5 蝉がうるさい季節の社会の時間

 コンタクトが入らずメガネで学校に行った。女子生徒が茶化して「メガネの先生素敵ですね」と言った。恥ずかし隠しで、目が悪いからなと返したら「ウケる」と言われた。そうかロボットはメガネいらないのかと思うと羨ましかった。ツバサは本当に悪いのかといった顔で一馬の目を凝視していた。

 もちろん年号や事件はすぐ暗記できる。大切なのはいつ何があったかではない。なぜそれが起きて、どう思って、どう対処したかが重要だ。歴史から学び、同じ事があった時の擬似経験とするのだ。人間臭いことを聞いてみた。

 「なぜ三回目の世界大戦が起こったと思う」一馬自身の質問だ。

 タケルが「自分が一番になりたかったんじゃない?」と言うと

「タケちゃんじゃないんだから」と別の生徒が茶化した。タケルはうるせえわと笑っている。

「なぜみんなで仲良くできないのかな。話し合えばよかったのに。ハーフの私でもみんなは受け入れてくれた」とサツキは言った。最近はイントネーションもみんなと同じになったし馴染んでいる。

 「そういうわけにはいかなかったようだ。だがこれで人類が滅んだ」と一馬がいうと、「みんなうちのクラスだったら良かったのにな。」とタケルは言った。

 教科書にはなぜなのか書かれていない。消費税が上がったまでで終わっている。書く人がいなかったのだ。

 ツバサはどう思う。と一馬は聞いた。

 「他の国は病気を持っている。それをうつされないように」とボソッと言った。

 「じゃあサツキもあぶないのかー」とタケルが言った。

 「タケル!」と一馬がいうと、「すいませんすいません先生。ごめんなサツキ。俺そんなつもりじゃなかったんだ」と言った。

 サツキはわかってるよと笑った。

 危ないかと思ったが絆は深いようで安心した。タケルとツバサもなんだかんだ大丈夫そうだ。

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