if しあわせなせかい

 ぼくはプロジェクトU:Reという計画を止めるために戦っていた。

 その中で、アクアがオメガスライムだということを知る。

 怯えているアクアに、ぼくはなんと言葉をかければいいのか分からなかった。

 だから、言葉に詰まって。

 そうしていると、アクアがぼくを拘束してきた。


「アクア、なにを……?」


「ユーリ、ごめん。でも、ユーリに嫌われるくらいなら、こうするしかない」


 アクアはそう言って、ぼくの口の中に入り込んできて。

 そして、ぼくの意識は失われていった。






 ぼくはユーリ。カーレルの街で過ごしている。

 一緒に暮らしている人も多くて、とても幸せだ。


 大切なペットであるアクアとノーラ。よく甘えてくる可愛い相手だ。


 幼馴染であるカタリナ。いつも口が悪いけれど、ぼくを大切にしてくれている。


 おっとりした雰囲気のステラさん。この家の持ち主で、とっても優しい人。


 可愛らしい年上のサーシャさん。ぼくの事をよく甘やかしてくれる。


 頼りになるアリシアさんとレティさん。大人って感じで引っ張ってくれる人だ。


 ぼくを尊敬しているメルセデスとメーテル。ちょっと軽薄だけど、そこも魅力かな。


 共に訓練をよくするミーナとヴァネア。2人とも闘争心が強い。


 明るい性格のユーリヤ。ぼくとの距離が近い気がする。


 おとなしい感じのフィーナ。イメージの割に意思は強い。


 尊大な性格のハイディ。だけど優しさだってすごいんだ。


 ハイディに従うリディさんとイーリス。ハイディをとても尊敬している。


 そんな人達と生活しているのだけれど、日によって別の人と過ごすことが多いかな。

 今日はアクアと過ごす予定なんだ。ぼくにとっては一番思い入れが強い相手かもしれない。

 なにせ、物心付いた時には一緒にいたからね。

 人型の水みたいな種族であるハイスライムで、どんな形にもなれるんだ。

 だから、それを生かして色々な遊びをするんだよね。


「ユーリ、アクアの中に入れてあげる」


 そう言ったアクアは姿を変えてぼくを取り込んでしまう。

 周りは水だらけとしか思えないのに、呼吸は全く問題ないんだ。

 それに、なんだか心が落ち着くというか。

 まあ、アクアがぼくを傷つけるわけがないんだから、安心できるのは当然か。


 しばらくアクアの中でゆっくりしたあと、今度は球遊びをする。

 球を投げて、アクアに取ってきてもらうだけだけど。

 何が楽しいのか、アクアはよくねだってくるんだよね。

 まあ、走り回るアクアは可愛いから、ぼくも満足だけど。


 それからもずっとアクアと遊んで、一日は終わった。

 明日はノーラと遊んで、その次はカタリナか。

 ほんと、幸せでいっぱいの生活だ。これからもずっと続くといいな。






 アクアはユーリにオメガスライムだと知られて、ある恐れを抱いた。

 ユーリに拒絶されてしまわないかという感情だ。

 そんな不安が、黙り込んだユーリを疑わせた。

 だから、アクアはユーリの記憶を消すと決めてしまう。

 そのために、ユーリを拘束して体に入り込んだ。


 それから、まずアクアはプロジェクトU:Reの関係者を皆殺しにした。

 オメガスライムであるとユーリに知られるきっかけになった存在など必要ないのだから。

 次に、ユーリの体を操作して、カーレルの街まで動かすことに。

 だが、カーレルの街まで帰る過程で、ノーラにユーリを操作していることを知られてしまう。

 ノーラは怒りのような、悲しみのようなものを顔に浮かべながらアクアに詰め寄る。


「アクア様! なぜご主人を操っているのだ! ご主人が好きではなかったのか!?」


「ユーリには今日の記憶を忘れてもらう。そして、幸せな生活を送ってもらう」


「そんなやり方でご主人が幸せになれるとでも!? アクア様、あなたは間違っている!」


「だとしても、もう考えを変えるつもりはない。ノーラ、じゃあね」


 アクアはノーラの体も操り、カーレルの街にあるステラの家へと帰る。

 そこで、ユーリとユーリの周囲の人間に、自分にとって都合の良い記憶を植え付けた。

 ただ、ステラの家だけが皆の世界の全てとなるように。

 そして、アクアが書き換えた記憶をもとにした生活をおくることになる。


 ユーリも、他の大切な人たちも、アクアにとって都合のいい世界で生きる。

 アクアはわずかな後悔を抱えながら、幸せな日々を過ごしていた。

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