必要なものだろう。

 今後も魔物を発見したら積極的に狩って行こう・・・


『忍様?』


 俺が物思いに耽っていると、リーリエの剣呑な声が聞こえた。

 思わず背筋を正す。


「な、なんだ?」

『まさかとは思いますが、積極的に魔物を狩ろう、などとお考えではありませんよね?』

「・・・い、いや、そんな事はない。」


 その声の冷たさに、冷や汗をかきながらそう答える。


『・・・良かったです。先日のご注進が無かった事にされずホッとしております。何度も言わせて頂きますが、現在の忍様のお力では、魔物を討伐するのは危険でございます。くれぐれも、軽率になされないようお願い致します。くれぐれも、ですよ?』

「・・・あ、ああ。」


 ・・・危ない。

 また、あのなんとも言えない気分にさせられる事だった。

 にしても、やはりリーリエには何故か逆らえない、というか、逆らう気が起きない、が正しいのか。

 一体なんなんだろうか。


 だが、嫌では無いのだよな。

 よくわからん。


 そんな事を考えながらも、穴掘りの手は止めない。

 

 途中、食事休憩を取り、休憩を挟みながら掘ること15メートル程。

 

「おっ?」


 地面から水が湧き始めた。

 手に掬って匂いを嗅ぐ。

 ・・・うん、変な匂いは無さそうだ。

 まだ湧き出した直後で濁っているので、飲んで確認する事は出来ない。

 ちょっと様子を見て・・・


『忍様、その水をステータス画面に通してください。』


 ん?ステータス画面に通す?

 どういう事だ?


「どうすれば良いんだ。」

『水を手で掬ってステータス画面に押し付けてください。』

「こうか?・・・うぉ!?すり抜けた!?」

『水の分析を開始・・・解析完了。忍様、ご安心ください。この水は飲料に適した水です。その上、微々たる量ですが魔力も混じっておりますので、この水を接種し続ける事で更に身体能力の強化が見込めます一定のレベルまでではありますが。』

「そうなのか?」


 ふむ、という事はこの水を使用して炊事や入浴をすれば、より効率的に強くなれるいうわけか。

 よし、さっさと強くなって早く魔物を・・・


『・・・忍様。なにか良からぬ考えをしておいででは?』

「いえ、そんな事はありません。」


 ・・・なんでわかったんだ?


 もう少し深さを確保して湧き出る水の量を増やしたいところではあるが、その前にやることがある。

 

 一度垂らしておいたロープで穴の上に出る。

 そして準備しておいたレンガを下に降ろして急いで埋め込む。

 壁の代わりにするのだ。


 レンガは、前世の間にかなり作り置きをしていたので、大量にある。

 風雨にさらされないよう管理していたからか、状態はあまり悪くなっていない。

 日が暮れる頃には穴の半分を越える位には埋め込む事が出来た。

 この水の量であれば、これを越える事は無いはずだ。


 後は明日にしよう。


 翌日も、朝から井戸作り。

 井戸を見ると、大体膝くらいまで水が溜まっている。

 底に降り、最後の一堀をすると、水が湧き出る量が一気に増えた。これで十分だろう。


 俺はスルスルとロープを上り、穴の壁を固めながらレンガの埋め込みを続けた。

 昼には地上までたどりつけたので、まずは昼休憩。

 昼食後、井戸の周りを石垣で囲うための石を入手すべく、家の裏手側の山にある大きな岩から切り出す事にした。

 まず、たがねをハンマーで打ち込み、岩を割る。

 まぁ、研磨する必要までは無いだろう。

 力は、前世の時よりもかなり向上しているらしいので、そんなに大変では無かった。

 この調子で行けば、いずれは道具に頼らず切ることができるのだろうか?


 簡単にぐるっと井戸の穴を囲うと、一端はそれでストップ。

 そろそろ獲物や山菜を取りに行かねばならない。


 翌日は獲物の確保に動き、また数日分の食料を得る。

 その更に翌日には井戸に屋根を作り、井戸の囲いを更に高くし、蓋を作った。

 その頃には水も綺麗に澄んで来ており、井戸の中程上くらいまで水が来ていた。

 どうやら、ここの水源はかなり豊富のようだ。

 

 いずれはポンプなども作りたいが、まずは昔ながらの桶で組むので構わないだろう。


 こうして、俺の井戸作りは一時的な完成を見せたのだった。

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