第2話 すてーたすさん

「ここが異なる世界、か・・・ふむ、本当に森と山しかないな。っておお!?」


 キョロキョロとしていると、自分の後ろに家があるのに気がついた。

 というかこの家は・・・


「お、俺の家じゃないか・・・」


 驚いた事に、その家は俺の前世の家だった。

 しかし、よく見ると、家は以前よりも傷んでいない。

 

 どういう事だ・・・?

 あ、そうだ、そう言えば、女神が何か・・・


「え〜っと・・・す、すてーたすおーぷん?だっけか?おお!?」


 俺の目の前に、黒い窓のようなものが現れた。

 そこには、


 氏名 九十九 忍(ツクモ シノブ)

 種族 人間 

 性別 男

 年齢 18歳

 状態 良好

 スキル 言語理解 状態異常耐性 頑強 アイテムボックス

 称号 転生者 祝福を受けし者 切り開く者 ****


 と書いてる。


 ほほぅ・・・さっぱりわからん!

 どうしたら良いのか途方にくれていたその時だった。


『忍様』


 女性の声が頭に響いた。

 なんだ!?どこにいる!?


 突然の声に驚き、周囲を見回すが誰もいない。


『忍様はじめまして、私はあなた様のステータスであります。以後、お見知りおきを。』


 おお!?

 すてーたす・・・さんか?

 そういえば、女神様が話が出来るとか言ってたな。


「は、はじめまして?」

『はい、はじめまして。』

「・・・」

『どうされました?』


 俺は、少し固まってしまった。

 何故か、すてーたすさんの声が懐かしく感じたからだ。


「いや、なんでも無い。なんとなく懐かしく感じてな。」

『・・・そうですか。おそらく、忍様は今、どうしたら良いか途方にくれていらっしゃったのではと愚考しますがいかがでしょうか。』


 おお、そのとおりだ。

 優秀だな。


「ああ、実はそうなんです。それで・・・」

『忍様、私はあなた様の能力なのです。どうか敬語をやめて下さい。』


 そ、そうなのか・・・?


「わ、わかった。それで、俺はどうすればいい?いや、その前にすてーたすに書かれている事について教えて欲しいんだが・・・」

『わかりました。ご説明しますね。まず、氏名、これはおわかりになると思います。あちらの世界同様、あなた様のお名前は九十九忍つくもしのぶとなっております。次に、種族ですが、この世界には人間以外に、獣人、エルフ種、ドワーフ種、人魚種、精霊種、魔族種など、亜人と呼ばれる種族の者がいます。また、魔物や聖獣と呼ばれる生き物もいます。特に魔族種と魔物は人と敵対していたので、お気をつけ下さい。』


 ほう。


『年齢や性別のご説明はご不用だと思いますので割愛致します。状態項目は現在のその者の健康状態や、精神状態を表します。スキルというのは、忍様が有する能力となります。また、スキルは増える事がありますが、取得条件は様々です。現在忍様は、管理者様・・・神様の事ですが、管理者様から頂いた【言語理解】と、丈夫な身体を願った事から、【状態異常耐性】と【頑強】を得ておられます。【状態異常耐性】は、病気や毒、外因性による衰弱や、能力の低下などに対する耐性があり、また、【頑強】による外傷や疲労の軽減があります。【アイテムボックス】とは、目に見えない大きなカバンとでも思ってください。』


 なるほど・・・

 

『称号は、困難を乗り越えたり、何かを達成したり、その他の要因で得られます。称号を得ることによって、能力値が増加したりもします。現在は、【転生者】【祝福を受けし者】【切り開く者】の3つを得ています。【転生者】は能力が成長しやすくなり、【祝福を受けし者】は能力を得られ易くなります。【切り開く者】は開拓する際などに疲労しにくくなり、また、逆境においても効果を発揮します。最後の文字化けは・・・今はまだ不明です。』 


 そうなのか・・・

 ん?

 はじめて聞く言葉もあるのに、なんでわかるんだろうか?


『ちなみに、忍様には、ある程度の知識がインプット、すなわち脳に直接情報を入れられています。管理者様からの餞別です。』


 へえ・・・ありがたいが、少し怖いなそれ。

 まぁ、あって困ることは無いか。


『では、次に忍様を取り巻く環境についてお話します。ここは、とある森の中です。忍様は、拠点であるご自宅近辺を切り開き、人の領域を増やしていただく必要があります。なお、忍様のご自宅や物置、鍛冶場などは、管理者様が向こうの世界から取り寄せ、補強していただいております。また、建物から30メートルは結界が張られているため、魔物などは侵入できなくなっています。』 

 

 なるほど。

 いたれりつくせりだな。


『最後になりますが、ステータスが成長するに従って、私の出来ることが増加します。以上で説明を終えさせて頂きます。』

「ありがとう。よくわかったよ。これからよろしく・・・そうだ、君の事はなんと呼べば良い?名前はあるのか?」

 

 そう言うと、すてーたすさんは少し押し黙った。 

 そして、


『本来、私に呼び名はありませんが・・・そうですね、では、リーリエとでも呼んで頂けますか?』


 リーリエ、か。

 異国の言葉だな。


「わかった。ちなみに、どんな意味があるんだ?」


 そう言うと、すてーたすさん・・・もとい、リーリエはまた少し押し黙り、


『・・・いえ、意味はありません。』


 と言った。

 なんだろう?

 だが、まぁ良い。


「これからよろしく、リーリエ。」

『はい、忍様。』


 うん、話せるだけで良いさ。



 こうして、俺はすてーたすさんことリーリエと共に異なる世界、リーリエ曰く異世界で過ごす事になったんだ。

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