第5話 洞窟の探索

 井戸作りも終え、付近の散策がてら獲物を探していると、家の裏手の山の中に洞窟を見つけた。

 人が余裕で入れるくらいの横穴で、石を放り投げて見るとかなり反響した。

 そこそこ広そうな洞窟だな。


 付近の探索の際、川や湖に近い方から探索していたからこちらに来た事は無かった。

 真逆だしな。

 石を切り出した時も、こことは逆の法面のりめんだったし。


「リーリエ、この中に生き物がいるかどうかわかるか。」

『不明です。ステータスにはそこまでの機能はありません。』

「そうか・・・よし!中に入ってみよう。」

『・・・忍様。危険です。』


 俺が中に入ろうとしたら、リーリエが不服そうにそう言った。

 だが、


「リーリエ、却下だ。どのみち、なにか大型の動物や魔物がいた場合、家の近くである以上危険だ。ならば、先手を打った方が安全だと思う。」

『・・・了解しました。但し、なにかいた場合、逃走も選択肢に入れておいてください。』

「勿論だ。無理は控えるつもりだよ。一度戻って松明を準備して来よう。」


 渋々と言ったリーリエ。

 それを悪く思うつもりは無い。

 リーリエは心から俺を心配して言っているのはわかっているし、信じられる。

 何故かはわからないがな。


 俺は、一度家に戻り、松明たいまつ数本とピッケル、水筒を準備し、魔狼の肉で作った干し肉を持って洞窟に再度向かう。

 あいてむぼっくすのおかげで、荷物の重さがあまり影響しないのはありがたい。


 松明に火をつけ中に入る。

 洞窟の中はひんやりしていて、食物の保存に適していそうだった。


「さて、鬼が出るか蛇が出るか・・・」


 洞窟内を探索・・・と言っても一本道だが、かなり深そうだ。

 しかし、この匂い・・・獣臭い。


「なにかいる・・・というか住んでいるな。」


 大体40メートル位進んだところで行き止まり。

 そして、地面には、生き物の骨が多数散乱していた。


「この骨を見るに、ここに住んでいるのは大型の生き物のようだ。」

『その通りだと推測します。現在は不在の模様です。撤退を進言します。』

「そうだな。」


 遭遇した場合、この中で戦うのは得策じゃない。

 視界も悪く、松明が離せないからだ。

 一匹とも限らないしな。

 下調べは必要だ。

 やりあうなら、外で待ち伏せして帰ってきた時だろう。


「では出よう・・・ん?」


 来た道を戻ろうとしたところ、壁に何か白い物を発見した。

 近寄って見ると、何かの結晶に見える。

 

「リーリエ、これが何か分かるか?」


 俺は、その結晶を軽く削り、ステータス画面を通した。


『・・・塩化ナトリウム、マグネシウム、ナトリウム・・・岩塩です。』

「お!?本当か!?それは助かる!」


 塩は大事だ。

 人が生きるのに必要不可欠。

 ここから岩塩が取れるのであれば、この洞窟を奪取するのは絶対に必要だ。


「リーリエ、ここのぬしを撃退し、ここを奪うぞ。」

『・・・致し方ないと判断します。どうかお気をつけて。』


 リーリエがためらいながらも肯定する。

 リーリエにも塩の重要性はわかっているのだ。


「ああ、まずは表に出て、地形を把握する。そして何匹いるかを確認し、場合によっては巣にいる間に罠をしかける。」


 洞窟の表に出て周囲の痕跡をしっかりと見る。

 

「・・・これはおそらく、熊だな。」

『はい、私もそう判断します。ただの熊であれば良いのですが・・・』


 普通の熊なら問題無いだろう。

 前世の時でもなんとかなったからな。

 もし、魔物化していたら・・・魔狼以上の激戦になるだろうな。


 だが、引くことは出来ない。

 あそこに家を構える以上、避けては通れないのだから。


 周囲が見渡せる場所を探し、洞窟と付近を警戒する。

 場合によっては徹夜だろう。

 できるだけ早く来てくれれば良いが・・・


 それから昼を挟み、夕暮れ前。

 途中干し肉や水筒の水で凌ぐ。

 

 すると、ガサガサという音が、洞窟を挟んで俺のいる位置の反対側の森の中から聞こえた。


 来た!

 俺が注視していると・・・やはり熊か!


『・・・熊です。ですが、あれは・・・魔物化しています。出来れば手出ししないで欲しいのですが・・・』

「そうはいかない。塩は必要だ。」

『・・・はい。それに、ここはあまりにも家に近すぎます。』


 そう、ここは家から200メートル程しか離れていない。

 今まであの魔物の熊・・・魔熊に見つからなかった事が奇跡なのだ。


『いえ、家自体には管理者様が張った結界がありますので。』


 あ、そうだったな。

 後は、何匹いるか、だな。


 まずは、数日確認に使って、準備を整えてから挑もうとしよう。

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